-黄金の月ー 4
ひとみは中学に入学した後、体調の大きな変化はなかったが週一回程度の通院が続いた
生まれながらに患う病気故、こういったことが大事だといつも父親に言われていた
「まだ、完全に治っているわけではないから油断しちゃダメなんだよね・・お父さん・・」
ひとみは自分が患ってる病気がいったい何のか、いつ治るのかと時折考えるようになっていた
小さな頃は、親の言う事、医者の言う事を効いていれば必ず元気になれる、そう思っていたし、
自然と親の言う事を効いていれば体調が悪かったのもいつのまに良くなっていることもあった・・・
年齢を少しずつ重ねるごとに、そういった疑問にいつかたどり着くであろう・・幸弘(父)もまた思っていた・・・
いつかちゃんと話さなければいけない、決して治らない病気ではない・・・
医者のいう通りにし、ちゃんと治療さえ続けてさえいれば・・・
数十年に渡り、幸弘は考えていた・・・
中学1年、2年 ひとみの体は大人へと向かい成長した、2年の時に体育祭の時に一度倒れた
だが、その時は、主治医はひとみへ貧血みたいなものだと伝えた
『ねえ、先生・・ひとみの体、大丈夫なの?』
『何についてだい?』
『今回、倒れたのとか・・・・』
『立ちくらみみたいな感じだったんだろう?』
『うん・・・』
『貧血と日射病が重なったような感じだから、ひとみちゃんじゃなくても貧血気味の人は同じようになる人もいるから大丈夫だよ(笑)』
『そうなんですか?』
『医者の言うことが信用できないと、患者さんはそう仰るのかな?』
『いえいえ、わかりました、ありがとうございます。』
ひとみが帰った後、主治医は両親から口止めされている事を考えた・・・
彼女の病状について、いづれ向き合う必要性がある、このまま何も知らずに過ごすのはあまりにも
酷なものではないか・・・・
「ご家族も大変な思いをされているのだろう・・・」
家族が心配しないように主治医は連絡をいれた・・
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それから一年後、ひとみは中学3年になり、受験を控える歳になっていた
体が弱くとも、彼女の希望を第一に考え、出来ること、やりたいことを全て叶えて上げたい
両親はそう願っていた
遠藤家の家族は学校、仕事を終え自宅で食事を済ませ家族会議をしていた
『ひとみの受験についてだが、ひとみは希望の高校はあるのか?』
『うん、一応ね、高校を卒業して大学まで行って・・・』
興味なさそうに聞いてた兄、幸人がちゃちゃを入れてきた
『大学卒業してその後、どうするんだ?』
『えーっと・・・お嫁さんとか・・』
『大学、超無意味だし・・・』
『むー!なんなのお兄ちゃん!』
『ハハハッ』
『こら、幸人、茶化すんじゃない』
『はーい・・』
父親に叱られる幸人を見て、ひとみはベロを出して笑ってみせた
『ちっ・・可愛くねーし・・』
『お父さ-ん!お兄ちゃんが・・』
『親父に甘えれば何でも許されると思うその姿勢が気に入らねーな!』
『そんなことないもん!<(`^´)>』
『あるだろ!』
『幸人』
『・・・でっ、どこの高校だよ』
『○○高校、普通科』
『へぇ~、いいんじゃね』
『何その言い方・・むかつく・・』
『幸人、お前、自分の部屋へ行きなさい』
「ガタッ」
幸人は何も言わずに席を立ち自分の部屋へと行った・・・
『ひとみはどうして、幸人にそう絡むんだ?』
『ひとみはお兄ちゃんが大好きだからね~(笑)』
姉の亜衣がそう言った
『もう!違うもん・・・意地悪だから嫌いだもん・・』
両方の頬を膨らまし顔を赤くするひとみがとても可愛らしく感じた
『成績の方は大丈夫なのか?』
『このままいけば大丈夫だろうって、先生が』
『後は、気を抜かずに受験勉強して体調を整えないとな』
『うん』
中学三年を迎えたばかりの日の会話であった・・・
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それから数日が過ぎ、高校受験という目標を持ち頑張ろうと誓った
「お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、一発合格してるし、ひとみも一発で合格しないと・・・」
クラブ活動なども、体調、通院の兼ね合いもあり帰宅はいつも早い方、家の家事などを手伝いながら
受験勉強に励んだ
そんな毎日を過ごし、季節は春から夏から秋、そして冬を迎えようとしていた・・・
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