ララの誕生日1
「誕生日おめでとう!」
「ありがとう。」
今日はララの誕生日の前日。当日は家族で旅行に行くと聞いていたから、前日にシズクなりの誕生日会を開いた。その中でシズクの家でお昼をご馳走になることになったララは、アメからアレルギーや苦手の物がないか聞かれた。
「アレルギーも苦手な物もないです。」
「そう!なら良かった。」
ララの言葉を聞いて、アメは安心して腕によりをかけた料理を振舞った。
「美味しい…!」
リゾットを一口食べたララは瞳を輝かせる。よっぽど美味しかったのか、夢中で頬張ると米粒ひとつ残らず平らげてしまった。
「ふふ。そんなに美味しかった?」
「はい。世界一です…!」
「あら。褒め上手さんね。」
その後、他の料理を美味しそうに頬張ったララは、今までに見たことがないくらい幸せそうだ。
「ご馳走様でした。美味しかったです。」
「それは良かったわ。」
「シズクも、ご飯に誘ってくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
満足げにニコニコと笑むララ。そんな彼女にプレゼントを渡そうと部屋に魔道具を取りに行く。
「あれ?」
居間に戻るとララの姿がなかった。どこに行ったのだろうと周囲を見回すと、台所で洗い物の手伝いをしていた。
「あ。シズク。どこ行ってたの?」
「これ取りに行ってたんだ。」
「何それ?」
プレゼントだよ。と伝えて、ララに小包を手渡す。開けていい?と聞くララに頷くと、彼女はおもむろに紐をほどいて中身を確認した。
「これは、魔道具?」
中身を取り出してララはじっくりと観察する。それは見た目こそ綺麗に装飾されて、一見するとアクセサリーの様に見えるが、持った瞬間確信する。それは魔道具だと。
「凄い精巧に作られてる。それに作った人の心が込められている作品。こんなのどこに?これは量産されてる奴じゃない。ただ1つ、誰かの為に作られた物って感じがする。シズク、もしかしてこれって――」
私の為にダンさんに作ってもらったの?そう聞こうと、魔道具から目を離した時、ララの目に映ったのは顔を真っ赤にして恥ずかしがるシズクだった。それを見て、ララは思わず微笑んだ。
「もしかして、シズクが作ってくれたの?」
「うん。」
「ありがとう。嬉しい。こんなに綺麗な魔道具、初めて見た。でも、なんでそんなに恥ずかしがってるの?こんなに凄い物なのに…」
「だって、ララが凄い褒めるから。」
「えっ。もしかして、さっきの全部出てた?」
コクリと頷くと、次はララの顔がボンと真っ赤に染め上がる。どうやらさっきのは全部、心の声だったようだ。
数秒の静寂が続く。その間、2人とも心の整理を済ませる。先に静寂を破ったのはララだった。
「そういえば、これってどうやって使うの?ボタンもスイッチもないけど。」
「それは危険察知装置だよ。ララに危険が及んだ時に知らせてくれるんだ。」
「そうなんだ。じゃあずっと身に着けとかないとだね。」
魔道具には紐を通す穴が用意してある。ララはシズクから紐を受け取ると、魔道具を普段持ち歩いている鞄に取り付けた。
「これで効果を発揮するの?」
「うん。」
鞄に提げられた魔道具をララは愛おしそうに触る。
「それにしても凄く綺麗ね。この装飾もシズクがやったの?」
「うん。完成してからララの誕生日まで時間があったから、図書館で美術の勉強をして表面を塗装したんだ。」
「あ...確かに。美術とかの本を読んでたね。」
完成した後、アメと相談して表面を塗装することにしたシズクは、その日から塗料の勉強をし、この塗装を完成させた。モチーフは、
「...まるで夜空みたい。」
「よくわかったね。夜空ってわかってくれたなら、塗装は成功したってことかな?」
「うん。大成功だよ。」
ララはその塗装を随分と気に入ったようで、彼女の家まで送っていく道中もずっと綺麗だと呟いていた。
「今日はありがとう。プレゼントも嬉しかった。」
「うん。ならよかった。明日は楽しできてね。」
「うん。バイバイ。」
「またね。」
ララに別れを告げて、シズクはアメと一緒に帰路についた。この時のシズクは知らなかった。まさか翌日、この魔道具がララの生死を大きく左右することになるとは。
ララの誕生日は7月6日です。
次回は5月3日(土)0時0分に投稿いたします。