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きみの隣で、今日も考えてる  作者: マリセリソウ


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第21話 読書時間は今日も削られる

 食堂やまもとであの話をしてから、数日が過ぎた。


 数日といっても、商売の世界では誤差みたいな時間だと思う。俺の感覚ではそうだ。マーケティングなんてものは、基本的にゆっくり効くものだし、早く結果が出るものほど長続きしないことが多い。だから、掲示板を置いたからといって翌日から客が倍になる、なんてことはまずない。あったら逆に怖い。


 ……とはいえ。


 どうやら、ほんの少しだけ、変化は起きているらしい。

 朝、顔を洗いながら思い出すのは、昨日聞いた店長の話だ。

 掲示板の件を常連客に伝えたところ、ほぼ全員が「協力する」と言ってくれたらしい。常連というのはありがたいもので、長く通っていると自然とその店の味方になるものだ。もちろん、それは店がちゃんと客と向き合ってきた結果でもあるわけだが。


 俺は蛇口をひねりながら、鏡の中の自分を見る。

 ……今日の顔は、まあ、普通だ。


 寝不足でもなければ、特別やる気に満ちているわけでもない。球技大会当日の顔としては、実に平均点である。

 顔を拭き、軽くストレッチをしてから、いつものように外へ出た。朝の空気はまだ少し冷たい。春先のこの時間帯は、空気が澄んでいて走りやすい。


 軽く三十分ほどランニングする。

 朝に体を動かすと、体温が上がるだけじゃなく、脳も目覚める。運動した後は集中力が上がる、という研究もあるらしい。まあ研究がなくても、実際にやってみれば分かる。朝から体を動かすと、その日の調子がだいぶ違う。

 あと単純に、朝走ると少しだけ健康な人間になった気がする。これは重要だ。気分の問題だが、継続には気分が大事だ。

 ランニングを終え、帰宅して軽く筋トレをする。腕立て、腹筋、背筋。球技大会前日に筋肉痛になるほどやるつもりはないが、やらないと体が落ち着かない。

 汗をかいたところでシャワーを浴び、台所に立つ。


 炊飯器の蓋を開けると、昨日の夜にセットしておいた米がちょうど炊き上がっていた。こういう小さな準備が朝の平和を作る。世の中の平和は大体、前日の自分の努力で出来ている。

 味噌汁の湯気が立ち始めるころ、ふと思い出す。


 弁当の話だ。


 掲示板の話をした後、奥さんが「それならお弁当もやってみましょうか」と言い出した。あの人の頭の回転は速い。俺が考えていたのは店内の流れだけだったが、奥さんは外に持ち出す形を考えていた。

