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魔術戦刻  作者: 桜澤 那水咲
師匠と弟子
13/34

この世界の全て2

容赦なくカインはミズハを引きずる。

ガタガタと体が揺れ、地面に触れる肌が痛んだ。

連れて行かれた先は、死体の山だった。


「とんだ物好きもいるものだな。変な奴は、殺した死体を一箇所に集める者もいる。そうやって優越感に浸るんだ。」


目の前の光景に、絶望以外の感情が消え去った。

乾いた目で、ただただ見つめた。まるで時が止まったかのように、これが現実だった。


(何がしたいのよ。)


全く持ってミズハはその思考回路が理解出来なかった。


「お前、歳はいくつだ。」


突然年齢を聞かれるとは思わず、一瞬ハッとしてしまった。話す必要があるかは分からないが、とりあえず言ってみる。


「……十歳。」


距離を置くために端的に答えた。言い終えて気まずさが残る。カインはその言葉を聞いて、「そうか」と目を伏せた。その後ゆっくり口を開く。


「お前には酷かもしれないが、この光景は外の世界では当たり前のことだ。」


まさかと思い、ミズハは顔を上げ、カインを見上げた。


「それは、どう言うこと。」


困惑する中、カイハは話し続ける。


「この世は大きく、三つの国で分かれている。一つ天王帝国、二つ竜英国、三つ獣領国。どの国も何千年と前から争い続けている。種族差別でな。」


「種族、差別?」


最後の言葉から不穏な空気を読み取った。

初めて聞いた言葉だった。

そのため、ミズハにはそれがなんであるのかが分からなかった。


「そうだ。三つの国はどれも種族が違う。天王帝国は血の混ざりが無い人間、竜英国は竜の血を引いた人間、獣領国は獣や竜、人間が複雑に混ざった種族だ。」


何一つ知りも、聞きもしなかった話しだった。

そのせいで,頭の中はグチャグチャになり上手くまとめきれなかった。


「そんな区別があったなんて」


力なく項垂れ、無知を恥じた。


(だから、あの女は、私を蔑んだのか。)


「この世界は毎日命が死に、種族の優劣を付けるために争っている。」


「シユリ島はその戦いに巻き込まれたってこと?」


ミズハは怒りのあまり、挑発するように言った。

だがカインはただ真っ直ぐ死体の山を見つめた。

その瞳は一瞬で暗く歪んだ。


「いや、違う。巻き込まれたのではない、最初から狙われていた。この世界に安全な場所はない。全てが戦場だ。」


それは重たい言葉だった。

まるで、無関係な人間などいないと言いたいようだった。そのままカインは言葉を続けた。


「だが、その中でも生きる権利すら与えられない種族がいる。それは混血種だ。」


混血種、昨日から嫌という程聞かされた言葉だった。

どう言う意味だと疑問が膨らむ。


「混血種?」


「異なる二つの種族から生まれた者、この世界に居場所のない存在だ。半端者、恥晒しなど呼び方はいろいろだが、大体は混血種と呼ぶ。」


「その混血種が、私だと?」


ミズハの中でも疑いはあった、そしてカインその言葉に頷いた。立場もない喪失感だった。


「混血種は見分けやすく、瞳の色が左右で違う。見た目も統一感がないのが特徴だ。お前もその一人だ。」


やはりと血の気が引いた。目薬の謎がここで解けたのだ。母がなぜ、出かける時だけ口うるさかったのかようやく理解できた。ふと手を目に近づけた。答えは残酷だった。


「おそらくお前の親は,お前が殺されないように島で育てたんだろう。人が少なければ、バレる確率は下がる。ここまで生きて来られたのは奇跡だ。」


「バレたら殺されるの?」


「ああ、生きる権利が無いからな。」


その言葉にミズハは追い詰められ、理不尽を嘆くように言い返す。


「何よ。それ、そんな事あっていいはずが!!」


「あって当然だ。死ぬ事が定めだ。」


ミズハの声を遮り、カインは強く口を開いた。

頭に血が上ったミズハはとっさに体が動き、感情に任せて前に出ていた。

気づいた時には、手に痛みとカインのゴツゴツとした体の感触があった。

その時、頬が赤くなっており、殴ったのだと自覚した。

だが、ミズハに後悔は無かった。


「私は許さない。母を,仲間を奪ったお前達を許さない。」


これまでに無い瞳でカインを睨みつけた。

同時に、いつから自分はこんな荒っぽい人間になったのだろうと思った。

だがどうしても、何も知らなかった前の自分には戻ることは出来なかったのだ。


しかし、この行動をカインは咎めることはしなかった。殴られた顔をゆっくり上げて、ただミズハを見つめた。

まるで、何か伝えたい事があるようだ。


「その怒りを忘れるな。狂った常識でも、それを許すな。」


意外な言葉だった。

まさか、そんな事を言われるとは思っていなかったミズハは拍子抜けし、オッドアイの瞳を見開いた。


そして、カインは力強く言った。


「この世界と戦え」


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

にゃんと!!一応作者の桜澤でございます。


本作品の魔術戦刻を思いついたのは、私が小学生の時で、通学時間が長かったため、気を紛らわせるために遊び心で考えた作品です。笑笑


なかなか上手くストーリーがまとまらない時もあり、何度も書き直してますが、最後まで形にしたいと思い、現在最初から書き直し、内容も面白くなるように変更しました。


本作品の魅力は感情です!そのままの言葉と隠れた言葉の感情表現に注目して頂けたら嬉しいです。

また、いろいろ言葉遊びを入れています。

より作品が深く、全ての謎が解けていく作品にしたいので、今後も応援よろしくお願いします!


では一つクイズです。

シユリ島はなぜ、シユリなのでしょうか?笑笑


ヒントは言葉遊びです。




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