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掌で踊る  作者: 泰然自若
3/18

2-誘

 何で、こんな事になったかね。


「あああぁぁぁぁ!!」


「うわぁぁぁぁぁ!!」



 落ちてます。意味が判らんけど、何故か知らんけど、どうなったか知らんけど

 兎に角、落ちてる。



 あり得ん。



 うぉぉぉ。俺よ、早く起きるんだ!!

 夢だろ。これ、そうでしょ!

 あるよね。良く、高い所から落ちる夢見るもん。今回もそうだろ!

 起きろ。俺よ、早く起きてくれ!



 そんなことしてたら少年がいつの間にか離れていってるよ!



 必死に手を伸ばす。少年、手を伸ばすんだ!

 取り合えず、離れ離れで死にたくないよ。俺は!



 変な意味で必死に少年を捕まえる。

 よし!

 くそ、よしじゃないよ。この状況どうするんだよ。

 というか、もう地面近いじゃないか!!



 速すぎだろ。

 マジで、死ぬようだ。あり得んだろう。あの少女、一体何で、こんな鍵を

 ずっと右手に握っている鍵を見る。くそ…どうすれば…



 何か、何か手立ては無いのか…もう無いけど、探さないと気が治まらないよ……え?



 右側に何故か、鍵穴があった。

 空なのに。



 落下中なのに、律儀にその鍵穴は俺達の落下速度に合わせているかのようにそこに存在している。

 何、これ、怖いんですけど…。と、言っていられる状況ではない!

 俺は鍵を落とさないよう、慎重に、鍵穴に挿し込む。







 ガチャ








 また、引きずり込まれたよ。

 白い所に。床に少年を小脇に抱きながら、寝そべった状態で。

 まったく、何なんだよ…これ



「おじさん…。」



 おぉ、少年、生きていたか。



「大丈夫だったか?」



 そう言って、立ち上がる。



 おい



 嘘…だろ…。俺もう…三十路近いんだぜ…?



 冷たい。



 くそ…涙が…。



「ごめんなさいね…。もっと安全にここまで、送り届けて挙げられる予定だったのだけれど」



 はっ!

 誰だ!!

 俺は慌てて見回すと少年が一人の女性と対峙していた。

 俺からは丁度左横に居る状態。



 若干の安堵感が…正面に居られたら危なかった。



「あの、本当に、父さんはここに居るんですか?」



 少年は女性にそう聞いた。

 何やら、本当に深い理由があるらしい…

 俺としては、色々聞きたいが部外者だしな…



「えぇ。その事についても話しますし、そこの方の問にも答えますよ。」



 そういって女性が微笑んだ。

 美しい…。それと声が、あの時、響いたものと同じだ。

 となると、ここへ少年を呼んだのは彼女か。

 それにしても、少女と似ている。気がする。

 白い服装に、白い肌、白い髪の毛。



「あの子は、私自身。ですから」



 そういながら俺を見て、微笑んでいる。

 考えている事が読めるらしい。

 困ったものだ…



 …!

 つまり。



 険しい顔つきで女性を見るが女性は微笑むばかり。

 く…。綺麗な女に、醜態を晒してしまうとは…もうお婿に行けない気持ちになる。



「さぁ、貴方もこちらにいらっしゃい。」



 いつの間にか、テーブルとイスが用意され、卓上にはティーカップとクッキーが。



「山瀬琢磨さんには、紅茶ではなくて珈琲を淹れてありますからね」



 イスに座りながら、本当に珈琲で驚く。

 と、同時に恐怖と警戒心が一気に膨れ上がる。



「何故、知っている。」



 少女は俺が見えていることを知っていた。

 だから、俺のことを調べてもいた。ということか?



「お気を悪くさせてごめんなさいね。 でも、貴方もまた。 ここに来る運命だったのでしょう。」



 意味が判らないです。

 ため息をついた…。頭が逝っているように見えないから地の性格がこうなのかもしれん…

 こういう相手は、苦手です…



「ふふふ」



 もう、良いです…



「ここは、光の世界。そして、貴方達はこれから天地の世界へと誘われる事になります。」



「御伽噺ですね。」



「えぇ、ここは貴方達の御伽世界。」



 へぇ…。



「加藤タクマは、お父さんを探しに。そして、この世界を助けるために」



 先ほども言っていたことか…お父さん…



「世界を、助ける…?」



 少年にそんな事を強いるのか。

 ゲームの世界、そのものじゃないか…



「この子は、全てを知って、ここへ来る事を選びました。」



 全て?

