-黄金の月ー 2
19年前・・・
東北のある総合病院で、第三子の女の子が誕生した
「おぎゃぁ おぎゃぁ」
『元気な赤ちゃんが生まれましたよ』
看護婦は、母親の前に産まれた子供を見せた
『ありがとうございます』
母親は顔、手足、指、五体満足で産まれた我が子を愛しく思い
手渡された娘を優しく包むように抱き上げた
『初めまして、お母さんよ』
その子は初めてみる世界に目をまん丸くさせ、元気な鳴き声を上げた
この家庭にはこの娘の他に兄姉がいた
長男、幸人、10歳
長女 亜衣、3歳
二人は初めて見る間近な赤ちゃんが興味心身で抱かせてほしいとせがんだ・・・
『幸人、亜衣、二人にはこんなに可愛い妹が出来たんだよ、赤ちゃんはね、首が座るまでは危ないからお顔見るだけで我慢してくれる?』
『うん!』
二人の兄姉は大きな目をした女の子見た
『こんにちは、僕はお兄ちゃんの幸人だよ!私は亜衣!』
そんな二人を母親は嬉しそうに眺めた
『ねえ、お母さん、この子の名前はなんていうの?』
『お父さんが決めているらしいよ、もうすぐ来るから皆で聞きましょう』
『うん!』
父親はとても子煩悩な親だった、幸人、亜衣にもう一人の兄弟が必要だと強く願っていた
兄弟がいれば、困ったときは助け合うことが出来る、自分たちが先に亡くなったとしても兄弟がいれば違う、そう思っていた、父 幸弘は兄弟も居なくいつも兄弟でワイワイやっている家庭に憧れた、
「いつか家族を持つときは3人は子供が欲しい・・・」
そういつの日かそう理想の家族像を描いていた
幸人、亜衣が見る笑顔でとても癒された、皆が笑顔で暮らせる家族を誇りに思っていた
そして兄として、姉としてどう成長していくかそれも楽しみで仕方がなかった
「ガラッ」
病室のドアが開いた
『産まれたか!』
『あっ!お父さん!赤ちゃん居るよ!赤ちゃん!』
足元に纏わりつく様にしながら子供たちが嬉しそうに言った
『そうか!お前たちもお兄ちゃん、お姉ちゃんとしてしっかりしないとな!』
『うん!』
子供たちの髪をくしゃくしゃにするように撫でながら母親の元へいった
『御苦労さん、大役を果たしくれたね、ありがとう・・・未来』
『どういたしまして(笑)あなた、女の子ですよ』
『そうか、女の子か!』
『早くお名前を呼んであげてください、子供たちも待ちかねてますよ』
『そうだな』
『名前!なんていうのー?』
子供たちは早く聞きたい!と父のズボンを引っ張り催促をしてきた
『この子の名前はひらがなで「ひとみ」と名付けようと思う、いいか?』
『うん!ひとみちゃんだ!ひとみちゃんだって!』
子供たちは再び、妹の所へ駆け寄った
『どうして、ひとみと名付けたんですか?』
『世をまっすぐに見て素直に育って貰いたいと思ってね』
『世の中を?』
『あぁ、子供のうちはいい、大きくなっていくうちに人間は沢山の事を経験する、良い事ばかりではない、辛い時や悲しい時もあるだろう、でも、そんな時こそ、冷静にしっかりと自分を世界を見渡せるように育ってほしいと思ってね』
『あらあら、世界まで見渡すんですか?うちのひとみちゃんは(笑)』
大げさな例えだと母親は微笑んだ
『そうだ、そういう願いを込めんだ』
父(幸弘)は満面の笑みでそう答えた
母は第三子にこういった
『産まれて一番最初に貰ったプレゼントよ、お父さんが考えてくれたの、貴方のお名前は「ひとみ」よ』
『僕がもう教えてたよ-!』
幸人が笑顔で言った
『亜衣も教えたもん!』
『そう、ありがとうね』
幸弘はそんなやり取りを見ながら、心から妻、子供に感謝をした・・・
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それから数日後、ひとみはすくすくと成長しながら何の問題もなく育ち始めたように見え自宅へ戻った
首が座り、離乳食を始め、幾つかの定期検診を受け育つひとみに異変が見つかった
誕生の際には体が小さい故に分かりづらかったものだった・・・
ひとみはこの身体異変の発見から入退院を数回繰り返した、そしていつの間にか3年もの月日が過ぎようとしていた・・
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