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-黄金の月ー 3

3年後






3年もの間、ひとみは入退院を何度か繰り返していた、体の成長と共に少しずつだが病状も安定し始めていた


。父親、幸弘はひとみに寄り添うように通院に付き添った・・・


泣いて愚図る娘を幸弘はなだめるようにいつも抱きしめた




『お父さん、ひとみもう病院いやだ』




『うん、そうだよね・・辛いよな・・でもね、ひとみ、先生はひとみの体が元気になるために一生懸命やってくれているんだ、だから、頑張ろう。お父さんも応援するから』




『いやだ いやだ いやだ』




泣いて駄々をこねるひとみを幸弘は抱きしめた




「こんな小さな体で、受ける治療はさぞかし辛いものだろう・・・代れるものなら代ってあげたい・・・少しでも・・良くなるように・・出来ることは何でもしてあげたい・・・神様、どうか・・この娘をお守りください、どうかこの娘を健康な体を下さい・・・・」




『ひとみ・・ひとみ?』




ひとみは父の腕の中でぐったりしていた




『ひとみ!』




ひとみの小さな鼻から血が流れてきた・・・




『すみません!誰か!誰か!』





直ぐに看護婦が駆けつけ、ひとみはすぐさま治療室へ運ばれた・・・







主治医から、精神的なもののようだと告げられた、ただ、もって生まれた病気が普通の人とは違い


小さなことでも大事に至る場合がある、万が一があるので暫くの間、入院が必要だとのことだった




「ごめんな・・ひとみ・・父さん・・ついていながらも何もしてあげれなくて・・・」





幸弘は自分を責め立てた・・・父であるだけでこの娘に対して何もしてあげれていない・・


一緒にいる事しか出来ない・・・己の無力さを恨んだ・・・





「家に電話をしないとな・・」






幸弘は自宅へ電話を入れ、ひとみの入院を知らせた・・・





『もしもし、遠藤ですが』




電話には妻の未来みきが出た




『俺だ・・ひとみ、病院で倒れてしまって・・入院にすることになったよ・・』




『えっ・・・大丈夫なんですよね・・・』




『あぁ・・医者が言うには精神的なものから来るものだろうって・・大事を取って入院だそうだ・・』




『そぅ・・・』




受話器の向こうで不安そうに答えているのが判った・・




『未来、俺は暫くの間、病院に泊まり込むよ、昼間は仕事があるからお前が来てやってくれ』




『はい』




『それと、入院の準備をしておいてくれ、今から取りに戻るから』




『わかりました』





幸弘は入院手続きを済ませ自宅へと戻った





『お帰りなさい』




玄関には、未来、幸人、亜衣の三人が玄関にいた




『ねえ、お父さん、ひとみはまた入院なの?』




亜衣が聞いてきた




『うん・・・』




『亜衣もひとみのお見舞いに行く!』




『うん、明日、お母さんと一緒に行ってくれるか』




『うん!』




『幸人、父さん、暫く病院に泊まるから家の事、頼むな』




『うん、父さんも無理はしないで』




『ありがとう』




我が家の子供たちは、とても頼もしい連中だ、頼りがいのある息子がいて、優しい気持ちを持つ娘がいて、


何よりもどんな時でも支えてくれる妻がいる・・ひとみを皆で守り、必ず、生まれてきて良かったと人生を送ってほしい・・・




『幸人、亜衣、ごめんな・・お父さん・・・ひとみにばかり構っているようで・・でもな・・ひとみはまだ小さな子供だ・・親の力と愛が必要なんだ・・分かってあげてな・・』





『父さん 僕がお母さんと亜衣の面倒見るから大丈夫だよ』





幸人は男の子・・・父親は嬉しくもたくましく育った幸人を誇りに感じた。



『ねぇ・・ひとみはいつ おうちの帰れるの?』




『先生がもう少しだけって、言ってたからもう少しだけ待ってあげよね・・亜衣』



亜衣は少しひとみを羨ましく感じたのかもしれない・・・




『うん』




幸弘は小さな体で病気と闘うひとみを大きな愛で包んで守ろうとしていた




その姿を幸人、亜衣も小さいながらにも応援し父の背中を見て育っていった



ひとみは家族の愛を一身に受けていた・・・。














ひとみは数日間の入院ですみ、自宅へ戻る事が出来た




それから数年が経ち、ひとみの病状も安定し始めた、幼稚園を卒園し小学生になった


通院こそはあったが入院までするほど大きな変化は見られなかった




制限は多少あるにせよ、普通に暮らしている娘に幸弘は胸を撫で下ろした




「このまま、元気になり、恋愛をして、仕事をして、結婚をして、子供を産んで・・幸せになるんだぞ、ひとみ」





それから6年が経ち、ひとみは小学を卒業し中学入学となった。






入学式の前日・・






『ねえ、お父さん、どう似合う?』




中学の制服を着てみせる ひとみ




『あぁ、とても似合うよ』




にっこりと笑い幸弘は言った




『ねぇねぇ、お兄ちゃん!どう?』




『はっ?どうでもいいし』




『何よ、それ・・可愛いとかなんとかあるでしょう!』




『・・・キモい』




『もぉ!お父さん!お兄ちゃんが!!』




『ハハハッ、幸人、少しは褒めてやれよ』




『はいはい、似合うね』




『むー!』




『あほらし・・』




そういい幸人は自分の部屋へと行ってしまった




「カチャ・・」




『ただいま~』




玄関の開く音がした




『あっ!お姉ちゃんだ!ねぇ 見て--!』




制服を着たまま玄関に走っていく、ひとみを見て幸人は涙がこぼれた・・・




『母さん、ひとみ・・立派に育ったな・・・』




『はい、よく頑張ったと思いますよ・・・』




幼少期の頃から何度も泣きながら通院し治療に受けた・・


制限のある生活をしながらも懸命に生きてる娘の姿の成長が嬉しくて仕方なかった





玄関の方では、キャッキャと騒ぐ亜衣とひとみの声が家中に響いていた




『ただいま』




『お帰りなさい』




『ひとみ、超!似合う!』




『でしょう(#^.^#)』




『ほら、ひとみ制服しわになっちゃうから着替えてきなさい、もうご飯よ』




『はーい』






ひとみはひとみで成長していた




体の事であまり家族に心配や負担を掛けたくない


調子が悪い時は無理だけど、そうでない時は元気に明るくしていよう、そうすれば私も家族も楽しい気持ちになる、病は気から、きっとそうしていれば体もいつの間にか良くなってくる。そう思っていた



















































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