森の中
緑がだんだん深くなっていき、道を残して周りは、木で覆い尽くされていく。
軽く息を切らしながら、地面に埋まった石の上を歩き、森を登っていく。
そのまま、草をかき分けて目的の場所に辿り着く。
少し高台にある秘密基地は、海が綺麗に見える場所だった。
「はぁ、はぁ、やっと、辿り着いた。」
息を上げながら、膝に手をあてる。
汗を拭い取っていると、大きな葉っぱを垂らした二枚の間から女の子の声がした。
「ああ!!やっときた!!リリずっと待ってたんだよ。」
元気いっぱいに三つ編みをした少女、リリが葉の間から飛び出してくる。
そのままミズハにダイブし、飛びついた。
その勢いを交わしきれず、そのまま倒れ込む。
「それは俺もなんだけどなぁー、リリ。…それにしても遅かったな。」
後から出てきたのは男の子のユウトだった。
怒るかと思えば、ユウトはミズハとリリの姿を見て笑っていた。
やはり二人共ずいぶん先にたどり着いていたようだ。
「ははっ、ごめん、ごめん。寝坊しちゃって…」
ミズハは、軽く笑いながら、指で顔をかいた。
「まぁ、朝が弱いミズハには仕方ないよね。」
「だな。」
二人は納得したように共感しながら頷いた。
確かにミズハは、朝は二人に比べたら弱い方だった。
「それより、今日はなにする。鬼ごっこ?かくれんぼ?」
リリが提案しながら首を傾げた。
すると、ミズハはテンションを上げながら答えた。
「じゃあ、まずは鬼ごっこにしよう!」
「じゃあ〜、鬼はリリがする〜」
リリは勢いよく挙手をすると、ミズハとユウトは距離をとった。リリのターゲットはミズハなのか、ユウトなのかと二人して焦り出す。
「リリー、スタートしていいよぉ。」
「わかった。」
ミズハの一声で鬼ごっこはスタートする。
そのままリリは、全力疾走で向かってくる。さぁ、どうなるのかと考えながら走る。
「待て〜!ミズハー」
「ぎゃぁー!!やめてよリリ!!」
狙われたのは、ミズハだった。緊張感が頂点まで到達し、獣に追われるかのように、必死になる。
(ヤバいヤバい)
追われるミズハにすでに余裕は無かった。
そんな中、ミズハが追いかけられてる間に、ユウトは真反対に走っていく。
「もう、ユウトに逃げられるよ!」
それでもいいの?と問いかけるようにリリを誘導しようとする。
「ユウトは足が速いから、ミズハからでいいの!」
作成は失敗した。
リリはイタズラをする顔でミズハを追い回した。
その度にミズハは悲鳴をあげた。
三十分後、ようやく鬼ごっこは終わり三人で座り込む。
リリとユウトはともかくミズハだけ疲れ切っていた。
「もぉー、なんでいっつもミズハばっかり!今日こそは、ユウトに行くと思ってたのにぃ〜」
「ミズハ遅すぎ〜ハハハ!」
「そりぁー、ミズハの体力が無いからだ。」
「ぷぅー、でも最近は少し早くなったもん。」
二人に笑われる中、ミズハ自身は納得出来ない顔でムッとした。鬼ごっこは好きだが、運動が得意でないミズハはいつも勝てないでいる。
その後もミズハの愚痴は続き、リリが更に煽るを繰り返していた。
それから少し休憩をして、ユウトが立ち上がる。
「で、次はなにする?」
「なら次は、かくれんぼ!これなら勝てる!」
「急に元気になったねぇ〜。」
さっきまでの疲れはどこへいったのか、ミズハはやる気満々に提案する。何故なら、この遊びには自信があったからだ。
「確かに、ミズハは隠れるのは得意だもんな。」
「なら、次はかくれんぼね。」
二人が賛成し、次はかくれんぼに決定した。
今回の鬼はユウトだ。
「なら、始めるぞぉ〜」
そして、午前中は遊び周り、その後も三人で、地面を走り回った。それは、いつもと変わらない楽しい時間だった。
だが、さっきまでの晴れた天気から、急激に黒い雲が流れ、一瞬で天気は崩れていった。