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魔術戦刻  作者: 桜澤 那水咲
師匠と弟子
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覚悟

短剣は最早近くにはない。だがこのままでは刀を奪われてしまう。

ミズハは悔しさのあまり歯を食いしばる。


(なぜ、こんなことになった。私には何が足りないんだ。)


自身の小さくて、細い手を見つめる。

こんな無力な自分に何が出来るのかと、実感する。

力ではカインに勝てない。そもそも、人種すら違う時点で無理に決まっている。


それは分かりきっている。カインがそれをミズハよりも理解してないはずもない。

つまり、カインには別の狙いがあると言うことになる。

力や、殺し合いの話では無い。

つまりーー。


(覚悟だ。)


ミズハに足りなかったもの。

生半可な意思で、刃を握りそれを振るうことにカインは怒っていた。

ミズハの行動一つ一つを彼は見ていたのだ。


(私は何をやっていたのだろう。)



あの女を殺すと決めたのに、いざ凶器を握ると恐れ、否定し、自分の意思と反する中途半端なことをしてしまっていたことにミズハは目を覚ました。


(私が決断したことは、決して綺麗な事では無い。道徳と反した事だ。なのに正常ぶろうとして自分自身をも裏切ろうとしていた。これではお母さんに顔向けできない。)


死んだ母を思い出した時、やはりあの刀を思い出した。あの一筋の流れる血が、ミズハの心を変えたのだ。

そう、あの母を奪った刀であの女の罪を償わせるのだ。

母の無念を晴らすのだと心に言い聞かせる。


ふらつきながらもミズハは立ち上がり、目の前の竜人に視線を送る。

するとカインもミズハを見る目が変わった。


「いい目だ。ようやく火がついたようだな。」


戦い方などミズハは知らない。だがそんな事は理由にならない。残酷で成り立つこの世界に思いやりなどない。

あるのは、生死をかけた存在価値だけだ。

覚悟を決めたミズハはカインにぶつかって行く。

なんとしても、殴る。なんとしても捕まえる。

この二つをモットーにして、交わされてもカインを追いかけ続ける。


拳を外して転がっても、逆に殴られても食らいつく。

ミズハが食らいつけば食らいつくほど、カインの動きもより巧みになっていく。

ついには、刀の柄の頭で腹部に一発叩き込まれた。


「ヴゥ、グッ!!」


痛みと吐き気にダウンしながら、深呼吸で耐え凌ごうとする。

追い打ちをかけるように頭痛までも襲って来て、視界が歪みフラフラと体が揺れる。


「ハッ、ハッ、嫌だ。まだ、私は、私は……。」



(何も成し遂げられていないーー。)


とりあえず呼吸を深く早く吸う。


(嫌だ!!動け!!)


ミズハは朦朧としながらもカインを探す。


(諦めるな。足を動かせ!!)


揺れた視界でミズハはカインに向かって行く.

そして、それを見たカインはついに刀を鞘に収めた。


「やっと形になったな。」


その言葉を最後に、ミズハは意識を失った。

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