勉強の約束
期末テストが終わった。
結果は、前回と同様だった。
中間のときより、勉強はしていた。
それでも、数字は動かなかった。
また机に向かう日々に戻る。
ある日、実習の授業でペアを組むことになった。
「誰とでもいいぞ」
先生の声が、教室に落ちる。
伊佐の方を見ると、
すでに別の友人と話していた。
声をかける理由は、なかった。
視線を巡らせる。
そこで、止まった。
九条。
成績表で、何度も見てきた名前だった。
「九条君。……ペア、組まないか」
自分でも驚くほど、平坦な声だった。
「いいよ。白宮君だよね。よろしく」
軽い返事だった。
作業は、滞りなく進んだ。
言葉を交わさなくても、
必要な手順が分かる。
自分が求めている精度を、
九条は当然のように出してくる。
「九条君って、普段どんな勉強してる?」
沈黙が続いて、
思わず聞いていた。
「授業の復習かな。
教科書読んで、分からなかったところを見るくらい」
それだけだった。
「白宮君は?」
一瞬、言葉に詰まる。
「……それなりに。やってるつもり」
九条は、それ以上聞かなかった。
同じ教室で、
同じ教科書を開いているはずなのに。
距離だけが、はっきりしていた。
実習が終わるころ、
九条が言った。
「今度、一緒に勉強しない?」
「いいよ。時間が合えば」
そう返しながら、
胸の奥が、少しだけ騒がしかった。
放課後の遊びではなく、
放課後の勉強。
その約束を、
自分は思っていたよりも重く受け取っていた。




