表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/23

運命の出会い

3歳の誕生日を迎えても、シズクの生活は大して変わることもなく。隠れて色んな魔法陣を研究していた。既に両親が使う様な一般的な魔法は理解して、今は専ら魔道具の仕組みを理解するのに心血を注いでいる。当然、隠れてだが。


「シズクー。頼まれてた目覚まし時計だ。今度は壊すなよ。」


「うん。ありがとうお父さん。」


シズクの父親ダンは、ここら辺では有名な魔道具職人で、町唯一の鍛冶屋で魔道具の作製を行っている。この目覚まし時計は、魔道具の仕組みを調べようと解体したところ直せなくなってしまった物で、落として壊れちゃったと噓をついて父親に直してもらった。


直して貰った魔道具を観察し、やはりよくできた物だと感心する。


魔道具はそれ自体が魔素を吸収する機能を持っていて、ボタンを押すだけで誰でも魔法を使うことができる道具だ。元々は先天的に魔素が扱えない人の為に作られたもので、今では一般人では習得するのが難しい魔法を扱うための道具としての意味合いが強い。


例えば、この目覚まし時計は、時間を知らせる魔法を魔道具にしたものだ。


目覚まし時計を部屋まで持っていく。もうこれは壊せないなと思いつつ、注意してベッドの横に置いた。


魔道具を解体してわかったが、これに関してはどれだけ魔法を理解していても、意味がないとわかった。何故なら魔道具の中の機構は機械仕掛けになっていて、どちらかと言えば機械に詳しくなければならない。


当然、その機構に魔法を扱える機能を与えるには魔法の知識が必要なわけだが、その理論に関しては何となく理解できたので、魔道具に対する興味は少々失われている。



「シズクー。お出かけしましょう。」


「わかった。準備するから、ちょっと待って。」


翌日のことだった。アメに連れられて外出することになった。いつもは外出といっても近くの八百屋さんに行くくらいのものだったが、今日は少し遠出して、町の中心部である商店街まで来た。


どうやら今度のダンの誕生日の為にプレゼントを買いに来たようだ。


「あの人、ネックレスとかブレスレットとかの装飾品は好きじゃないのよね。シズクは何がいいと思う。」


「うーん。」


ダンの性格は仕事熱心な愛妻家だ。どんなに忙しくても必ず家には帰ってくるし、アメへの愛情表現もよく見かける。当然シズクにも十分な愛を注いでいる。


そんな彼だったら、何を貰っても喜びそうなものだが、一番喜びそうなのは消耗品だろう。彼は魔道具職人として、手先の手入れを怠らない。


「ハンドクリームとかどうかな?そろそろなくなりそうだったよね。」


「ハンドクリーム!そうね。確かになくなりそうだったわ。でも、いつも買っている物だし、誕生日って感じがしないわよね。そうだ。ハンドクリームと一緒に爪やすりも買いましょう。」


「いいと思う。」


そういえば、ダンの使っている爪やすりは使い古した物だった。なんで新しい物を買わないのかと思って、以前聞いたこともあったが、その時に大切な人に貰った物だからと言っていたが、多分アメに貰ったもだろう。彼はアメに貰った物なら、本当に使えなくなるまでそれを使うはずだ。しかし、アメに新しい物をプレゼントされたら、大人しく新しいの使ってくれるだろう。


