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掌で踊る  作者: 泰然自若
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16

「タクマ。お前は俺が。」


「と、父さん…。」


「お前は俺のようにはさせん。」


父の最後の言葉だった。

何がどうなっていたのか。今となっては思い出せない。

ただ、地球という両親の生まれた所とは別の世界で俺は生を受け200年。

その世界で俺たちや、門の存在を隠し生きてきた。


運命の日。

事態に気付いた時には母が血に染まり、倒れていた。

父は。


父はどうだったのだろうか。

俺に何を。


何を伝えたかったのだろうか。

何故。

俺は、力を封印されたのだろうか。


あの時の言葉の意味は一体何なのだろうか。

父さん。

俺は、何を成せば良いんですか。

俺は。

どう生きていけば良いんですか。

教えてください。

父さん。

父さん。






???






「…………。」


私は息を呑んだ。少年とは聞いていました。

人相書きも拝見しました。ですから、それが余計に駄目だったのでしょうか。

冷徹な印象を受ける牢獄の中。あまりに幼い少年という風体だと感じてしまった。

ヤマセさんは僅かばかりの安堵感を漂わせています。

顔には出ておりません。ですが、私には判りました。

ヤマセさんはとても優しいお方であるという事は出会ってからまだ日が短いと言われようとも、私には判ります。


ヤマセさんの空気に当てられて、私も穏やかな心象になりました。

タクマ。と呼ばれる少年の安否は確実にあります。この状況下で処刑はあり得ません。

その事については、問題は解消したと言えるでしょう。

ですが。問題は


問題は


「あの、一ついいですか?」


私は自然に話しかける。

容態が思ったより良かったですね。そんな他愛も無い話をしたい。

それでも、それ以上に。


「先ほどの発言は、私の考えそのものですよ。」


判っていた。その為の、返答。

私は思わず、顔を俯かせてしまう。私がとやかく口を出してはいけない気がするのです。

私は巫女という役割を与えられています。

ヤマセさんの傍にいるのは当然だという考え方がありました。


ですが、今ではその考えが揺るいでいます。

臆してしまった。私は、ヤマセさんに恐怖を抱いてしまいました。

ヤマセさんの背負うモノに。その把握できない虚構の如き業とも言いましょうか。

言葉で言い表すのが難しいのです。その何かを。

私はヒシヒシと感じ取ってしまいました。


支ええてあげたい。もっと近くに居たい。話をしたいのです。

ですが、その感情が。その思い自体が。

ヤマセさんの重荷になってしまうのではないのでしょうか。

私は、そう思ってなりません。


「大丈夫。」


私ははっ。と顔を挙げ、ヤマセさんを見上げました。

優しい方なんです。それでいて、強い方。


「フィアナ様が、そう落ち込む必要はありません。元々、私自身が招かれざる客だと思っていました。」


彼は呟くように。


「ですが、化物との対峙。その後の教育。それらを振り返ってみると。思うのですよ。」


彼は何故、こんなにも大きいのでしょうか。


「私は、何かを成す為に、ここに来たのではないか。己の意志ではない。どうしようもないモノに導かれ。」


彼はどうして、こんなにも。

こんなにも、嬉しい顔をなさっているのでしょうか。


「貴方はどうして…。」


「己の中に。今まで感じた事の無い。高揚があるのですよ。ただ、それだけです。」


今、目の前に立つ男性は本当に、子供のように喜々としています。

私は、これ以上。言葉を紡ぐ事ができませんでした。

彼の無邪気な顔を曇らせたくは無かったから。






???







