表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/43

episode09 【教室⇒廊下】 放課後危機! (中)


「ちょっと待ちなさい!」

 突如掛けられた激とした口調に、智恵理と忍はびくつく。対峙していた忍の肩ごしに、声の主を視界に捉える。険しい顔で睨みつけている彼女の目線は智恵理たちではなく、悠然と立っている一人の少女へと注がれている。

 一先ずは緊張の面持ちから解放されたのだが、新たな衝撃が襲う。

 睨まれていて、固まっているその女の子に注視する。

 本当に綺麗な女性は、直接顔を拝見しなくても背中で分かる。女子高であるゆえに、様々な女性はいるが、彼女の纏っている雰囲気が明らかに他を圧倒していた。

 廊下を行き交う生徒たちも、彼女の姿を見ると立ち止まって呆けた顔をする。特に彼女の顔を眺めている女子生徒たちの反応は、一様にわかり易い。赤面している者や、果てにはへたり込んでいる人間すらいる。

「えっ……と、どなたですか?」

「御巫氷凪よ。そんなことも知らないの? 秋月さんは」

 ……秋月もみじ、と周りの誰かがフルネームをわざわざ呟いてくれたお蔭で、ようやくその名を思い出した。始業式の事件以来、この学園で一躍時の人となった人物。休み時間や昼休みには、秋月さんの話題がひっきりなしに交わされたものだ。

「あなた、本来は主席合格したはずなのに、始業式に参加しなかったようね。しかも、あの黒崎さんと一緒にいたらしいわね」

 黒崎さん……黒崎咲さんのことだろう。お嬢様学校にしては異端である粗暴な性格として、認知されている。あくまで噂だけど、ヤクザの組を一つ単独で潰したせいでその界隈では名を知らない人間がいないらしい。

「確かに一緒にいたけど、それがどうしたの?」

「それがどうしたのじゃないでしょ。あなた、自分の立場が理解できてるの? 仮にも成績だけなら学年代表なのよ。そのあなたが、あんな落伍者と交流していたら妙な勘ぐりをする人間がでてくるでしょ」

「……あんな? ……落伍者?」

 秋月さんの押し殺した声に空気が凍りつき、居丈高だった御巫さんが気圧されている。智恵理は恐る恐る歩み寄り、緊迫している場に割り込む。

「御巫さんっ、どうしたの?」

「……あっ、あなた同じAクラスの……?」

「智恵理だよっ! ……それより、どうしたのっ?」

「ただ、秋月さんが自分の役割を把握していなかったみたいだから、少し注意していただけよ」

 智恵理が話しかけたお蔭で、少しは調子に戻ったようだ。怖いもの見たさでそのまま視線を秋月さんに滑らすと、そこには――天使がいた。

 顔の造形は浮世離れしていて、発光しているかのように輝いているのは幻視とは思えない。透明感のある肌はそれこそ透けそうで恐く、唯一色鮮やかな桃色の唇に自然と目がいく。艷美ではないが、色気がないわけではない唇が動く。

「うーん、できれば見逃して欲しいんだけど……。昨日先生方にかなり絞られたんだよね」

 眉をハの字にしている秋月さんは本当に綺麗で、どうしてさっき御巫さんが驚愕していたのかが、いまいちピンとこない。睫毛をパチクリ数度重ね合わせて、疑問の表情を浮かべている彼女の愛嬌さと重ね合わせることはイマイチできない。



秋月さんヒロインになってるwww

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