 そういえば、少年もたくま。というのか

 将来、イケメンになるだろう!



「おじさん。」



「ん。」



 そこから話されたのは結構、衝撃的だった

 加藤タクマの父親も母親もこちらの世界の住人であったそうだ。

 500年前、突如、刻印の門と言われる門が出現し、化物が這い出てきたそうで。

 こっちの世界じゃないよ。

 俺がいた世界の話らしいよ。元々、こっちにはあったらしい。

 それを封印したのが、タク坊の両親らしい。

 封印しても、今、目の前にいる女神アリシアの白夜の門を通れば帰る事もできたそうだが

 彼らは封印を破られぬように、番人として生きていく事を選んだそうな。



 で、最近両親を殺して、門を破ったものが居るらしい。王道RPG的な流れですね。

 今は女神様の要請で俺の世界の神様が頑張ってるらしい。



 女神様も力を使っているようで、実社会には具現化した悪影響は出ていないようだけど

 代わりにこちらの世界が危なくて

 封印した血族であるタク坊を召喚したらしい。



 何でも、お父さんは生きているらしくてね。行方を捜す目的も兼ねてるらしい。

 それと、タク坊、見た目が10歳とかなんだけど、実際200歳とかだって。びっくりだよ。

 なんでもタク坊は人間ではない。半分人間で半分神。だって。謎すぎるとその設定。



 タク坊の血族は元を正せば、父方が亜神と呼ばれる神に仕える存在だったらしいのだが

 人間の女性に恋をしてしまい云々。

 というわけで、かなり長生きするようだ。

 しかも!

 成体。つまり大人になるとその後、老いることないそうだ。

 つまり死ぬまでその姿。

 なんとも羨ましい?限りだ。

 実際、俺より歳はおっさんというかじじいなんだけど、両親が護るために力を封印したらしい。

 その封印を解くにも色々準備があるようで。俺はこのままで十分だけど、タク坊が本来の姿に戻らないと

 門を封印できないときたら仕方ない。

 外見を幼児化させて、性格も幼児化させておいて、知識と経験は持ち越しされているらしい。

 なんとも、面倒な手順を踏んでいるよね。

 まぁ、それより



「色々と俺より頼りになりますよね?」



「そうですね。」



 ですよね。



 というか、完璧、俺は部外者。

 だから、その場の雰囲気に流されると碌な事が無いんだよ。



「山瀬さんを送り返すことは今のところ。できないのです。」



 ほら、来たこれ

 あれだよ。今、パワー使いすぎて凡人を送る余裕ないとかそんな感じなんでしょう。



「あちらの世界の私は、貴方達を護る際に、消滅してしまって。作り直すには時間が掛かりますの。ごめんなさいね」



「いえ、あれはもう。俺が悪いので…。本当、こちらが申し訳ありません。」



 命の恩人ですからね…死んでいたと思うよ。居なかったら。



「では、これから俺達はどうすれば?」



 取り合えず、話を先に進めよう。

 全部聞いてから、大いに悩もう。

 それにしても、タク坊は喋らない子だな。

 まぁ、元々、200歳のじじいだっていうしな。

 幼児化しても根本の人間性は変わっていないということか?



