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きみの隣で、今日も考えてる  作者: マリセリソウ


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第23話 球技大会 中盤戦と二人きりの昼休憩

 サッカーの一回戦が終わり、全員がそれぞれ息を整えながらベンチ代わりの芝生に座り込んでいると、別のコートからやたらと大きな歓声が上がった。どうやら次の試合が始まったらしい。俺は水を一口飲んでから、ぼんやりとそちらのコートに視線を向けた。

 ……川村のチームだった。

 高原が立ち上がりながら言う。


「ちょっと見ておこうぜ」


 三浦と広田も頷き、俺たちはなんとなくそのコートの近くまで移動することになった。クラスメイトたちもぞろぞろついてくる。気付けばそれなりの人数になっていて、もはや完全に団体観戦ツアーである。

 そして、試合が始まった。


 開始直後だった。


 ボールを受けた川村が中央で軽くターンすると、そのまま一人かわし、もう一人をスピードで振り切り、そのままペナルティエリアの手前からシュートを打った。


 ドンッ。


 という、やけに乾いた音がしてボールがゴールネットに突き刺さる。

 開始から、まだ一分も経っていない。


 周囲がざわついた。


「え?」

「今の入るの?」

「早くない?」


 そんな声があちこちから聞こえる。

 俺はその様子を見ながら、静かに思った。


 ……うん。火力がおかしい。


 その後も試合は続いたが、状況はほとんど変わらなかった。相手チームがボールを持ってもすぐに奪われる。奪われた瞬間、川村のチームは一気に前へ出る。パスのスピードも速いし、動きも迷いがない。まるで普段から同じチームでやっているかのような連携だった。

 そして川村にボールが渡ると、だいたい何かが起きる。

 ドリブルで抜くか、パスで崩すか、あるいはそのままシュートを打つか。とにかく一つ一つのプレーが速い。

 横で見ていた高原が小さく息を吐いた。


「……やっぱりえぐいな」


 三浦も腕を組みながら頷く。


「攻撃力が段違いだな」


 広田は少し苦笑いを浮かべていた。


「これ、まともにやり合ったら終わるやつだろ」


 俺は黙ってその試合を見続けていた。すると、後ろから聞き慣れた声がした。


「……なんかすごいね」


 夏樹だった。

 振り向くと、山本さんと柴田さんも一緒に立っている。どうやらバレーの試合の合間らしい。三人とも腕を組んだり、首をかしげたりしながら試合を見ていた。

 山本さんがぽつりと言う。


「サッカーよく分からないんですけど……。すごく強いのは分かります」


 それは正しい感想だと思う。

 実際、サッカーの細かい戦術が分からなくても、この試合を見れば「なんかすごい」ということは誰でも理解できる。

 柴田さんも腕を組みながら頷いた。


「素人でも分かるくらいには強いわね。火力がバグってるわ」


 少しだけ呆れたように言う。


 まさにその通りだった。

 試合はまだ半分も経っていないのに、すでに二点差がついている。しかもその二点目も、川村のロングシュートだった。

 高原が低い声で言う。


「止めるの難しいな……」


 三浦も苦笑いを浮かべる。


「そもそもボール持たせたら終わる」


 俺はその会話を聞きながら、再びグラウンドを見る。

 川村はまたボールを持っていた。

 そして、今度はディフェンスを二人引き付けてから、横へパスを出す。そこに走り込んできた味方がそのままシュートを打った。


 ゴール。


 歓声が上がる。

 俺たちのクラスメイトも思わず声を出していた。


「うわぁ……」

「強すぎない?」

「これ勝てるの?」


 その疑問はもっともだと思う。俺はしばらく黙って試合を見ていたが、横で夏樹がぽつりと言った。


「……創ちゃん」

「ん?」

「これ、勝てるの?」


 俺は少しだけ考え、正直な感想を口にした。


「……難しいな」


 夏樹は少し苦笑いを浮かべた。そしてグラウンドの中央で再びボールを受けた川村を見ながら、小さく呟いた。


「やっぱり強いんだね」


 俺は何も答えず、そのまま試合を見続けた。少なくとも、さっきの俺たちの試合とは比べ物にならない攻撃力だった。そして同時に思う。もし決勝まで進めば、あのチームとやることになる。


 二回戦のキックオフの笛が鳴った瞬間、俺はすぐに頭の中でやることを整理した。

 やることは一回戦と同じだ。

 いや、正確に言えば――一回戦よりも丁寧にやる必要がある。

 なぜなら、一回戦の時点で全員の体力がかなり削れているからだ。ここで無駄な動きを増やすと、後半どころか試合の途中で全員がガス欠になる可能性がある。

 つまり、俺たちの戦術は変わらない。


 守って、カウンター。


 それだけだ。ただし、それを成立させるためには一つ条件がある。


 全員が走り続けること。


 そして、どうやらうちのチームのメンバーはそれを理解してくれているらしかった。

 相手がボールを回し始めると、まず伊谷と加藤が前へ出る。二人とも陸上部なので、とにかく走ることに関しては誰にも負けない。足元の技術は正直言ってサッカー部には遠く及ばないのだが、その代わりにとにかく動き続ける。