ハンドクリームや爪やすりのついでに、必要な物を買い揃えて、2人は帰路についた。そんな中、シズクの目に入ったのは魔道具屋だった。


「ん?どうしたの、シズク。ああ、魔道具屋さんが気になるのね。寄ってみる?」


「うん。」


魔道具屋に入ると、そこには沢山の魔道具が置かれていた。その中にはダンの名前が刻まれて物がある。


「おや。ダンの奥さんじゃないか。久しぶりだな。」


「アニーさん。お久しぶりです。」


「おっ。その子がシズクか?」


魔道具屋の店主アニーとアメはどうやら知り合いらしい。それにシズクのことも知っているようだ。


「初めまして。僕の名前はシズクです」


「おお。堂々としてるな。良いことだ。」


アニーはわしゃわしゃとシズクの頭を撫でると、店の奥へと入っていた。少しすると誰かを連れて戻ってきた。


「まあ。ララちゃんね。大きくなったわね。」


ララと呼ばれる少女は少しだけ怖がっているようで、アニーの後ろに隠れてアメの顔を覗き込んでいる。


「こんにちは。」


ララは恥ずかしがりながらも、頑張ってアメに挨拶をする。その様子に心で可愛い!と叫びながら、それをぐっと抑えて、アメもこんにちはと返した。その優しい雰囲気に心を許したのか、ララは少しだけアニーの後ろから出てきて、アメの顔をジーっと眺めた。


「綺麗…」


本心が思わず出てしまったのだろうか。ララはアメの顔を見てそう呟くも、ララ本人は声に出ているとは思っていない様子だ。


「えっと…ありがとう?」


突然のことにアメも動揺している様子だ。ララもそこでようやく、思ったことが声に出てしまったと気づき、顔を真っ赤にして再びアニーの後ろに隠れた。


「はっはっは。この子は恥ずかしがり屋だけどいい子なんだ。シズクと同い年だから是非とも仲良くしてくれや。」


ララは真っ赤にした顔で恐る恐るシズクの方を見る。シズクはララと目が合ったと同時に初めましてと挨拶してにっこり笑った。人見知りのララは、初めて見る同年代にビックリしたのか、直ぐにまたアニーの後ろに顔まで隠してしまった。しかし、すぐに決心がついたのか、シズクの前まで出てくると。


「初めまして。私はララ。貴方は?」


「僕はシズクだよ。よろしくね。」


「シズク…良い名前。あっ…」


どうやらまた心の声が漏れてしまったようだ。恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせて、顔を小さな手で覆ってしまった。


「ありがとう。でも、君の名前も良い名前だと思うな。お互い、名前をつけてくれた人に感謝しないとね。」


「うん…そうだね。お父さん。ありがと。」


素直だなぁ。と思いつつ、シズクもアメに感謝する。アメは感激したのか、満面の笑みで涙を浮かべている。アニーも同様だ。


「また会おうね。シズク。」


「うん。またね、ララ。」


その後少しだけ話してから魔道具屋を後にした。ララは印象の通り素直な子で、良く心の声が漏らしていた。つまり何が言いたいかというと、彼女は非常に良い子だった。


「ねぇ。また明日もここに来ていいかな?」


「良いわよ。同い年の友達ができて嬉しい?」


「うん。」


3歳になってわかるようになってきたが、シズクの精神は年相応だ。おもちゃに喜ぶし、好物が食卓に出たら喜ぶし、友達ができたら嬉しい。最近思うが、シズクはレイの生まれ変わりというよりかは、レイの記憶を持つ少年という方が正しいのかもしれない。そう思うようになったのは好物の違いだ。


レイの頃はパンはほとんど食べなかったし、どちらかと言えば菜食主義だった。対して、シズクは野菜を食べないわけではないが、どちらかといえば魚を好む性格だし、大好物はアメが焼くランダパンだ。


最近では好みだけでなく考え方まで、レイとは異なるようになってきた。これはシズクとして成長するにつれて、今までレイの記憶に引っ張られていた思考が、だんだんと独自に成長してきたシズクの思考に変わってきているからだと考えられる。


もしシズクの精神が完全に育てば、レイの意識は完全にシズクとしての意識と混ざり合い、晴れて自分のことをシズクだと断言できるようになるだろう。


――そうなったら良いな。


それがシズクの希望的観測で終わらないことを願うばかりだ。

ダンは青い髪に特徴的な深紅の瞳を持つ男性です。高身長で体格も良いですが、指先は女性の様にしなやかです。

ララは吸い込まれる様な漆黒の長髪に、夜空の様な紫色の瞳が特徴の少女です。物静かで可愛らしい少女ですが、物静かなのはすぐに心の声が漏れてしまうからです。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


次回は4月12日(土)0時0分に投稿いたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