感情>身体~hayateside~
今日は陽菜の剣道の試合の日だ。
最近調子が悪そうなので、少し心配だが、陽菜のことだから精一杯頑張ってくれるだろう。
「めぇんっ!」
「面あり、1本!」
会場に陽菜のかけ声とそれに続く審判の合図が響く。
俺は剣道がわからない。1本ってのがボクシングなんかでいうKOみたいなことだろう、みたいな解釈を勝手にしている。
トーナメント表があったのでそれを見たら陽菜が先ほどの試合を勝った事になっているので、この解釈は間違ってないはずだ。
会場内から陽菜を探す。陽菜は息が荒かった。
「はぁはぁ...はぁはぁ...」
「大丈夫か?」
「はや...て...はぁはぁ...大丈...夫...はぁはぁ...」
さっきの試合はおおよそ20分程度だった、まだそんなに時間は経ってないはず...
「そんなに経ってねーのに珍しいな。体調わるいんじゃね?」
「んなこと...」陽菜は俺に心配をかけまいとしているようだった。
「二回戦、赤!明導神館、月成陽菜! 白!界堂館、猶金来夢! 前へ!」
陽菜の名前が呼ばれる。
「ごめん、行ってくる。心配ありがと。ごほっ....」
俺は頑張りながらも咳き込む陽菜に声をかけることができなかった。
陽菜は、少し足がふらついてる様子だった。しかし試合は始まってしまった。
試合開始直後、審判の声が耳に響く。
「面あり、一本!」
状況が分からなかった。
陽菜は、動く事はおろか、竹刀を振る事さえできずに負けてしまった。
そして、陽菜はそのまま、倒れてしまった。
「陽菜っ!!」
おい、大丈夫だよな?陽菜!
駆け寄った時には陽菜はすでに意識を失っていた。