 相手が右へパスを出せば伊谷が寄せ、左へ展開すれば加藤が走る。

 ボールを奪うことは難しい。相手の方が技術は上だ。だが、それでも二人は諦めない。足を止めない。雑でもいいから食らいつく。

 そして、ボールを奪えた瞬間――


「三浦ァ!!」


 伊谷の叫び声と同時に、ボールが前へ飛ぶ。パスとしては正直かなり怪しい。むしろロングクリアに近い。だが、そこに三浦が走り込む。

 三浦は多少コントロールが乱れても問題ない。身体の強さとスピードでなんとかしてしまうからだ。

 サッカーとして美しいかと言われれば微妙だが、目的は勝つことだ。美しさは二の次でいい。


 その後ろでは、左サイドで後藤が体を張っていた。

 今回は後藤が先発だ。

 柔道部の後藤はアジリティ、つまり細かい方向転換の速さは正直あまり高くない。相手が細かくボールを動かすと、ついていくのがやや大変そうだ。

 だが、その代わりに持っているものがある。


 体幹。


 相手が体をぶつけてきても、後藤はびくともしない。むしろ相手の方がバランスを崩す。そしてボールをキープしようとした相手の前に、まるで壁のように立ちはだかる。

 相手がドリブルで突破しようとしても、後藤の肩にぶつかった瞬間、速度がゼロになる。まるでコンクリートの壁に突っ込んだみたいだ。

 ベンチの横では、池上が大声で叫んでいる。


「ナイス後藤!!」

「いいぞ左!!」


 声量がすごい。もはや応援というより指揮官である。しかも途中から作戦の指示まで出し始めていた。


「寄せろ!寄せろ!」


 ……いや、寄せるのは大切だが、お前サッカーそこまで詳しくないだろ。


 俺は思わず心の中で突っ込みながら、次のプレーに備えてポジションを修正する。

 俺の役割はシンプルだ。


 穴埋め。


 サッカー部ではないメンバーはどうしてもポジションがずれる。追いかけることに集中すると、元の位置に戻るのが遅れる。だからその隙間を俺が埋める。

 右に穴ができれば右へ走る。

 中央が空けば中央へ戻る。

 誰かが抜かれれば、その後ろに入る。

 とにかく動く。

 そして俺がカバーした瞬間、高原の声が飛ぶ。


「ナイス!そのまま!」


 広田もすぐに指示を出す。


「左注意!戻れ戻れ!」


 この二人の声はとにかく的確だ。どこが危ないのか、どこを締めるべきなのかが瞬時に分かる。そのおかげで、チーム全体の守備がなんとか形になっていた。

 相手のシュートが飛んでくる。


 ドンッ。


 鋭い音がしてボールがゴールへ向かう。だが、その前に立ちはだかる影がある。


 山田だ。


 のんびりしているように見える男だが、シュートに対する反応はなかなか鋭い。両手を伸ばし、しっかりとボールを弾く。


 歓声が上がる。


「ナイスキーパー!」


 山田は軽く頷くだけで、またゴール前に立つ。

 ……この男、さっきまで花と会話していたとは思えない。


 きっと風の妖精が味方しているんだろう。


 そうでなければ説明がつかない。


 試合は激しい展開になっていた。

 相手が攻める。

 俺たちは守る。

 ボールを奪う。

 三浦へ蹴る。

 また攻められる。

 また守る。

 その繰り返しだ。


 伊谷と加藤は相変わらず走り続けている。足元は決して上手くないが、それでも三浦に向かって必死にパスを送り続けていた。雑でもいい。とにかく前へ運ぶ。

 後藤は左サイドで壁になり、池上はベンチから司令塔のように叫び続け、高原と広田は全体を見ながら指示を出し、山田はゴール前で静かに構える。

 そして俺は、そのすべての隙間を埋めるために走り続ける。


 ……本当に、走り続ける。


 ふと時計を見る余裕ができた瞬間、俺は思った。

 まだ半分も終わってないのか。


 サッカーというスポーツは、どうやら俺が思っていたよりもはるかに体力を消費する競技らしい。



 試合終了の笛が鳴った瞬間、グラウンドにいたほぼ全員が同時に力尽きた。

 いや、正確に言うと「倒れた」という表現の方が正しいかもしれない。

 2回戦のスコアは1-0……ではなく、最後の最後に三浦がカウンターを決めて2-0。数字だけ見れば一回戦とまったく同じ結果である。


 勝った。


 勝ったのだが――


 俺はその場で膝に手をつきながら思った。


 めちゃくちゃ疲れた!!!


