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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

この世で払わなかったツケは、あの世で払われる

作者: 黒澤 白

人生を終えて、あの世でこんな事が待ってたら、どう思いますか?

「四十年分のツケを払って貰うぞ」


 目の前の男に言われた事に三人の男性だった者達の魂は何の事かわかっていない様子。


「ああ、何の事かわからないって顔をしてるな、でもお前達三人は共通点があるんだよ、何かわかるか?」


 男に言われて三人は顔を見合わせる。

 確かに三人は顔見知りではあったがあくまで知り合い程度の関係だった。

 だから共通点と言われても何の事かわからなかった。


「わからないか、じゃあ、・・・・という名前に心当たりはあるか?」


 名前を聞いても誰だという反応を示す三人。


「そうか、わからないか、じゃあ・・・・・事件については知ってるか? 何十年も前の事件だが、お前達が関わった事件だ、特に当時刑事だったお前はその時の犯人を捕まえただろ? その時に捕まえた犯人がさっき言った・・・・で、お前が間違って捕まえた、いわゆる冤罪だった人だよ」


 男に言われて三人は思い出す。

 確かにそんな名前だったと。


「お前達は無実の人を捕まえて四十年も刑務所暮らしさせたよな? 冤罪だと判明してもその人に会いに行って謝罪の一言もなかったよな?」


 そう言われたが三人は反論する。


「あ? 仕事をしただけ? 確かにお前達は仕事をしただろうな、その仕事が()()なものならな、おい」


「はーい」


 男に呼ばれて女が入って来て手に持っている資料と思われる物を見て答える。


「えー、まずそこの刑事だった人は取り調べの時に暴力を振るってますね、その人がやってないって言っているのに、まだ調査結果がハッキリしていないのにあなたはこの人がやったと決めつけて暴力で無理やりやったと言わせましたね、最低ですね」


 女が言う事に刑事だった男の魂は反論する。


「そんな事していない? へえー、あなたそんな事言うんですか? 言っときますけどあなた達の事はちゃんと調べて事実確認も取りましたから、あなたの他に当時のあなたの取り調べを知る刑事に聞きましたし、もちろんあなたがちゃんとした取り調べをしたかも確認しましたよ、当然暴力なんて振るってませんよ、暴力で無実の人に無理やりやったなんて言わせたあなたと違って」


 そう言われて男は何も言い返せなかった。


「はい、じゃあ次、あなたは弁護士でしたね、まだ無実の可能性があったのにあなたは今やったと言えばまだ罪が軽くなるとか言いましたね、全く救う気がなかったなんて、何で弁護士になったんですか?」


 弁護士だった男の魂は当然反論する。


「はい? 調べた結果彼が犯人だとしか考えられなかった? よく言いますね、調べた? 嘘つかないでくださいよ、あなたろくに調べてないでしょ? さっき言いましたよね? あなた達の事はちゃんと調べて事実確認も取ったと、あなたの前にここに来たあなたと同じ事務所で働いていた弁護士が言ってましたよ、めんどくさがってろくに調べてなかったって」


 女に言われて男の魂は蒼褪めていた。


「それじゃ、最後に検事だったあなたですね、あなたは無実の可能性のある証拠をもみ消して、しかもでっち上げの証拠まで出したそうですね、真の悪を捌く立場にある者がまさか偽物の正義を掲げるなんて、恥ずかしくないんですか?」


 検事の男の魂は反論すると女は深い溜息をつく。


「あのですね、私言いましたよね? あなた達の事はちゃんと全部調べたって、それなのに何で反論するんですか? あなた達耳が聞こえないんですか? それとも私の言ってる事が理解できないんですか? もうわかってるようにあなたの事も調べましたよ、あなたの事を知っている当時の検事にも聞きましたのでその人は自分の検事生命がなくなってもちゃんと告発すべきだったと後悔してましたね」


 女の言葉で男は諦めたように大人しくなる。


「はい、以上の事からあなた達は自分の仕事をろくにせずに無実の人を四十年も刑務所に放り込んだ最低なクズ野郎共です、先輩」


「ああ、ありがとう」


 男は三人の魂をまるで汚いものでも見るかのような目で見る。


「さてと、後輩が言ったようにお前達は無実の人である・・・・を四十年も刑務所に入れた、それから冤罪だとわかってもお前達は・・・・に謝罪もしなかったようだな、何? たくさんの金を貰ったから良いだろ? お前等それ本気で言ってるのか?」


 男の静かに怒気の籠った言葉に三人は怯えた反応をする。


「金じゃないんだよ、・・・・が望んだのは金じゃなくて間違いを犯した事に対する、お前達の謝罪の言葉だったんだよ、お前達が自分の犯した罪を反省して自分の前に来て頭を下げて誠心誠意謝罪の言葉を言ってくれるだけで良かったんだよ、なのにお前達はそいつが自分達に会いに来た時に何て言ったか覚えてるか? 覚えてないよな? だったら教えてやるよ、後輩」


「はーい、ええっと刑事は、自分の仕事をしただけで間違った事は何もしていないで、弁護士は、そんな昔の事を今更蒸し返すなで、検事の人は、それはご苦労さん、でしたね、あなた達本当に救いようもないクズですね、ごめんの一言も言えないなんて」


 言って女はまた深いため息を吐く。


「とにかく、お前達は・・・・に謝罪の一言もなく自分達のしてしまった間違いに全く反省せずに人生を終えた、つまりこの世でやるべき・・・・へのツケが残っている状態なんだよ、それを払拭するためにお前達には・・・・が受けた地獄の冤罪の日々をその身を持って体験してもらう」