 大工の常連二人が、今ちょうど近くの大学のリフォーム工事を請け負っているらしく、昼に食堂やまもとの弁当を持っていくようになったそうだ。

 すると、その弁当を見た大学の教員や学生たちが「それどこの弁当?」と聞いてくるらしい。

 まあ、あの弁当を見たら聞く気持ちは分かる。

 店長の料理は見た目からして反則気味だ。家庭料理なのに、妙にうまそうなのだ。あれはずるい。

 結果として、大学の学生が昼に食べに来るようになったらしい。

 一人暮らしの学生も多いらしく、「家庭の味がする」とかいう理由で地味に人気が出ていると聞いた。

 店長は「たまたまだよ」と言っていたが、たぶんあれは半分謙遜で半分本気だろう。商売を長くやっている人は、短期の変化にあまり浮かれない。

 味噌汁の味を見ながら、俺は少しだけ頷く。

 たしかに、一時的な可能性はある。


 でも、あの料理は強い。


 胃袋を掴まれるという表現は、わりと本当に存在すると思う。


 卵を割り、フライパンで目玉焼きを焼く。ベーコンを横に並べると、じゅわっと音がした。朝の台所は、この音だけでだいぶ平和になる。


 掲示板の方も、どうやら順調らしい。

 奥さんが松葉杖をつきながら商店街を回り、「掲示板を置くので何かお知らせあれば」と声をかけて回ったそうだ。

 松葉杖をついた人が来ると、それだけで目立つらしい。

 結果として「何かあったの?」から話が始まり、「実は掲示板を始めるんです」と説明すると、興味を持ってくれる店が多かったとか。

 掲示したい情報は思ったより集まり、すでにスペースの取り合いになっている部分もあるそうだ。

 掲示板が人気コンテンツになるとは思わなかったが、まあ悪いことではない。

 ただ、一つだけ納得いかないことがある。

 店長が、別の飲食店のおすすめメニューまで掲示板に書き始めたのだ。


 あれは理解に苦しむ。


 普通の商売人なら、他店の宣伝なんてしない。客が流れる可能性があるからだ。それを聞いた時、俺は「それ、客取られません?」と聞いた。すると店長は真顔でこう言った。


「料理の腕を磨いて、また来てもらえるように努力するよ」


 ……この人、たまにすごいことをさらっと言う。


 お人好しなのか、ただの脳筋なのか。ただ、その掲示が少し話題になっているらしい。

 食堂やまもとで定食を食べて、その後掲示板に書いてあった喫茶店でデザートを食べる、という流れが出来始めているとか。

 喫茶店のオーナーがすごく喜んでいたと、店長は嬉しそうに話していた。

 自分の店の売上の話ではなく、隣の店の喜びを自分のことみたいに語るあたり、この人はやっぱり変わっている。


 ……だが、そういう人だから常連が集まるのかもしれない。


 俺は味噌汁を椀によそいながら、小さく息を吐いた。


 そんなこんなで、今日は球技大会当日である。

 全部で五試合。

 午前中に二試合。午後に三試合。


 ……いや、普通にきつい。


 十分ハーフとはいえ、五試合もやれば体力は普通に削られる。しかも相手は体育祭テンションの高校生だ。全員無駄に元気だ。

 俺は朝食をテーブルに並べながら、少しだけ空を見上げた。


 朝食の準備を終えてテーブルに並べ終えたころ、廊下の方からぱたぱたと軽い足音が近づいてきた。振り向くと、リビングの入口に夏樹が立っている。ついさっき起きたばかりなのだろう。長い髪はまだ整っておらず、ところどころ寝癖が残っていて、顔つきもどこかぼんやりしていた。けれども目だけは妙にしっかりしていて、こちらを見つけるとすぐに口を開いた。


「創ちゃん。今日は球技大会だね」

「そうだな」


 俺は味噌汁を椀によそいながら答えた。

 それだけのやり取りだったのだが、夏樹はしばらく俺の顔を見つめたあと、ふぅっと長い息を吐いた。


「……ほんとにやる気ないよね」

「やる気がないわけじゃない」

「その顔で言う?」

「やる気の方向が違う」

「どこ向いてるの?」

「読書」


 夏樹は両手で顔を覆った。


「もう……」


 呆れたような声だったが、俺としてはわりと真面目に言っている。クラスメイトたちが球技大会に向けて盛り上がっているのは知っているし、昨日も一昨日もその話題ばかりだった。休み時間には戦術の話が始まり、昼休みにはスマホでサッカー動画を見ながらああでもないこうでもないと議論している連中がいて、放課後になれば自主練だのミニゲームだのと、クラス全体が妙に熱を帯びている。

 ただ、その輪の中心にいるかと言われれば、俺は少し外側にいる。理由は単純で、球技大会そのものよりも、最近別のことが気になっているからだ。


 読書時間が減った。


 これは読書家にとって、地味だが確実にダメージになる問題だ。休み時間の読書はなんとか確保できているが、放課後の練習が増えたことでまとまった時間が削られている。積み上げていくタイプの趣味は、こういう形で少しずつ削られるのが一番きつい。そんなことを真剣に考えていると、夏樹は椅子に座りながら首を横に振った。


「普通そこじゃないでしょ」

「重要だぞ。本は人生を豊かにする」

「球技大会は?」

「体力を消費する」

「それは知ってる」


 夏樹は呆れた顔のままパンを手に取り、もぐもぐと食べ始めた。今日は制服ではなくジャージだ。球技大会の日は運動着で登校していいらしく、クラスのほとんどが同じ格好になる。俺も例外ではない。制服より軽いし荷物も少ないので、その点だけはありがたい。

 ただし今日は一つ問題がある。体力をかなり消耗する可能性が高いということだ。しかもそのあと、俺はバイトに行く予定になっていた。

 正確に言えば、これは自分から志願したが却下された。

 山本さんが「今日は疲れるでしょうし、バイトは休んでもいいですよ」と言ってくれていた。球技大会で体力を使うだろうから、という配慮だった。普通の人ならありがたく休むところだろうが、俺は給料が減るのが嫌だったので、特に迷うこともなく「出ます」と答えた。すると山本さんは少し困った顔になり、


「決勝まで行ったら体力持たないと思いますよ?」


 と心配してくれたのだが、俺としてはそもそも決勝まで行くかどうかも怪しいと思っていたので、


「そこまで行くかわからない」


 と答えた。すると山本さんは少し考えたあと、ふとこんなことを言った。


「でも……夏樹ちゃん取られてもいいんですか?」


 その一言で、空気が変わった。

 横で聞いていた店長の動きがぴたりと止まり、奥さんも顔を上げる。店長はゆっくりこちらを見て腕を組んだ。事情を山本さんから聞いた二人は「それはまずいな」、奥さんも真剣な顔で頷き「負けてはいけないわね」と言う。