 いや、本当に。

 開始から終了まで、ほぼずっと守っていた気がする。相手の攻撃をしのぎ、ボールを奪い、三浦へ蹴り、また攻め込まれ、また守る。その繰り返しだ。しかも一回戦の疲れが残った状態でこれをやるのだから、体力の消耗は想像以上だった。


 そして、周囲を見渡す。

 そこには地獄絵図が広がっていた。


 伊谷が仰向けで大の字になっている。

 加藤は横向きで倒れ、ピクリとも動かない。

 後藤はうつ伏せでグラウンドに沈み込み、まるで柔道の試合で一本取られた後のような姿勢になっている。

 ……柔道部なんだからそれはいつもの姿勢かもしれない。

 とにかく、全員が倒れていた。

 サッカー部の三浦ですら、芝生の上に座り込みながら肩で息をしている。広田も隣で膝を抱え、呼吸を整えることに集中しているようだった。

 かろうじて立っているのは、高原と俺、それからキーパーの山田くらいだ。

 山田はゴールポストの近くでぼんやり空を見上げている。


 ……たぶん今も妖精と会話している。


 俺は確信していた。この男には、確実に風の妖精がついている。そうでもなければ、あれだけシュートを止められる説明がつかない。


 その時、クラスメイトたちがわらわらとグラウンドに入ってきた。


「大丈夫かー!」

「おい水持ってきたぞ!」

「すごかったぞ!」


 どうやら応援していたメンバーが総出で救助活動を始めたらしい。伊谷のところには女子が二人しゃがみ込んでいた。


「大丈夫?」

「水飲む?」


 その声に、さっきまで死体のように倒れていた伊谷が、わずかに顔を上げた。


「……いける」


 いや、どう見てもいけてない。

 だが女子に声をかけられた瞬間、なぜか復活しかけている。

 加藤のところでも同じことが起きていた。


「加藤くん、立てる?」

「……いけます」


 さっきまで動かなかった人間が、急に背筋を伸ばした。


 ……なるほど。人間、応援次第で回復するらしい。


 後藤も水を渡されながら、少し照れたような顔をしている。


「大丈夫?」

「……うん」


 まんざらでもない様子だった。

 分かり易っ!。


 そんな中、高原が深く息を吐いた。


「なんとか勝ったな……」

「だな」


 俺も頷く。勝ちは勝ちだ。


 ただし――


 グラウンドの向こうでは別の試合の結果が伝えられていた。

 川村のチームだ。

 9-1。

 そんなスコアが聞こえてくる。


 やはり火力が違う。こっちは死に物狂いで守って2点。向こうは普通に攻めて8点とか9点。なんというか、同じ競技をしている気がしない。だが今はそんなことを考えている余裕もなかった。なぜなら、俺たちのチームはほぼ全滅状態だからだ。

 広田が芝生の上で寝転びながら言う。


「……動けねえ」


 三浦も同じ姿勢で空を見ていた。


「午前中でこれかよ……」


 その言葉に、俺は改めてスケジュールを思い出す。

 今日は最大で五試合。

 今終わったのは二試合。


 つまり――


 まだ三試合残っている。

 その事実に気付いた瞬間、体力ではなく精神が削られた。

 そんな時だった。


「創ちゃん」


 声をかけられて振り向くと、夏樹と山本さんと柴田さんがこちらへ歩いてきていた。夏樹は少し心配そうな顔で俺を見る。


「大丈夫?」

「まあ……なんとか」


 そう答えると、山本さんが水のペットボトルを差し出してくれた。


「はい、どうぞ」

「ありがとう」


 受け取って一口飲むと、体の中に冷たい水が染みていく。

 柴田さんは腕を組みながら言った。


「さっきの試合、見てたけど……。よく勝ったわね」


 その言い方は半分感心、半分呆れという感じだった。夏樹も笑いながら頷く。


「みんなすごく頑張ってたよ」


 その言葉に、俺は軽く肩をすくめた。


「頑張るしかないからな」


 実際、技術で勝てない以上、走るしかない。

 すると夏樹がふとグラウンドに倒れているメンバーを見回して言った。


「……でも、みんな本当に限界っぽいよ?」


 俺も同じ光景を見る。

 伊谷はまだ横になっている。

 加藤は水を飲みながら天を仰いでいる。

 後藤は完全に地面と同化していた。

 広田と三浦はまだ起き上がる気配がない。


 ……確かに。


 満身創痍である。


 その時、グラウンドのスピーカーからアナウンスが流れた。


「午前中の試合は以上です。昼休憩に入ります」


 どうやらここで一度区切りらしい。午後には残りの試合が行われる。

 俺はゆっくりと息を吐いた。


 午前中の試合がすべて終わると、校庭の空気は一気に緩んだ。さっきまであちこちで響いていたホイッスルや歓声が少し落ち着き、代わりに聞こえてくるのは弁当箱を開ける音や、クラスごとに盛り上がる雑談の声だ。

