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勇者:????(仮)  作者: ちきん
序章
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脱走劇

取り敢えず主要な人物が出尽くすまで急ぎ足で物語を進めたいと思います。

「神子さん、ああ見えて結構足早いな。もう大分先に行ってんじゃねぇか?」


神子さんが逃げた道筋通りに追いかけているが、なかなか姿を捉えることができない。

え?どうして神子さんが通った道が分かるって?

そんなことは簡単、目印があるからだ。その目印とは俺があげたクッキー。それを最小限目につく大きさに割って落としていってる。ヘンゼルとグレーテルみたいだな。意味合いは随分と違うけど。

…それにしても、彼女は俺が負けた時のことを考慮していないのだろうか?……恐らくしてないだろうな。クレアの方が勝ったら明らかに逆効果だし。


「それだけ信用されてるってことなのかね?」


まぁ、恐らくはただ単に楽観視してるだけなんだろうが。

とにかく、将クラスの人間まで駆り出されてんだ。急いで追い付かないとな。



クッキーを目印に走り続けること数分、漸く街と大聖堂を結ぶ参拝道(ちなみに平原のど真ん中)の途中にいた神子さんの姿を捉えることができたが、彼女は既に十数人の兵士達に囲まれていた。

くっ……少し遅かったか………。

取り敢えず様子見として茂みに隠れて様子を窺う。今下手に出ていったら殺されるのは目に見えているからな。


「神子様、もうこの辺で鬼ごっこは終わりにしましょうや。正直あたい疲れちまったしよ」


整列している兵士達のから一歩前に出ていた隊長らしき人物が神子さんに話しかけている。

……随分口が悪い兵士がいたもんだ。しかも声からして女だしよ。


「通してくださいませんか?私にはどうしても行かなければならない所があるんです」


神子さんが兵士に向かって一生懸命に説得を試みている。


「悪いねぇ神子様。あたい等も仕事なんでね。あなたの言うことは聞けませんよ」


やれやれと首を横に振る兵士。そして、振るのを止めて見据えたのは、神子さんじゃなくて、俺の方。

まさか、気付かれたか?


「ですから、大人しく戻ってくださいよ、っと!」


右手を振り上げたかと思うと、いきなり中空に光と共に大剣が姿を顕し、兵士はそれを思い切り降り下ろした。そして、叩き付けられた地面から俺の方に向かって一直線に火柱が生じていく。

不味い、やっぱり気付かれていた!


霧影(ムエイ)!」


すんでの所でかわした俺は辺りに煙玉をばら蒔く。まぁ、一丁前に技名を叫んでみたが、この技はあくまで姿を隠すためのものであるので、正直言って全然格好よくない。むしろ痛い。それは技全てにおけることだが。


「あは、あたいにそんな子供騙しが通用すると思う?――熱風(ネップウ)一閃(イッセン)!」


煙玉が蒔かれた一帯全てに対して、大剣を横に薙いで発生したであろう熱風が襲いかかる。

だが、そういう攻撃に出ることは予想済みだ!

俺はとっくに煙の中から脱け出し、相手との距離を詰めていた。


「この距離ならナイフを外すこともないな!――飛鋭(ヒエイ)!」


ナイフを相手に三連続で投げる。が、当然の如く軽く避けられてしまう。

だがそれは予想済みだ!

俺の本当の狙いはお前じゃなくて、たった今注意を怠った神子さんの方だ!


「遅れたな神子さん!じゃ、またしっかり掴まってろよ!」


ちなみに、突然の出来事に狼狽していたしたっぱ達は無視した。


「二度も同様の手口が通用すると思うのかい!」


「――ッ!」


兵士が大剣で直接斬りかかってきたのをどうにか短剣で受け止める。

流石に炎の付加はないか。まぁそうだよな。下手したら神子さん傷付けてしまうかもしれないしな。

…だけど、流石に大剣を受けるのはキツいな。今ので右手が完全に使えなくなったぞ、おい。


「仕方ない。神子さん、二度目になるけどまた走って逃げてくれ。今ので抱えていくのは無理になっちまったからな」


「は、はい!二度もありがとうございます!」


踵を反して走り出す神子さん。そんな彼女を見て――


「させないよ!何時まで狼狽えてるんだ馬鹿共!早く神子様を捕らえな!」


一喝により今まで全く役に立たなかった兵士達が我に帰り、追いかけ始めようとする。

だが、もう遅い!


毒華(ドクバナ)


兵士達の足下に投げておいた煙玉が破裂する。その煙は技名の如く、毒を含んでいる。そして、それを吸い込んだ兵士達が苦しみ始める。

まぁ、毒といっても実際の効能は若干の吐き気を催すだけなんだけどな。問題は毒という言葉そのものだ。人間は毒と聞くと過剰に反応しがちだからな、本人の意思とは関係なしに症状を勝手に悪化させる。ホント、人間の想像力ってのは怖いね。


「そしてもういっちょ!霧影!」


もう一度辺り一面を煙で包ませる。今度は敵さん御一行も一緒に呑まれてもらう。

まっ、俺はすぐさま脱け出してさっさと逃げ出すんだけどね。こんな状態じゃあ、勝つことはまず無理だからな。

煙の中を一番に脱し、神子さんの後を追いかける。

ったく、いくら自分がとった行動が原因とはいえ、割りにあわねぇことばっかりだな今日はよ。


「――だから、あたいに二度も同じ技は通用しねぇっつってんだろ!」


その声が聞こえた瞬間に背後に凄まじい熱気を感じた。

これは相当ヤバいのが来る!