 ついさっきまで「無理しなくていいよ」という雰囲気だったはずなのに、急に戦争前夜みたいな空気になっているのだから不思議なものだ。

 店長はさらに「クラスの名誉もあるしね」、奥さんも「幼馴染の未来もある」などと言う。

 どんどん話が大きくなっていくのだが、俺としてはそこまで深刻に考えていない。むしろ、また余計な理由が増えたな、という感覚に近かった。

 そんな空気の中で、当の本人が口を開いた。


「私のことは大丈夫だよ!」


 夏樹はそう言って、少し強めに頷いた。


「断ればいいんだから!」


 それを聞いた山本さんが、きょとんとした顔で首をかしげた。


「断るんですか?」

「え?」

「なんでです?」


 その瞬間だった。

 夏樹の顔がみるみる赤くなった。


「えっと……それは……」


 言葉を探すように口を開くが、うまく出てこない。視線が泳ぎ、落ち着きがなくなる。そして次の瞬間、夏樹は急に立ち上がり、店の隅に移動してしゃがみ込んだ。しかもそのまま丸くなる。

 店長と奥さんと山本さんが三人でその様子を見ている光景は、なかなか不思議なものだった。


「どうしたんですか?」


 山本さんが優しく声をかけたが、夏樹は何か言おうとして結局言葉にならない。しばらくそのままの状態が続き、完全復活までには意外と時間がかかった。しかも復活してからもしばらく様子がおかしく、視線はやたらと逸らすし、反応も一拍遅れるし、明らかにいつもの夏樹とは違う動きをしていた。

 あの時は単純に「疲れてるのか?」くらいに思っていたのだが、家に帰ってからもその状態は続いていた。夕食の時も落ち着かない様子で、いつもより会話が少ない。さすがに気になったので、寝る前に聞いてみた。

「どうした?」

「何が?」

「様子おかしいぞ」


 そう言うと、夏樹は一瞬黙り、それから急に立ち上がった。


「創ちゃん!そういうところだよ!」


 それだけ言うと、自分の部屋に入ってしまった。ドアがバタンと閉まり、廊下に残されたのは俺一人だった。


 …………。


 何が悪かったのか、いまだに分からない。


 そんなことを思い出していると、目の前で夏樹がパンをかじっていた。今はもう普通の顔をしている。昨日の出来事など最初から存在しなかったかのように。

 人の気持ちは難しい。

 俺は味噌汁を一口飲みながら、静かにそう思った。



 学校に到着してまず目に入ったのは、グラウンドの異様な光景だった。

 普段はサッカー部と野球部がそれぞれ領土を主張している広い校庭なのだが、今日はその地面に白いラインがいくつも引かれている。しかもただのラインではない。よく見ると、サッカーコートが五つ描かれていた。配置は見事なまでにサイコロの「五」の目。中央に一つ、その四隅に四つ。上空から見たらきっと綺麗に並んでいるのだろう。

 なるほど、これなら同時進行で試合ができる。効率的だ。

 しかも決勝戦は中央のコートで行うらしい。つまり周囲のコートで勝ち上がったチームが最後に真ん中へ集まる、という構図だ。これはなかなか演出的にもよくできている。おそらく生徒会か体育委員会の連中が考えたのだろうが、なかなかどうして、イベント設計としては悪くない。朝からライン引きやらコーン設置やらで大変だったに違いない。俺はグラウンドの端に立ちながら、心の中で静かに拍手を送っておいた。こういう裏方がいないと学校行事というのは成立しない。

 周囲を見渡すと、すでに各クラスが集まり始めていて、あちこちでウォーミングアップをしている姿が見える。ボールを蹴り合っている連中、円になってストレッチをしている連中、やたらと気合いの入った掛け声を出している連中。朝からグラウンド全体が妙に活気づいていて、普段の学校とはまるで空気が違った。

 そんな中で、俺は少しだけ肩の力を抜いて立っていた。

 やることがないわけではない。むしろ今日はそこそこ忙しい予定だ。だが、周囲の熱量に完全に同調しているかと言われると、やはり少し距離がある。そもそも俺はイベントに過剰なテンションを持ち込むタイプではない。淡々とやるべきことをやる。それだけだ。

 横にいた夏樹は、グラウンドの様子を見て少し目を輝かせていたが、やがて腕時計をちらりと見てから俺の方を向いた。


「じゃ、私は体育館行ってくるね」

「おう」


 夏樹は今日、バレーの試合に出るらしい。球技大会は競技ごとに場所が分かれていて、サッカーはグラウンド、バレーは体育館だ。だから必然的に行動も別になる。夏樹は軽く手を振ると、そのまま体育館の方へ小走りで向かっていった。