「まず、二人は大地に降り立ちます。そこでお父さんであるアルベルトを探してください。彼が封印を解く術を知っているでしょう」



 父親アルベルトで息子タクマとはこれ如何に

 あぁ、住む世界にあわせた名前ということか…自己解決。



「知っていなかった場合は?」



 可能性は0ではない。

 それに、悪いようだが死亡している可能性も検討しないと



「はい、その事も踏まえまして、6つの玉を集めてください」



 6…つ。



「6つ、集めると願い事が叶う?」



「えぇ。ただ、集めただけでは願いは叶いません。問題なのは集める過程なのです。」



 過程、ね。

 大変な旅になりそうだ。



「白玉はここにありますので、タクマに。この器にはめ込んでください。これにはめ込む事で、玉の能力によって貴方を助けてくれることでしょう。」



 玉ごとに、能力が備わっていて、持ち主を助けてくれるのか。

 若干違うようだ。

 そうだな。RPGで丸い玉といえば………まぁそう考えればいいか。

 タク坊に渡ると白玉は小さくなり、きちんとはめ込めるサイズへと変わる。

 便利なものだ。



「山瀬さんには、私から加護を授けます。」



 おぉ。



「助かります。正直、俺は役にたてそうもない…」



 タク坊は、数十年という番人生活の経験やらなんやらが残っているらしいからな…



「貴方の思い描く理想の戦士像を」



 戦士か。やはり、鎧きて、剣もって……



「……戦うの前提ですか?」



 愚問ですね。と、言わんばかりの微笑み!

 くそ…、下手すれば人を殺す事もあるということか…。

 実際、そんな経験あるわけでもないのに…



 まぁ、イメージするか…

 先ほど思ったけど、鎧って重いよね。金属だし。

 RPGだと後、盗賊と武闘家が近接で後は魔法職か。

 軽快に、動き回るのがいいな。



 蝶のように舞い蜂のように刺す

 まさにこれ。



 動きやすい服装がいいな。

 動きやすいの…ジャージか。

 運動する時といえばあれか。

 でも、ジャージで武器って…



 って



「いつ間にか、ジャージになっとる……!」



 速くないですか!

 ジャージ確定ですか。

 女神様! 微笑んでないで何とか言ってください!



「想像がとても明確で、具現化しやすかったのです」



 あぁ…まぁ、確かに、鎧なんかよりたやすく想像できたわ。これ

 でも、ジャージって…まぁ、ブランドモノではなくて本当に俺が想像したものを着込んでいる。

 着心地良いな…欲しい。これ。



「貴方が想像したものですから、貴方に合うのは当然のことですよ」



 これが…俺の理想とするジャージ!

 外見は一見普通のジャージだが………

 まぁ、俺ジャージのこと何も知らんから説明できないけど。



 残りは武器か。

 武器はなんだろう。

 短剣とか?

 でも、地味だな。

 やはり、長い剣だな。

 あぁ、でも日本刀とかどうよ。

 侍か。かっこいいな。



 でも、使うの難しそうだし、ジャージに日本刀って……



 うん、まぁ、予想通りです。



 腰には既に日本刀が垂れていた。

 日本刀に脇差。



「あの、言っておきますけど、俺、日本刀なんて扱ったこと無いですよ?」



 そりゃそうだ。こんなもの振りまわしていたら、逮捕されている。



「そこは、大丈夫です。貴方に、経験と技能を授ける事も可能です。」



 なんという、便利な加護…

 睡眠学習よろしく、そんな反則的なことが



「やりますか?」



 え、若干顔が曇っていますが。

 何か、あるのですか?



「多少、辛い思いを。何せ、まったく未経験のものを覚えるのですから」



 あぁ、そうか。そうだよね。

 でも、やらないと生きていけない気もするから、やってもらいましょう。

 俺はまだ死にたくないですしね!



 というか、途中から完璧、俺の心読んで会話してましたよね。



「判りました。貴方の覚悟。」








 覚……悟?






 場面がいきなり変わる。

 いや、変わるというか、今まで居た。女神様とタク坊が消えて、文字通り真っ白い部屋の中にただ一人



 な、なんだこれぇぇぇぇ!!!



「が、ああああぁぁぁぁ!! いてぇぇぇぇ!!」



 何なのこれ、痛い。あぁもうだめ死ぬ。これ死ぬ痛みなんですけど!

 聞いてないよ?

 俺、こんな痛いなんて聞いてないよ?

 歯医者でも痛かったら手挙げてくださいね。

 とかいってくれるのに!!



 なんだよ。これ!



「はい、終わりました。」





 俺は死んだ。

玉に意味をつけるのが面倒そうだが、各話の目標到達地点の設定として適当に。

FF10の召喚獣的なものになれば、良いな。

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