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魔術戦刻  作者: 桜澤 那水咲
師匠と弟子
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集大成

カインはミズハに本を渡すと少し距離を取った。

今だに先が見えないミズハは、とりあえず本を開いた。その直後に直ぐに変化は起きた。


「!!文字が光ってる。」


ミズハは唖然とした。

開いた本の中は割と大きな字の呪文が書かれており、そのマジは青く波打っていた。


それに合わせるようにミズハの周りも青いオーラに包まれていく。


「なに、これ。」


上手く言葉を出すこともままならない程、周りの世界が美しく見えた。それはまるで、オーロラの様だった。


「それはお前の属性だ。」


カインにそう言われるがミズハは理解出来なかった。

そのため疑いの眼差しで聞き返す。


「属性ってこの光が?」


「そうだ。今光っている物が属性であり、お前の体内から解き放たれた魔力だ。そろそろ、本を閉じた方がいい。体力が持たないだろう。」


「確かに、さっきからどんどん疲れが増してる気がするわ。」


魔術とは、基礎の魔法から出来た物であり、その魔法は魔力で出来ている。魔力の源は人間の生命力、つまり体力を表している。

それは、今の状態はミズハの体力を消費して再現されていることになる。


ミズハは、まだ見ていたい気持ちもあったが違和感を感じて本を閉じた。

閉じた後は、オーラが消え元の世界に戻っていた。


「もう終わりなんて残念だわ。もうちょっと異世界気分を味わいたかった。」


「現実逃避したい気持ちも分かるが、体力が底をついては意味がない。まだやる事があるからな。とりあえず本は返してくれ。」


カインに催促されるとミズハは直ぐに手に持っていた本を渡した。妙に焦っている感じがしてミズハは首を傾げた。


「その本大事な物なの?」


「これは借り物なんだ。無理言って持ち出しているからな、気をつけないと首が飛ぶ。」


まさかそんな経緯があったとは思うはずも無く、思わず口がポカンと開く。


「待って、あんたからそんな言葉が出るとは思わなかったんだけど。どんな奴から借りたのよ!」


「狂気じみた先輩だ。」


(…と言うか、よく貸してくれたね!その本!!竜人って縦社会大変そう…)


意外な回答にミズハはツッコミそうになるが、なんとか声に出すのを耐えた。


この瞬間だけ、カインが小さく見えた。貸した相手は想像もつかないが、本当に危ない人なのだろうと予想がついた。


カインはその本を大切に持つと、丁寧に閉まった。


「無事、お前の属性を解除する所まで終わったが、実感はあるか?」


「実感って言っても体力削られたくらいかな。あるとすれば、何かに包まれてる感じがあるくらい。」


ミズハは手を動かし、今も何かに包まれた感覚を試している。しばらくは慣れるまで時間がかかりそうだ。


「それで充分だ。お前に体力錬成を必要以上にしたのは、今のためと言っても過言ではない、眠っていた魔力を体の外に出し、自然と結びつけた状態した。それは常に体力を消費している事になる。」


話を聞けば聞くほど、謎が解けていく気持ちになる。

今までの、訓練はただの嫌がらせでは無かったのだ。


「先程は、魔力を目に見えるようにするために本の力で青い色がついた。それによってより理解することが出来ただろう、魔力が常に自分の側にいると言うことを」


確かに不可思議な物が目に見えた時の説得力は凄いだろう。人は良くも悪くも疑う生き物だ。

だが、それを目の当たりにした時、魔術があることが証明された気持ちになる。


「よく分かったよ。今まで半信半疑だった言葉も今では、受け入れやすくなってる。」


まるでマジックにかけられたような物だった。


「それで、あの青いオーラは何の属性なの?」


「青のオーラは水だ。つまり操るなら、お前と自然の相性が合うのは水と言うことになる。」


水と聞いて思い出すのは母だった。


「属性って遺伝するの?」


「遺伝する率は高い。親が水で子が火と言う話は聞いたことはない。」


「そう。なんか拍子抜けかも。水って優しいイメージしか無いんだよね。」


実際母も優しくて、温厚な人だった。

そのイメージもあり、あまり先頭向きでは無いような気がした。水自体が優し過ぎるのだ。


「技の使い方も人それぞれだ。鍛えていけば、特殊な技も扱えるようになるだろう。」


「特殊な技ってどう言う意味?」


「人それぞれ違うように、魔術の形も様々ある。皆同じわけでは無く、それぞれの使い方があり個性がある。それを見つけた時、強者へとなっていくだろう。誰にでも強く慣れる可能性はある、気にするな。」


前向きな言葉を上手く使って言うカインだが、ミズハはそこに引っ掛かりを覚えた。


「へぇ〜、ならカインもそうなのかな?生まれながらに恵まれてるあんたなら、そんな綺麗事が言えるのかな?」


明らかに喧嘩口調で言った。それを聞いたカインが気づかないはずも無い。


「……なんだと。」


その声色は明らかに怒っていた。


確かに、人生は工夫次第だろう。しかし、ミズハから見れば、全てを持っているように見えるカインが少し妬ましく見えた。

頑張れば何とかなる。そう言われている気分だった。

全てを持っている者が、弱者にアドバイスする時、それは最初から持っている側の人間だから言える事だと理解していない言葉に聞こえた。


「言葉の通りの意味よ。私はあんたみたいに強いわけでも無いし、魔術に恵まれてる訳でも無い。おまけに存在自体否定されるような混血種、その違いがあんたに分かるわけ。」


ミズハは隠す事無く、思う事を口にした。

手に力を集中させて、オーラが集まる感覚を覚えた。

怒りのあまり、コントロールすることも無く、自然と引き寄せた水の塊をカインに投げる。


無意識に魔力を使った自分に驚くが、その前にカインの方に顔を向けた。


ミズハが先程投げつけた水は、カインの顔に見事かかっていた。

その瞬間にカインも怒りを露わにした。


「いいだろう。今の言葉充分理解した、どうせ、最後の訓練だしな。丁度いい、これを気に思う存分殺し合おうかーー。」


カインはミズハの宣戦布告を受け入れた。

一瞬で殺気を放ち、赤のオーラがカインの背後を揺らめく。ミズハもそれに怯むこと無く、戦う体勢を作る。


そして殺し合いは始まるーー。

なんか、凄い勢いで書けてしまった!

思わず、指が動いて長文になりましたが、次回もお楽しみください〜

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