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2024年7月15日 投稿

2024年7月28日 加筆修正

 交差点の角に突っ立ったまま思考を巡らせていた悠里は、突然の背後からの声にビクッとして慌てて振り返った。

 するとそこには同じくらいの歳の男の子がいた。

(えーっと誰だろう?知り合いではない、よね?私が不審者に見えたのかな、いやいやまさか子供を不審者だとは思わないよね。なら何?・・・)

 人見知りの激しい悠里は突然声をかけられてびっくりしたのと同時に激しい混乱に陥っていた。普通ならそれほど混乱するような場面ではないし、散歩している、とでも答えれば良かったのだ。


「聞こえてるよな?何してるんだ?」


 少年は何も答えず振り向いたまま固まる悠里にじれったくなったのか、再び声をかけてきた。焦った悠里は思わずおかしなことを口にしていた。


「うぁっ、えっと、その、、、な、なにもしてない!」

「は?」

「あっ、いやちがくて、あの、散歩、してたの」

「ふーん。もしかしてお前も最近引越してきたのか?」

「うん、1週間くらい前に。青い屋根のおうちだよ」

「あ、もしかして斜め向かいの家かな。この辺だと青い屋根そこしか見ないし。おれ中本滉哉(なかもとこうや)。お前は?」

「悠里。東根悠里。明後日から中学生。」

「じゃあ同級生だ。悠里はこの後どうすんの?」


 出会ったばかりの少年と会話をしているだけでなく、なんとも驚くことに彼はさらっと悠里を名前で呼んできた。悠里はこんな風に男の子と会話をしたことがなく、ましてや名前をよびすてされるなんて初めてのことで、えええぇぇ~と内心パニックになっていたし、心臓もバクバクしていた。でもそんなことは表情には一切現れなかったので、滉哉はなんか事情でもあるのか?と思い、立ち去ろうとした。


「言いたくないなら別に言わなくていいし。じゃあな」

「いやっ、そうじゃなくて!あっちの山の方に行ってみようかなって……」

 

悠里はパニックになっていたが、このまま誤解されていてはマズいかもと咄嗟に彼を引き留めるように返事をしていた。


「あの、あなたは行ったことある…?」

「滉哉でいいよ。おれも行ったことない。これから一人で行くつもりだったのか?」

「あ、うん、わかった。一人で行こうと思ってる」

「ふーん。あ、おれも暇だし一緒に行くよ。行ったことないし、面白そうだし」

「……っえ?!滉哉も行くの??」

「ダメなの?一人で山に行くの、怖くない?初めていくんでしょ?それに一人より二人の方が楽しいって、絶対」

「…………(怖いとは全く思ってなかったけど、、一人で行くのと二人で行くのでそんなに楽しさが変わる?むしろ出会ったばかりの人と一緒に行くなんて緊張しっぱなしでむしろ疲れそう…なんでこの人こんなに私に構ってくるの……)好きにしたら。」


 内心色々と思うことはあったが、面倒になって最終的に口から出たのは「好きにしたら」の一言だった。だがそんな悠里の返事を聞いた滉哉はにっこりと笑って「よっしゃ、じゃあとりあえず飲み物とおやつ持っていこ。15分後に家の前の道路集合な!」というと家の方に走っていった。その勢いに暫し呆然としていた悠里だったが、


「15分!!!!!」


 勝手に約束を取り付けられていたことを思い出し慌てて家に走った。息を切らせながら家に着いて、ペットボトルのお茶とお気に入りのグミと飴を小さめのリュックに詰め、急いで再び家を出た。

 家を出るとそこにはすでに滉哉の姿があった。彼も悠里と同じように、リュックを一つ背負っていた。だが彼のリュックは悠里のものより一回りか二回りほど大きいようだった。しかも中身もそこそこに入っているように見えた。

(近所の山にちょっと行くだけなのになんでそんな荷物?ポテトチップスとか入れたら嵩張るだろうけど、それよりなんかちょっと重そうなんだよね。小旅行……?)


「ごめん、おまたせ」

「14分!セーフだ!」

「?!本当に時間計ってたんだ……」

「は?そんなわけないじゃん、適当適当。そんなことどうでもいいから行こうぜ」


 そんなこんなで悠里は勢いに押されつつ、今日出会ったばかりの同級生らしい少年と山へ向かうことになった。



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