役割
学校の時間は、
変わらず進んでいた。
文化祭と体育祭の準備が、
静かに始まっていた。
そのどれもが、
無関係ではなかった。
文化祭では、
クラスで出し物を決めた。
体育祭では、
走る順番を決めた。
どちらも、
話し合いの輪の中にいた。
その分、
伊佐や九条と話す時間は、
減っていった。
文化祭当日。
教室は朝から騒がしかった。
準備していたものが並び、
人が出入りする。
呼ばれて、
返事をする。
別の場所へ行って、
また呼ばれる。
立ち止まる暇はなかった。
気づけば、
教室の真ん中にいる時間が、
長くなっていた。
通りがかった人に、
声をかけられる。
「これ、どうする?」
「次、誰が行く?」
その都度、
答えた。
正しいかどうかは、
分からなかった。
それでも、
誰も止めなかった。
「白宮なら分かるよね」
そう言われて、
頷いた。
分かることだけが、
求められている気がした。
伊佐の姿は、
人の向こうにあった。
九条は、
別の場所にいた。
声をかけるタイミングは、
何度かあった。
結局、
一度も呼ばなかった。
人が減り始めた頃、
ようやく椅子に座った。
教室の外から、
楽しそうな声が聞こえてくる。
その中に、
自分の声も混じっていた。
体育祭当日。
校庭には、朝から人が集まっていた。
名前が呼ばれ、
動く場所が決まる。
自分の出番は、
最初から分かっていた。
準備をして、
並ぶ。
前と後ろに、
同じクラスの顔があった。
声をかけられて、
短く返す。
必要なやり取りだけが、
続いた。
合図が出て、
走った。
速かったかどうかは、
よく分からない。
終わって、
列に戻る。
次は誰かの番で、
自分は、それを見ていた。
「次、お願い」
そう言われて、
頷く。
それだけで、
役割は果たせていた。
自分である必要は、
特になかった。
伊佐は、
少し離れたところにいた。
九条の姿は、
人の中に紛れていた。
探そうと思えば、
見つけられたはずだった。
でも、
そうはしなかった。
競技が進み、
校庭の声が少しずつ散っていく。
気づけば、
自分の周りには、
同じクラスの人間が残っていた。
話題は次の競技で、
誰が出るかだった。
そこに、
自分の名前が混じる。
自然な流れだった。
終わっても、
自分の中では、
何も終わっていなかった。




