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掌で踊る  作者: 泰然自若
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3-馴

 

 俺は死んだ。



 死んだ。俺、死んだ。

 はぁ…。あっけない人生だった。

 よもや、異世界の女神様に殺されるとは



 タク坊…一人で大変だろうが頑張れよ…

 あぁ、お前おっさんだったな。






「はっ!」






 なんだ。今、怒られた気がしたような

 地味に節々に違和感が…何処だ…ここは。



 俺は、急激に意識を取り戻していた。

 辺りを見回す。

 そこはもう真っ白い空間ではなく、石畳の空間。

 部屋だ。石造りの。



 ベッドで眠っていたようだ。

 白いシーツに布団。

 一体、誰が…

 取り合えず、起きよう……ジャージだ。俺、ジャージだよ。



 何でジャージ…を…?

 をををっ!?



 思い出した。女神様に拷問のような加護を授かったんだったな!

 くそ…意外に、腹黒いS気質な女神様じゃないか…



 全然良いんですけどね。

 でも、もう少し、ソフトにしてほしかった。



 気絶するくらいだと…色々と残念…?

 でも、ないか。直接的なものではないし



 取り合えず、当たりを見る。

 正面は窓になっているようだ。光が差し込んでいる。

 ベッドの左側は壁になっている。

 右には棚があり、俺の所持品が置かれていた。

 日本刀も立て掛けてある。



 さて、俺はどのくらい寝ていたのだろうか。

 窓を覗いても、青い空に白い雲が見えるだけだ。



 これだけだと、俺がここに来た時と殆ど時間が経っていないような感じも覚えてしまう。



 取り合えず、ベッドから起き上がり、刀を腰に差す。

 どうするかな。



 その時、ドアが開いてタク坊が姿を見せる

 冒険者っぽい服装しとる…



「おはようございます。」



 律儀にお辞儀までして、礼儀正しい子だ。



「おはよう。」



「アリシアさんが呼んでますよ。一緒に行きましょう。」



 アリシアさん?

 あぁ、女神様かな?

 兎に角、タク坊の後を付いて行く。

 どうやら、1日程度寝ていたようだ。

 話を聞くとここは言うなれば天界と地界の境界だそうで。

 この塔自体は、地上から天界まで延びているらしい。

 なんとも、実感の沸かないことだ…。



 しかし、良く寝たな。



 廊下の窓からは空が見えている。

 まぁ、本当に天空にでもいるかのようだ。

 タク坊は何故か、女神様から直々に装備一式をもらったそうで



 どうにも、怪しい。

 都合良く、そんな装備が…

 などと思っていたら、剣自体は、元々タク坊自身の所有物だったという。



 そういえば、タク坊は、子供ではなくて

 200歳だったんだよね。忘れてた。

 しかし、想像できんな…



 そんな事を考えつつ暫くすると、広間に出た。

 そこには、女神様が会った時と同じような笑みを浮かべ

 イスに腰掛けていた。



「もう、大丈夫ですか?」



「えぇ、なんとか。」



 苦笑いを浮かべるしかできん

 もう、死んだと思ってたからね…



 テーブルには食事の用意がなされていた。



「お腹が空いていますでしょう? お食べになられては?」



 お言葉に甘えさせていただきます。



「二人には、修練の塔に入ってもらい、そこで経験を積み、その後下界へ行くことになります。」



 食事を取りながら、今後の説明を受けているが。



 修練の塔。

 チュートリアルのようなものでしょうか。



「何事も、経験が大事です。危険はないので安心してください。」



 そういいながら、微笑む女神様

 その笑みの裏側には、Sの気配がします。



「ふふふ」



 ………。



「修練という事は、俺の力の具合を確かめるという事ですか。」



 怖いけど、聞いておく。



「それも、あります。ですが、やはり慣れておかなければならない事もあります。それに」



「それに?」



「貴方には頑張っていただきたいのですよ。」



 そういって笑みを浮かべる女神様。

 眩しいじゃないか…。



 そんなこんなで取り合えず、食事を終える。

 食後の軽い休憩を挟むと共に、タク坊と軽くスキンシップを取った。



 何せ、寡黙なのだ。タク坊は。

 まぁ、色々な起こっているのもあるからだろうけど。



 というか、200歳だという事をちょいちょい忘れてしまうな…

 小動物を愛でている気持ちになってしまう。

 今のタク坊は。



 恐ろしい…。これが一人身の荒み切った心という事か。



「では、山瀬さん。鍵を。」



 鍵?