「何を言ってるのかわからないって感じですね、簡単に言いますと・・・・さんが容疑を掛けられてからされた対応、判決が決まってからの四十年間の刑務所生活そして冤罪で釈放されてからの生活それらの状況で・・・・さんが感じて来た事をそのまま体験するって事ですよ、しかもその時の・・・・さんの精神状態や痛みや苦しみなど全部自分が感じているように体験できますから、安心してください」


 女の言葉を理解した三人は必死に抗議するがそれを男の方が黙らせる。


「何勝手な事言ってるんだ? お前達がやった結果だろ? 安心しろよ、お前達だけじゃないからなこの体験を受けたのは」


「その通りです、あなた達以外にもいますからね、どんな人がいたか教えましょうか? まずは・・・・さんを信じずに見捨てた家族や親戚の方達ですね、冤罪が発覚して報復を恐れたのか誰も会おうとしませんでしたから、こっちに来たら一度だけ体験させましたから、終わった頃には皆さん涙を流してひたすら・・・・さんに謝罪の言葉を言ってましたね、今更遅いですけど」


「それから彼を犯人と決めつけて放送した、当時のニュース局の人達や新聞記者達、さらにはネットで叩きまくったアンチとかって言うのか、そういう奴等にも体験させてもらったぜ、自分達には関係ないとか言ってたけど、無実の人を寄ってたかって追い詰めた事には変わりないからな」


「後は、先程言ったあなた達の事で確認を取った刑事、弁護士、検事ですね、それから私個人としては良いと思うんですけど、珍しく被害者やその家族の人達も受けたんですよね、あの人達は自分や家族を傷つけた犯人かもしれない人だったんだから仕方ないって言ったんですけど、一人の無実の人間をずっと犯人扱いして責めた事が許せないと、償う方法がわからずに謝罪も言えなかった自分達が許せないと、せめてこれが自分達なりの償いだと言ってましたね、体験を終えたらその人達も涙を流して謝罪の言葉を言ってましたけどね、あ、ちなみにその事件の真犯人にも体験させましたよ、というか現在も体験させてますね、だって真犯人なんですから、ちゃんと終わってから地獄に行ってもらいますけど」


「わかったか? お前達以外にもツケを払った奴等はいるんだよ、なのに一番ツケを払わなければならないお前達がしないのは、おかしいよな?」


 男が言うと三人はそれでも反論する。


「お前達、・・・・が刑務所で暮らしている四十年間、幸せだったろ? 好きな人と結婚して仕事も充実して子供もできて孫の顔も見られて幸せだったろ? ・・・・も冤罪を掛けられなければ歩めていたかもしれない人生だったんだ、それをお前達が正当な方法でちゃんと仕事をしなかったから人生を滅茶苦茶にされた、何のために生まれて生きて来たんだって思うくらいにな、そんなお前達が何もないまま天国地獄に行けると思うなよ」


 そう言うと三人の魂は嫌だと言うが男は容赦なく言う。


「嫌だとかじゃなくてやらなきゃいけないんだよ、この世で払わなかったツケは、あの世で払わないとならないんだ、それが今なんだよ、何? 世の中はそんな綺麗事だけじゃ生きていけない? それは、この世での問題だろ? あの世にこの世の問題を持ち込んでも意味ないんだよ、こっちじゃ穢れてるかそうじゃないかだ、この世に残した穢れがあるならそれを浄化しないといけないんだよ、つまりツケを払わなきゃ、天国へも地獄へも行く事ができないんだよ、生まれ変わる事ができないんだよ、そうなると処分するのが面倒なんだよ、だから潔くツケを払え」


「はーい、じゃあツケを払って貰いますね、あ、ちなみに四十年分のツケだから・・・・さんの人生体験を少なくとも百回以上は受けてもらいますから」


 女の言葉に三人の魂は蒼褪めて抗議しようとするがその前にすでに三人は自分達が冤罪で捕まえてしまった人間の人生体験をするのだった。











「なあ、あいつらどれくらい経った?」


「今二回目に入りましたね、まだまだ先は長いですけど、大丈夫ですかね?」


「さあな、少なくとももう死んでるから、精神がおかしくなったり、自分から命を絶つ事ができないからな」


「じゃあ、真犯人の魂と同じ部屋に入れときますね」


「ああ、で、お前達は何でここにいるんだ?」


 男が向くとそこには他の魂達がいた。


「先輩、この人達あの三人の魂の親達ですよ」


「ああそうか、お前達は別に関係ないしそのまま天国に行っても良いんだぞ? あんなのでも自分達の子供、見捨てる事はできない・・・か、良いのか? 長い時間自分の子の苦しむ姿をただ見続ける事になるんだぞ? それが自分達の・・・・への償いか、ならもう止めないさ、好きにすると良い」 


 男が言うと魂達は先程の三人の魂が入った部屋へと行くのだった。


「子供の責任は親の責任とこの世では言うけど、あの世ではそんなの関係ないのにな、わざわざ自分達が苦しむ方を選ぶなんて」


「それでも、自分達の子供に変わりはない、どうしても見捨てられない親だっていますよ、あの真犯人の家族だってそうでしたし」


「それより、・・・・の魂は今どうなってる?」


「今は、自分が冤罪を掛けられずに幸せに生きている人生を体験してますね、体験の中で天寿を全うしたら転生できるようにしてありますよ、もちろん次の人生は心から良い人生だったと思えるように特典も付けますしね」


「そうか、なら次のツケがある魂に会いに行くぞ」


「そうですね、今日の分はまだまだ残ってますから、頑張りますか」


 二人は今日もあの世でこの世にツケを残した魂達にツケを払わせるのだった。


 この世で払わなかったツケは、あの世で払われる 

                  

                                      



 





 

読んでいただきありがとうございます。


もしあの世がこんなだったら、悪い事はできませんね。


感想などお待ちしてます。

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