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魔術戦刻  作者: 桜澤 那水咲
師匠と弟子
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殺し合い

カインの瞳が一瞬で敵を捉えた瞳に変わる。

その眼差しは今までどれほど温厚だったかが分かる程だ。

だが、その姿すらも今のミズハには癪に触った。

やはり手を抜かれていたことや、その実力にそぐわない自分自身にも怒りを感じた。


「あんたの属性が何かは知らないけど、これであんたのおもちゃはもう卒業よ!」


カインはミズハのことなど、遊び物の一つとしてしか考えていない。自分より下の者から反抗されれば、気にくわないのは当たり前だろう。

ここまで来てしまえば、理性よりも感情で動くべきだと判断する。


ミズハは再び水を集めると、カインに向けて放つ。

勢いをつけた水は矢の如く、細長く、そして鋭く向かっていく。とてもシンプルな攻撃だ。


「ほざけ、何処に向かって投げている。」


カインは首だけ避けて攻撃をかわす。

余裕のあるカインは一気に距離を詰め、鋭い爪でミズハの首を狙う。


その動きに、頭はついて行かなかったが、体が勝手に動いた。


「ーー!!」


「ぐっ!!」


足でカインの手を受け止めるが、止めるだけで精一杯だった。

このままでは押し切られると思ったミズハは直ぐに後ろに引いた。


(どんな馬鹿力してんのよ!)


あのまま逃げなければミズハの足は無くなっていただろう。

それ程の威力があった。

だが、だからと言ってこれ以上引くわけにはいかない。

ミズハは二度目の挑発行為に移る。

瞳で睨みつけ、今度はミズハがカインに向かって走って行く。


(あいつは私のことを見下している。ならそこに漬け込む隙はある。)


最初は単調な攻撃、拳を作り、カインの顔を目掛けて、左右に殴っていく。

それも簡単に(さば)かれるが、ミズハにとってはそれで良かった。


ミズハからすれば、変に動き回られる方が対処しづらいからだ。


「面白くない戦い方をするな。」


「あっそうーー」


今だと思ったミズハは、顔面に拳を振り、極限まで近づいた瞬間にカインの瞳に水を放つ。


「ヴッ!!」


流石に殴ってる途中で、視界にかけられるとは思わないだろう。

ミズハの拳がカインに届くことは決してない。

なら届くようにすればいいことだ。

カインは口を開く余裕がある、今の状況がいい証拠だ。

その一瞬の緩みにミズハは攻撃を仕掛けることで、少しでも勝算上げていく。


カインは一瞬後ろによろめくが、ミズハは自分のターンに持って行くために更に攻撃を仕掛ける。


(主導権は譲らない。このまま殴り殺す。)


勢いのままミズハは踏み出し、全部の力を集めて殴りかかる。

だが、カインは閉じていた瞳を開き、ミズハの手を掴む。

その瞳は、冷たいままだった。


(こいつ!!演技していたのか!)


気を緩めていたのも演技、視界に水がかかった時に苦しんでいたのも演技、全て誘導されていたのだ。


そして、ミズハは見逃さなかった。

カインの目から微かに湯気がたっていた事を、まるで蒸発したかの様だった。


「今までの戦略、褒めてやろう。だが、理性を捨て感情で動いたことは失敗だったな。」


カインはミズハの掴んだ手に力を入れると、その部分に違和感を感じる。

握力の痛みじゃない、これは熱の痛みだ。


「ギャァァァァァァッ」


「目先に振り回されたお前の敗因だ。」


その先を読んでこその戦い。

カインが前に言っていた事を思い出す。


〝戦いにおいて、大事な事は敵を周到に調べ、性質を理解することだ。〟


今それを思い出し、ミズハ自分の失策を思い知らされた。考えなしに行動したのがいい証拠だ。


カインは手を離すと、ミズハは力無く膝をついた。

手を見ると火傷を負ったような状態になっていた。


(これで答えが出た。こいつは火の属性だ。)


本来なら、怪我をする前に知っておかなければいけない情報だった。

だがそれを怠ったが故に、無鉄砲に飛び込んで、大火傷した結果になった。

こんなリアルに分かりやすい再現をされるとは思っても見なかった。


「アッハッハッハッハッハ」


その瞬間にミズハは静かに笑った。



「確かに、あんたの言う通りだよ。舐めてたのは私の方だった、って言うことね。」


「お前のその、内に秘めた荒々しさは悪くない。だが思考まで単細胞にするのはオススメ出来ない。そう言うことだ。」


衝動的と行動力は別物、まさにこの事だろう。

衝動的動いて、許されるのは強者のみと言うことだ。

この事から、痛みで感覚が麻痺したミズハはようやく冷静さを取り戻す。


(今必要なのは衝動的では無く冷静さだ。)


ミズハは立ち上がり、背中に仕込んでいた短剣を取り出す。


「そう、なら仕切り直しね。あんたの言う通り、次は思考であんたを殺す!」


刃をむき出しにし、カインに向ける。

武器を交えた戦い。ワンランク上がった土俵にカインは笑みをこぼした。


(衝動的な勢いと冷静さを忘れない心、上手くバランスが取れている。)


「いい心意気だ。では総仕上げと行こうか。」


その声はまるで心を躍らせたようだった。

まるで、竜人の本能が騒いでいるかのように、足に力を入れカインは一瞬で姿を消した。

お得意のかくれんぼの始まりだ。

一番作者が衝動的でした〜(暴走しちゃったオ)

刺激的な発想と思考回路で楽しかった


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