 あぁ、これか。



 おもむろに取り出すと正面にはいつの間にか、扉が

 女神様も居ないし。

 タク坊を見ると、じっと正面を見据えている。

 かっこいい横顔だ。



 そう思いながら、俺は鍵穴に挿しこみ回す

 なんというか、人間の適応力にはほとほと関心するよ

 こう、非常識が続くと、耐性がつくものだ…








 ガチャ








 薄暗い通路に居た。

 案の定か。

 タク坊が居ない。



 何故か知らんが、ガスみたいなやつが床を漂っているんだが。

 壁には松明が掛けてあり、明りには困っていない。

 一本道のようだ。



 後ろにも通路が延々と延びている。

 これは、どちらに行くべきか。

 まぁ、真っ直ぐ行こうか。



 扉開けて来た事だしね。

 ゆっくりと警戒しながら進む事にする。

 自分には知識や技術が備わったと言っても、実践を経験していない。



 それにだ。

 自分の身体自体には何ら変化はないのだ。



 これは、怖い。



 これから味わう実戦への緊張感よりも

 今いるこの空間が、何より怖い。

 この雰囲気は、ゾンビとか出てきそうな勢いだ。

 言うなれば、RPGのダンジョンマップか。



 一人で来るにはレベルが低すぎて瞬殺。

 なんて事も考えてしまう。

 あの女神様はやらかしそうだからな。



 暫く、真っ直ぐ道なりに進むと前方に開けた場所が見えてくる。

 どうやら、広場のようだが。



 嫌な予感しかしないんですが

 絶対出るよ。



 いや、居るよ?

 何か、というか遠巻きで見えているよね。

 何あれ。



 あり得んだろう…。

 骸骨が闊歩しているんだが、怖すぎるだろう。



 まさか小学校にあるような模型が普通に歩いているとは。

 しかも武器持っているじゃないか…。



 くそ、気付かれた。

 というか五感あるのかあいつら?

 まだ20mくらいはあるぞ。



 一体来たよ。

 ゆっくりと俺は身体を落とす。



 やるしかない。



 抜刀。



 驚くほど身体は流れて動く。



 爪先立ちになり、身体の重心は後ろ足側に。

 その自然な動作の後



 静かに動く。

 居着く事はしない。



 何故?



 そうか。瞬発力だけでない。

 動く事によって相手を翻弄し、考えさせる。



 骸骨に高度な知能があるとは思えない。

 武器もって俺に近づいてくると言う事は

 ある程度、本能的なものによる行動か。


 何にせよ。

 どうやって動いているかは…この際置いておこう。


 取り合えず、動く。

 何れにせよ、攻撃手段の限定化は可能だろう。



 頭が澄み切っている。



 驚き?



 既にない。



 見える。



 何が。



 全てが。



 相手の動作。


 

 関節の動き。



 骸骨だから余計に?



 いや



 そういうわけでもなさそうだ。

 違和感はない。



 走りながら、剣を振り下ろしに掛かってくる骸骨。



 遅かった。



 当たるわけが無い。

 こんなに遅いものに。



 沈む。

 身体が沈む。



 そのまま、後ろ脚で床を蹴り胴を抜く。

 振り向きながらの返しで首を刎ねる。



 妙に乾いた音が反響する事も無く

 崩れ落ちる骨は塵へとなってしまった。



勢いしかない。行ける所まで勢いで。その後は……。

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