 その背中を見送りながら、俺はふと周囲の掲示板に目を向けた。

 大きく貼り出されているのは、今日のトーナメント表だ。

 こういうのは大体、見ておくべきだろう。自分の試合の順番も分かるし、対戦相手の流れも読める。俺は人だかりの隙間に入り込み、トーナメント表を眺めた。

 そして、すぐに気づいた。

 川村のクラスの名前が、はるか反対側にある。


 つまり――


 決勝まで当たらない配置。


 偶然なのか、運営の配慮なのか、それとも単なる確率の問題なのかは分からないが、とにかく配置上はそうなっていた。途中で当たることはない。勝ち進んだ場合にのみ、最後に対戦する形だ。


 ……なるほど。


 俺はトーナメント表を見ながら、小さく息を吐いた。

 クラスの連中があれだけ騒いでいた相手と、文字通り「決勝でしか会わない」配置になっているのだから、これはある意味でドラマ性が高いと言える。もっとも、そのドラマの舞台に立つには、まずこちらが勝ち上がらなければならないわけだが。

 そこまで考えたところで、グラウンドの向こうから見覚えのある声が聞こえてきた。


「山神! こっち!」


 高原だった。

 その隣には広田と三浦の姿も見える。三人ともすでにジャージ姿で、ボールを足元に転がしていた。完全に試合モードだ。

 俺は軽く手を上げて合図を返すと、トーナメント表から視線を外し、そのまま三人のいる方向へ歩き出した。

 高原たちのところへ合流すると、すでに簡単なミーティングは始まっていた。もっとも、難しいことをしているわけではない。試合前の確認と言っても、高原がボールを足元で転がしながら「守備の距離感だけ気をつけよう」とか、広田が「焦って突っ込むなよ」と言うくらいのものだ。三浦に至っては軽くストレッチをしながら「とりあえず最初の五分は耐えよう」と言っているだけで、会議というより雑談に近い。

 とはいえ、これでも一応は作戦会議だ。

 そのあと、試合に出るメンバーと出ないメンバーで軽くウォーミングアップを始めた。ボールを使ったパス回しをしたり、軽くダッシュを入れたり、ストレッチをしたりと内容自体は普通の準備運動なのだが、周囲のコートでも同じような光景が広がっているせいで、グラウンド全体が妙に本格的な大会みたいな雰囲気になっている。朝からこれだけの人数が一斉に身体を動かしていると、土の匂いと運動の熱気が混ざって、いかにも「球技大会」という空気が出来上がるものらしい。

 そんな中で、俺は軽くストレッチをしながら周囲の様子を眺めていたのだが、不意にグラウンドの入口の方から見覚えのある三人組がこちらへ歩いてくるのが見えた。

 夏樹、山本さん、それから柴田さん。

 バレー組のメンバーだ。

 さっき体育館へ向かったはずなのに、もう戻ってきたのかと思ったが、三人はそのまま真っすぐこちらへ歩いてきて、俺たちの少し手前で立ち止まった。


「創ちゃん」


 夏樹が軽く手を振る。


「どうした?」

「トーナメント見た?」

「見たけど」


 そう答えると、夏樹は少し得意そうな顔になった。


「試合時間、ちゃんと調整されてるよ」

「調整?」


 横から山本さんが補足する。


「サッカーとバレー、試合が重ならないようにしてくれてるみたいなんです」


 俺は少し驚いて、もう一度グラウンドの方を見た。

 言われてみれば、確かにそうらしい。サッカーの試合スケジュールとバレーの試合スケジュールが微妙にずらされていて、どちらかの試合をしている間は、もう片方は基本的に試合が入らないようになっている。


 つまり――


 互いの試合を見に行ける。

 さらに柴田さんが腕を組みながら続けた。


「しかも決勝も時間ずらしてあるのよ」

「へぇ」

「だから、もし決勝まで残ったらちゃんと見られるってこと」


 なるほど。

 中央コートの演出といい、この時間調整といい、今回の運営はなかなか気が利いている。生徒会か体育委員か知らないが、相当ちゃんと考えてスケジュールを組んだのだろう。俺は心の中で静かに感心していた。


 ……ただ。


 その説明を聞きながら、俺の頭の中に別の疑問が浮かんでいた。

 いや、疑問というより、ほぼ確信に近い。俺は三人の顔を順番に見てから言った。


「つまり、互いの試合を応援できるってことか」

「そういうこと!」


 夏樹は嬉しそうに頷いた。

 山本さんもにこにこしている。

 柴田さんは腕を組んだまま満足そうな顔だ。

 俺は少しだけ空を見上げた。

 そして静かに思う。


 ――なるほど。


 つまりこれは、


 俺の読書時間が削られる仕組みが完成したということだ。




 試合が重ならない。互いの試合を見られる。応援できる。


 ……逃げ場がない。


 俺はもう一度三人を見た。

 夏樹は嬉しそうにしている。

 山本さんは微笑んでいる。

 柴田さんは何か企んでいる顔だ。


 俺は小さくため息をついた。


 どうやら今日という一日は、思っていた以上に忙しくなりそうだった。

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