1/34
プロローグ
争いが繰り返されるこの世界では、三つに国が分かれている。一つ、天王帝国、二つ、竜英国、三つ、獣領国だ。
この三国は永年、種族間の差別で争っている。
天王帝国は混ざりの無い純正な人間が集まり、竜英国は竜の力を宿し、人の形を持った者達の集まりだ。
そして、人や竜、獣の血が複雑に混ざった種族を獣領国と呼んだ。
この世界では、様々な人種と魔術が存在する。
魔術は昔から善悪に関係なく人の心を惑わす技だと言われていた。
人間とは何か。
そう質問されたら貴方は何と答えますか？
私には、時として悪魔にもなり、時として天使にも見える。
これは全てを失った私、ミズハ・ローウィンの率直的な意見だっだ。
濁った空に、大地はより不気味さが増して、残酷な景色が広がっていた。
「ーー分かってた。この世界は非道だと。」
死体で溢れかえった荒地で、天王帝国の服をまとったミズハはそう吐き捨てた。
冷めた瞳が空の色を写し、刻々と歪んでいく。
握っている白い一本の刀からは、もう何人斬ったのかも分からないほど血で汚れていた。
そして、地面にポタリと落ちて混ざった血は後を絶たないのだ。
どんなに綺麗ごとを並べても、この世界では弱者が述べる言葉に過ぎなかったのだと痛感する。
ミズハは深く思い知った。あの女が言った通りだ。素直に受け入れた方が良かったのだ。
今思えば全て見透かされていたのかも知れない。
この世界に可能性を求める愚かさを