「――大怨火山(ダイエンカザン)!」


走るスピードを落とさない程度で後方を確認すると、上空に飛び上がった彼女が大剣を振り上げており、その切っ先には巨大な熱球が留まっていた。

おいおい!冗談じゃねぇぞ!あんなん喰らったら一発でお陀仏どころか蒸発して微塵も残んねぇよ!だけど避ける術がねぇ!これはもう、詰んだか……?


「――おう、そこの少年!なんか知らんがお困りのようだな!…よし、俺が助けてやろう!」


諦めかけたその時、何処からともなくコートを羽織り、目元以外を布で隠した長身の男と、同じ格好をした小柄な奴(性別は分からん)が現れた。そして彼は――


「――というわけでよろしく、エーブ」


思わずずっこけそうになった。あんだけの啖呵切っといてまさかの相方任せなのかよ!


「全く……分かったよ。――イージス!」


相方の方は呆れ気味だったが、男の要望を受け入れ、術を発動した。

――ってちょっと待て!今あいつ何唱えた!?イージス!?最上級の防御呪文だぞそれは!それを詠唱なしで軽々しく発動するだと!?男の方はともかくとしてあいつ相当な手練れだな……。

隊長らしき兵士――恐らく最初の四人の中にいた一番の手練れ――が放った熱球を同じく巨大な防御陣が受け止める。辺りに凄まじい爆音が轟き、強風が発生する。


「さて少年。今のうちに行け!ここは俺達に任せて!」


お前が言うな!お前何もしてないだろ!

――だがこれは正直言って助かった。このまま行かせてもらうとしよう。



「……もう行ったか?」


「うん、そうみたいだね。彼、足は相当速いみたい」


やれやれ、世話のかかる少年だったぜ。おかげでこの国に来た意味が全くなくなってしまったなぁ。……元々望み薄だったからいいか。

さて、と。じゃあ折角楽しい祭に介入したんだからたっぷりと興じさせてもらおうかな。


「あんた等、なにもんだい?ここら一帯じゃ見かけないけど」


おおー、あれだけの技を放っておきながら息の一つも崩さないとは、凄ぇな。


「ああ、俺達は……あれだ。ただの旅人だよ。なぁ、エーブ」


たった今思い付いた適当な嘘をつく。だって馬鹿正直に話す必要ないだろ?


「うん、そうだね。まぁ、正確に言うと行商人だけど」


流石はアクト!相変わらず俺の嘘のカバーが上手いぜ!


「ふーん。じゃあなんで行商人なんかが割って入ってくんだ?あんた等商人は利益にならんことはしないだろ」


「それは俺の中の正義がこう……燃え上がったからだぜ!」


これは本当の話。まぁ割合にすると一割ぐらいの理由だがな。残りの九割はただ喧嘩したかっただけだが。


「正義、ねぇ……。あんた等あたい達の姿を見たら普通相手側が悪いと思わないのかい?」


「ああ!だって最初の件から見てたからな!」


いやぁ、どうせ参加するならカッコいいタイミングが良かったから、見計らってたんだ。結構長く待たされて退屈だったぜ。


「最初からって……おいおい、嘘をつくならもう少しマシな嘘をついたらどうだい?このあたいが人の気配を感じ取れないわけがないだろう」


…嘘じゃねぇんだけどな。ただちょいと気配を消した上にアクトに周囲に気取られにくくする魔法『スニーク』をかけてもらったからちょっとやそっとじゃ気付かねぇけど。


「まぁそんなことはどうでもいいか。どうせ神子様には逃げられてしまったし、あたいはあたいを邪魔したあんた等を取っ捕まえて、師団長に差し出して体よくお叱りを避けさせてもらうさ!」


そう言って大剣を構え直し、俺達の様子を窺っている。


「上等じゃねえか!返り討ちにしてやるよ!…エーブ!お前は手出しするなよ!」

俺も負けじと腰に携えている片手両刃剣を抜き、構える。


「はいはい、分かってますよ」


そう言って、心底どうでも良さげに俺から離れる。


「まさかあんたあたいを独りで倒す気でいるのかい?……ハンッ!随分とナメられたもんじゃないか!あたいのこと誰だか知りもしないくせ「知ってるさ」――何ッ!?」


「メルレント騎士団第二師団副師団長、ジーナ・スナメギ中佐。通称――豪炎のジーナ。騎士としては不良としか言えないが、戦闘センスはピカイチで、若くして様々な武勇伝を持っているとの噂まである女性だろ?」


「……ふぅん、よく知ってるじゃないか。あんた、あたいのファンか何かかい?」


兵士用の兜を被っているのによく分かったじゃないか、と後に続けて彼女は茶化すように言う。


「いや、残念ながら違うな。俺が興味のある人間は強い奴だ。あんたはその中の一人にしか過ぎない!だから!今日はあんたに逢えて心の底から嬉しいぜ!」



「(それをファンというんじゃないかな)」


離れた所で、旅の仲間の言葉に独り心の中でツッコミを入れるアクトであった………。


「(あと、戦うなら戦うでさっさと始めてくれないかな?待ってる方も退屈なんだからさ)」

取り敢えず主要キャラを+三人。これで男性キャラは全員揃いましたね。後は総数が男性キャラの約六倍の女性キャラをどんどんと出すだけですね。

しかしながら未だに名前が明かされない主人公とメインヒロイン。彼等の名前発表は何時になることやら。

それで、話は変わりますが、今回出てきたのは、ジーナとアクト(エーブは偽名)と馬鹿でしたね。男二人は元から男だったので名前は変更なし。だけれども正確はジーナの女性化に伴って変更しました。まぁ、それについては追々ということで。

ちなみに、登場人物は全てタロットカードがイメージ元になっています。誰がどのカードだか分かるかな?

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