 グラウンドのあちこちでは、さっきまで試合をしていた生徒たちが芝生に座り込んで弁当を広げている。汗を拭きながらパンをかじるやつ、スポーツドリンクを一気に飲み干すやつ、疲れすぎてとりあえず横になっているやつ。体育祭とも文化祭とも違う、球技大会特有のゆるい昼休憩の空気がそこには広がっていた。

 コートのラインがまだ白く残るグラウンドの真ん中では、午前中に敗退したチームが早くもサッカーボールを蹴り始めている。さっきまで真剣勝負をしていたはずなのに、もう遊びのサッカーに戻っているあたり、高校生という生き物の回復力はすごい。遠くではバレーのボールをトスし合っているグループもいるし、日陰ではジャージを敷いて昼寝している集団もいる。

 そんなにぎやかな空気から少し離れた校舎裏で、俺は一人で座っていた。

 コンクリートの段差に腰を下ろし、膝の上には読みかけの文庫本。昼休みといえばこれだ。いつもの学校生活なら当たり前の時間なのだが、今日は午前中だけでかなり走り回ったせいか、ページをめくる指先が少し重い。


 ……いや、重いというより。


 体が疲れている。

 そりゃそうだ。

 午前中で二試合。ほぼずっと守備に走り回り、相手の攻撃を止めては三浦にロングパスを送る作業を繰り返していたのだから、体力が削られていないわけがない。

 俺は小さく息を吐きながら、文庫本のページをめくった。

 校舎裏はグラウンドの喧騒が少しだけ遠くなり、風がゆっくり流れている。校舎の壁に反射した春の日差しが柔らかく、座っているだけで少し眠くなるような空気だった。

 そんな静かな時間を邪魔するように、後ろから声が聞こえた。


「創ちゃん」


 振り向くと、夏樹が立っていた。


「ここにいたんだ」

「まあな」


 俺がそう答えると、夏樹は俺の隣に座り込んだ。そして少し顔を覗き込むようにして言う。


「大丈夫?」

「何が?」

「試合」


 俺は肩を軽く回してから答える。


「まあ、なんとか」


 実際、動けないわけではない。ただし、午前中の時点でかなり体力を使ったのは間違いない。午後の試合を考えると、少しでも回復しておきたいところだ。

 すると夏樹が小さく首をかしげた。


「ご飯食べないの?」


 言われて初めて、弁当の存在を思い出す。

 俺の横には小さな弁当箱が置いてあった。今朝作ったやつだ。


「食うよ」

「全然食べてないじゃん」


 そう言われて弁当箱を見ると、確かにまだ開けてもいなかった。


 ……食欲がない。


 走り回った直後だからだろうか、胃が「今はいいです」と言っている感じがする。そんな俺の様子を見て、夏樹は少し心配そうな顔になった。


「ちゃんと食べないと午後持たないよ?」

「分かってる」


 分かってはいる。分かってはいるのだが、体というのはなかなか言うことを聞かないものだ。俺は弁当箱に手を伸ばしながら、ふと気になったことを聞いた。


「そういえば」

「ん?」

「一人なのか?」


 夏樹は一瞬きょとんとした顔をして、それから「ああ」と小さく笑った。


「萌と直美なら高原くんたちと食べてるよ」

「なるほど」


 俺は静かに頷いた。

 つまり今、向こうでは高原、広田、三浦あたりが三大美少女のうち二枠と一緒に昼飯を食べているわけだ。

 ……さぞかしテンションが上がっていることだろう。

 あのメンバーなら、試合の疲れよりもそっちの方が回復効果が高そうだ。俺はそんなことをぼんやり考えながら弁当箱を開けた。中身はシンプルだ。卵焼き、ウインナー、ちょっとした野菜炒め、それとご飯。朝、時間のない中で適当に作ったものだが、まあ食べられないことはない。夏樹も自分の弁当を広げ、俺の横に並んで座る。

 それだけの光景なのに、なぜか夏樹は少し楽しそうだった。というか、妙に機嫌がいい。


 ……何がそんなに楽しいんだろう。


 ただ並んで弁当を食べているだけだ。特別なことは何もない。だが夏樹は、なぜか少しうきうきしているように見えた。弁当を開け、嬉しそうに「いただきます」と小さく言う。

 俺はその様子を横目で見ながら、とりあえずご飯を一口食べた。


 ……やはり、あまり食欲はない。


 だが午後の試合を考えると、食べないわけにもいかない。俺は半ば義務のような気持ちで箸を動かした。とりあえず今は、目の前の弁当を片付けることが先だった。

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