「どう見る。」


「私としては、信用ならない。というのが今の場で感じた事です。」


「ほぅ。」


「閣下。では、閣下はどう感じられましたか?」


「遠き昔に置いて来た。闘争の血を滾らせた。」


「…。閣下。」


「ハハッ!何、事実だよ。だが、奴自体に悪意は無いな。」


「…自体ですか。」


「説明はできん。だがな。そういう人間も居る者よ。」


「参考にさせていただきます。」


「うむ。休憩に関しては、向こう側に合わせる。此方としては早急に動こうが足枷がある事に変わりは無い。」


「はい。」


「だが、ヤマセ。といったか。奴のあの発言によって、貴族連中にも牽制ができたな。」


「…そうですね。」


まさか、ヤマセという男はそれも狙いだったのだろうか。

だとしたら、あの男。何手先を読んだことになるのか。

貴族という糞袋は見栄も自己顕示も数多の欲望を虚無の如き内部に宿している。

そんな糞袋が加護者を見逃すはずもない。

神からの使者と呼べる存在を我が手中に収めようと画策し実行するだろう。


主観だといった。つまりは嘘をついてもこちら側に露見する確率は低い。

事実は事実だ。その当時の奴の心情などどうとでも己の中で解釈できる。


ふむ。興味深い。

剣の腕も、頭の回り方も。

あぁ、そういうことか。奴は向こうの国での教訓をあの場で活かしたのだろうな。


フフッ。何処の貴族も変わらぬ糞袋という事か。


「此方はこちらで話をしようではないか。」


閣下の周りに集まるは精鋭の長達。

辺境騎士団軍務長官。東西南北各領の騎士団副総長並びに軍務長官。

我が国に存在する、騎士団。言うなれば戦闘に特化した集団の上層部が一堂に会した。


「各員。報告を。」


「国境付近においては特に目立った進展はありません。北方方面から管区長の情報によるとグルンカルツは今のところ此方に来る気配はないと。」


「ふむ。帝国とはいえ一枚岩ではない故に、警戒は怠るな。」


「はっ。東方方面管区長からも同様です。レナン川を渡る客船、商船に変化はなく。対岸に目立った動きもありません。」


「流石に、か。」


「既に、情報は入っているかと思いますが、極東の平定が先決と言う事でしょう。」


「各国からの進撃。その可能性は低い。という事で良いかな。」


「はい。ですが、万が一を考慮し、厳戒態勢を敷かせております。魔物の活動が活発になったという名目で魔物狩りを行いつつ、周辺の警戒にも人員を割いています。」


「迅速な情報を得るために風竜の使用許可を出そう。」


「はっ!ありがとうございます。」


「次。」


「西方騎士団ルーギットより、狼の出没件数に関して変化はないという情報を得ています。」


「ふむ。では。」


「はい。アセナ出現と狼の被害増加に関しては因果関係を調べる必要がありそうです。今の情報ではこじ付けでしかありません。」


「許可する。他は。」


「噂を流す人物は主に行商人のようです。どれも誇張の入った物ですが、やはりあの少年が話題には挙がっています。」


「それについてもう一つ。」


「話せ。」


「少年について、ギルド本部から支部経由で返答を貰う事ができました。」


「ほぅ。となると」


「はい。ギルドとしては、今回の件に介入する気があるようです。」


「厄介でもあるが、頼もしいな。」


「少年は史上最年少でランク10に挙がった逸材。性格も技能も申し分ない。その少年が今、流れている噂のような事をするはずがない。と。」


「ハハッ。あのじじいどもにそこまで言わせるか。」


「情報の速さから察しますと。」


「うむ。逆にそれが信憑性を帯びるには十分だ。」


「細かい小言は後日、王宮宛に来ると思われます。」


「今は、外へやれる文官が居らんな。」


「この件につきましては我々でもよろしいかと。元々ギルドとは知己のようなものですから。」


「副官が泣くぞ?」


「いえ、我々内職側は暇でして。」


「ハハハッ!許可しよう。文官には話を通す。」


「ハッ!有難う御座います!」


「次。」


「王都内部では、噂を精力的に流す輩が居ります。ですが、それは貴族の手の者でした。」


「良くやるな。」


「クラウス騎士団は現在王族関係者の保護と警護のために多くを割けません。その為に、兵卒を動員して対応させています。」


「軍団長それについて何かあるか。」


「はっ。国軍内部で不穏は動きはありません。貴族側に付く者は居りますが、反乱や扇動を画策し実行する者は既に名前を挙げ、監視させています。」


「信頼できる、且つ軍事行動が可能な人数は。」


「大凡ですが1300は確実に動かせます。迅速に。」


「各騎士団は。」


「辺境騎士団は全体動けますが。」


「お前達動かれると逆に困るわい。」


「ローランド北方騎士団は迅速に対応できる数は70名程度です。」


「西方騎士団は大凡、100名程度が動けるかと。」


「南方騎士団は130名がすぐにでも。」


「東方騎士団は80名が動けます。」


「クラウス騎士団は200名。全員動けます。ですが」


「判っている。王都警備のみでの迅速行動で構わない。」


「はっ。」


「少年。については最早、疑う余地もなく無罪ではある。だが、こちらの受けた損失は大きい。」


「賠償の請求ですか。」


「本格的な話し合いになれば強引にでも毟り取る。それを円滑に進めるためには内部を黙らせる。貴族どもが増えすぎたのがここまで膿を肥大化させた要因だな。」


そう言い、元帥閣下はため息をついた。

糞袋の改革か。難しい問題ではあるが、取り組まなければならない大事な事だ。

騎士団に土地を与えていればこんな事にはならなかったのかもしれない。

しかし、それはそこに住まう民草達への対処が難しい。

所詮、我々は戦人(いくさびと)。戦場で生き、戦場で死ぬ。

戦乱期にその戦人達に土地を与えて統治しろと命令するのが無理な話だったのだからな。


「ヤマセ。タクマ。の両名については、玉を譲渡する考えだ。」


閣下の言葉に全員が唸る。

ヤマセの発言がある。それに元々は玉を集める事が目的だという。

それならば、譲渡は妥当だとは思うのだが。


「時期が悪いと思われますが。」


「公に譲渡は行わんよ。秘密裏だ。貴族どもにも気取らせない。」


「ですが、閣下。先ほどの会議で既に。」


「目的を告げただけだ。あの神殿には王族以外立ち入れない。貴族が後で喚こうがどうとでもなる。」


その通りだな。

既に、血縁関係者の大方は我々の手中にある。

誰の目にも触れずに迅速な行動が求められる。しかし


「可能ですね。」


「あぁ。だから、行う。」


全員が閣下を見る。

閣下の言葉で全てが決まったのだ。

我々はそれに従う。


「時期は?」


「向こう側の協議も必要だが、少年の覚醒後になるな。」


「それまでは、ある程度の自由を許すと?」


「致し方あるまい。」


閣下はそういい、眼を閉じる。

我々には、今それほど加護者に手を割ける余裕がない。

それほど、痛手だったのだ。


「各人、気を引き締めよ。内外問わず。」


「ハッ。」


低く、それでいて、確固たる自信と覚悟を伺える小さな轟きだった。


「レイア。お前に人選は任せる。」


「はっ。」


私の返事と共に、各々の行動は素早く、各所へと散っていった。







どうしようか。

グダグダになりつつある。

とりあえず、旅にはださせたい所。

最近、忙しいので、設定考えるのも、文章書くのも難儀だ…。


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