第二章 -虹ー 2
ひとみは家族で昔よく行った公園に向かった。そこに行けば何かあるかもしれない・・・
もしかしたら父が現れるかも知れない・・・そんな思いに包まれていた
公園の入り口にはコンクリートの短い日本の棒が立っている、いつもその上に登ろうとして父に注意された、
兄はいつも一番早く公園にたどり着いてそのコンクリートの門の上に乗っていた。
その姿を見て、いつも私は「自分も乗りたい、お兄ちゃんだけずるい」と叫んでいた・・・
すると、父が小さな体の私を抱き上げ支えながら門の上に乗せてくれた
『危ないから父さんが居る時だけだぞ』と声を掛けてくれながら・・・・
コンクリートの門を軽く手でなぞり私は公園の中央へ向かった、そこには冬のせいか遊んでいる子供の姿もなくただ寒々とし少し悲しげな感じがした・・・
公園の西側には小高い野原と展望台のようなものがある、昔そこでよく母の作ってくれた弁当を家族で食べた、しばらく来てないうちにそんなことも忘れていたような気がした・・
夏ならば野原に寝転がり遊んだものだった、今は積もってこそはいないが雪がちらつきとても寝る事なんてできない。
ひとみは展望台へ行き、自分の住む街を眺めた・・・
『お父さん、ひとみ・・どうしていいかわからない・・・辛すぎるよ・・・』
笑顔と楽しい思い出しかない、この公園が重くのしかかるような気になった・・・
暫くの間、目をつぶり色々考えた・・・・
このままで良いわけがない・・現実を受け止めなければならない・・・辛いのは私だけではない・・・
家族がいる家で同じ様に考えても考えきれなかった・・・家のどこにいても父の名残や香りがあったから・・
それを言い訳にして自分の殻に籠ってしまう・・・守ってくれている家族の気持ちも知ってはいた・・
でも、自分以外の事は考えることが出来なかった・・・
『お父さん、最後に幸せだったって思える人生だったの?・・・』
空に向かい父へ問う・・・
当然、何の返答もなかった・・・ただ、お父さんならばきっとこう言うだろうという言葉が浮かぶだけだった・・・
「自分の身体を大事にしなさい」
「父さんは自分の事よりお前たちの事の方が大事だ」
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『末っ子で甘えん坊なひとみ・・・体が弱くて・・それでも頑張るひとみ・・・父さんはひとみが大切で心配ならない・・・愛しているよ・・・ひとみ・・・家族を大事にな・・・』
父が最後に言った言葉を思い出した・・・
『大切で心配・・・ってどういう意味なんだろう・・・末っ子だからかな・・・』
公園に来ていつの間にか3時間ほど経っていた、辺りはすっかり暗くなり冷たい風も吹き始めていた
ひとみは展望台の椅子に座りぼんやりと景色を見ていた・・・・
一方ひとみ自宅では一騒動が起きていた、夕飯の用意が出来たのでひとみに声を掛けに行った母親がひとみが部屋にいない事で大騒ぎしていた
『幸人!ひとみが部屋にいないのよ!何か知っている?』
『部屋に居ないの?』
『何処にも居ないのよ・・・まさか・・あの子・・・』
母親は父の死で深く傷ついているために万が一が起きてしまったのではないかと心配した
『母さん、俺、心当たりあるから見てくるよ』
『お願い!もしあの子に何かあったらお父さんにどう顔向けしたらいいか・・・』
『そんな事言ってる場合じゃないだろう!母さんも探しに出ろよ!』
『そ・・そうね、ごめんなさい』
幸人は直ぐにジャンバーを二つ抱え玄関へ行った
「あの馬鹿、この寒空に今の時間まで帰ってこないなんて・・・」
『母さん、亜衣(長女)にも連絡して帰りにそれとなしに似ている子がいないか見ながら帰ってこいって言ってよ!』
『わかった』
母親は直ぐに亜衣の携帯へ連絡を入れた、幸人は真っ直ぐに例の公園を目指した
「あそこに居ればいいな・・・もし居なかったら・・本当にやばい事になるかもしれない・・・」
幸人は自分であの公園にでも行って来いと声を掛けたことを少し後悔していた・・・
十分な食事も取っていなく、いつも飲んでいる薬ですらちゃんと飲んでいない ひとみが外に出るという事はあまり良い事ではないのを今更ながらに気づいた・・・・
「大丈夫だ、きっとあそこに居るはずだ。父さん、ひとみを守ってくれよ・・・」
急いで走り公園の門が見えてきた。
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