ゲームの約束
期末テストが終わった。
結果は、中間テストのときと大差なかった。
家に帰っても、叱責されることはなかった。
母は成績表を一瞬だけ見て、小さく息を吐いた。
「……そう。次は頑張りなさいね」
それだけだった。
怒られなかったことよりも、
その言葉に何も乗っていなかったことが、
少し不安だった。
日々は、変わらず進んでいく。
ある日の実習の授業で、
ペアを組むことになった。
「近くの人と組んで」
先生の声が、教室に落ちる。
視線を落とした。
蔵岡は、すでに別の連中と組んでいた。
頼れる相手はいなかった。
立ち尽くしていると、
横から声がした。
「霧谷、だよね」
顔を上げる。
「自分もあぶれてるから、一緒でいい?」
補習のとき、
近くに座っていた生徒だった。
「……名前、なんだっけ」
一瞬、間が空いた。
「硯川 徹。てつでいいよ」
そう言って、気にした様子もなく笑った。
こうして、実習に取り組むことになった。
一人ではない、
それだけで、少し息がしやすかった。
作業をしながら、
硯川が話しかけてくる。
「霧谷、何かゲームやってる?」
「スマホゲームなら、少し」
「やっぱり? 俺も色々触ってるけどさ」
そこから先は、
据え置き機の話になった。
操作感がどうとか、
最近のタイトルがどうとか。
正直、途中から内容はよく分からなかった。
ただ、
話したいことがある、
それだけは伝わってきた。
「今度さ、うち来ない?」
手を止めずに、
硯川は言った。
「一緒にゲームやるやつ、欲しかったんだ」
断る理由は、思いつかなかった。
「いいよ。いつがいい?」
そう答えてから、
少しだけ胸がざわついた。
誰かと、
次の約束をしたのは、久しぶりだった。




