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彼氏達は可愛い彼女を自慢したい

温人と海斗が行ってる高校の文化祭のお話です。



温人と海斗の彼女、つまり紅葉と夢菜は他校生である。

その為、付き合って数ヶ月が経っているが2人に彼女がいるというのはほぼ知られていない。


しかし!

そんな2人についに彼女をお披露目できる機会が訪れた。


「それでは、獅子蔵高校文化祭を開催します!」


そう、文化祭だ。


「ついにこの日が来たな温人」


「ああ」


昇降口付近で、彼女達の到着を待つ2人。

文化祭だけに中も外も沢山の人で賑わっている。


すぐ近くでは、同級生達も他校生観察をしていた。


「可愛い子いないかな可愛い子!」


「居たとしてどうすんだよ」


「おいおい、文化祭だぞ?クラスの出し物宣伝するフリして話しかけれるだろ」


「お前…天才か」


そんな会話への聞き耳は止められない。

2人の今の気分は完全に勝ち組状態である。


と、ついにその時が来た。


「うお!見ろよあの子!メチャクチャ可愛いぞ!!」


そう男子生徒が指差したのは紅葉だ。

相変わらずの美少女っぷりに数々の男子生徒…いや、女子生徒も振り向いている。


「お、俺声かけて来ようかな」


「バカ!あんな可愛い子に彼氏がいない訳ないだろ!」


(その彼氏は俺です)


温人はそれはもう鼻高々だ。


「絶対イケメンの彼氏がいるだろ!」


(ごめんなさい。イケメンではないです)


温人は急に肩身が狭くなった。


「俺は隣の子も良いと思うなぁ」


(そうだろうそうだろう)


海斗はコクコクと自慢げに頷いた。


隣の子、とは勿論夢菜だ。

紅葉と2人一緒に来てくれたのである。

そんな夢菜を見ながら、ボソリと言葉をこぼす男子生徒。


「あの胸に顔をうずめてみたい」


(殺すぞ)


海斗の殺意が大変なことになった。


そんな海斗を慌てて温人が抑えている最中、キョロキョロ辺りを見回していた紅葉と夢菜が2人に気付いた。


「あっ、温人くーん!」


「海斗さん!」


嬉しそうに手を振る紅葉と夢菜。

その2人の視線の先にいる温人と海斗に、驚いたように周辺の生徒達が一斉に振り返った。


ーービクッ


想像以上の注目っぷりに少し怯む2人。


「お、おはよ紅葉」


「夢菜、こっち」


何事も無いフリをしながら温人が挨拶し、海斗が呼び込む。

取り敢えずさっき不埒なことを言っていた男子から見えないように隠さねば。


「え?え?海斗さん?」


「いいから、早く中行こう」


その場から逃げるように4人は校舎へと入った。


「温人くん達は自由にしてて良いの?」


「俺らの担当時間まだだからな」


「そうなんだね、良かった」


「海斗さん達のクラスは何をやってるんですか?」


「お化け屋敷。仕掛け動かすだけで顔とか出さないから見に来ても意味ないぞ」


「そうなんですね…。どうせなら執事カフェとかやって欲しかったです…」


「いやいや、俺らがやっても需要無いって」


そう海斗が言い温人も頷いているが、夢菜と紅葉は瞬間的に想像した。


挿絵(By みてみん)


((すっごい見たかった…!!))


少数からの熱烈な需要である。


そんな風に話しながら歩く4人の空気は甘く、カレカノだと聞かなくてもわかった。

歩を進める度に様々な生徒が注目する。


「え…!?橘くんの隣に居るのって彼女…!?」


「うそ!?わぁ…勝ち目ないくらい美少女…」


案外女子から人気があるのが温人だ。

困ってる人を見過ごせない性格なので老若男女誰に対してもすぐ手助けをする。

顔は決してイケメンでは無いのだが、そんな姿を見て「良いな…」と思う女子は多い。


因みに温人本人は気付いていない。


「? どうした?紅葉」


「…ううん、何でもない」


そう言いながらも、他の女子からの視線に気付いて温人の服をキュっと掴む紅葉。

そのいじらしい姿に今度は周囲の男子生徒が悶絶する。


「うわぁあ…何あの子可愛すぎる…」


「クッソ羨ましい。けど、温人…温人かぁ」


「んー…まぁ、そうかぁ〜…!」


男子からの好感度も高い温人は生徒皆んなを味方につけた!


「…紅葉。手」


「! う、うん」


辿々しくも手を繋ぐ2人を周囲が(嫉妬心を持ちつつも)生暖かく見守る。


そんな評価を受ける温人に対し、海斗はクラスメイトから尋問を受けていた。


「おい海斗!その子彼女か!?」


「おうよ。可愛いだろあんま見んな」


「温人なら百歩譲ってまだわかる!だがお前は納得できん!」


「何でだよ!お前らの目が節穴なだけだろ!」


「眼鏡のヤツに言われたくねえわ!」


もちろん冗談の言い合いであって喧嘩ではない。

海斗が他の人とふざけ合うのは日常茶飯事だ。


だがよくわかってない夢菜は焦った。


「か、海斗さんは格好いいです!と、友達思いですし…!」


必死になって言い募る夢菜にその場がシンとなる。

「え?あれ?」となる夢菜の隣で顔を両手で覆いながら海斗がしゃがみ込んだ。


「もぉ〜〜!だからそれダメだってぇ〜!!」


「…悪い、海斗」


「お前苦労してんだな」


急に同情される海斗。

ふざける余裕を無くさせた当の本人は「???」と困惑するばかりだった。





「わーん!恥ずかしいから離してください海斗さん!」


「ダーメ。可愛い事ばっかり言う罰」


「いっ意味がわかりません!!」


逃げようとする夢菜を後ろからギュウっと抱きしめて離さない海斗。

因みに今は自分達のクラスのお化け屋敷の中だ。


「おい海斗…あんまり虐めてやるなよ」


「うっせ。お前はお前でイチャイチャしてろ」


少し後ろから呆れ顔の温人が声を掛けるが聞く耳を持たない。

苛立ったオバケ(クラスメイト)から度々蹴られているがお構いなしだ。


「あ…温人くん…ぜ、絶対に置いていかないでね…っ」


因みに紅葉は怯えながら温人に貼り付いている。


「大丈夫か紅葉?無理して入らなくても良かったのに」


「だだだって…文化祭のお化け屋敷だったら大した事ないかと思ったんだもん。思ったより本格的で…ひゃあっ!」


怖がってくれる紅葉に大喜びで脅しにかかるオバケ達。

しかし脅しておきながら彼氏に抱き着くのは、例え相手が温人といえど面白くないらしい。


「いてっ」


丸めたお札モドキが後頭部に当たり、大してダメージは無いが思わず声を漏らす温人。

因みに海斗の側頭部にはコンニャクが投げられた。


「臭っせ!!バっ、これは駄目だろ!誰だ投げたの!」


「お、ホントに当たった。こりゃ天誅だな」


「ざまぁ♪さっさと出てこっちの仕事しろ」


海斗は抜群のコントロールでコンニャクを投げ返し、暗闇から「うぎゃあ!」と声が響く。

ゲームでの経験は地味に現実世界にも活きている。


「あー海斗、確かにそろそろ俺らの担当時間なるぜ?」


「マジか!つーかその前に洗わして!ガチで臭せぇっ」


温人に声をかけられ、外に出て直ぐ廊下の水道でジャブジャブ側頭部ら辺を洗う海斗。

その奇行に通りすがりの人達は驚いていたが、クラスメイト達は指をさして笑うばかりだ。


因みにこの時の夢菜の心境は『海斗さん人気者だなぁ』である。

恋は盲目だ。


でもって拭くものもなかったので、着ていたワイシャツで拭いてジャージに着替える流れになった。

その間に男女別行動となり、温人達の担当時間が終了してからまた4人で集まる。


「うへぇ、まだ臭せぇ気がする。少しはマシになったけど」


「まぁ水洗いだしな」


(海斗さんジャージも凄い似合う…!!)


海斗と温人の会話の後ろで夢菜悶絶。


(いいな。私も温人くんのジャージ姿見たい…)


その隣でコンニャク入手を考えた紅葉は慌てて思考を振り払った。


「そういや、紅葉達の学校も文化祭近いんだっけ?」


「あっ、うん。私達は来週だよ」


「おぉ、本当にすぐじゃん」


「んじゃあ、今度は俺らが遊びに行くからおもてなししてくれよ?」


「はっはい!頑張ります!」


そんな約束を交わし、気持ちを切り替える。


「よし、取り敢えずはこっちの文化祭だ!」


「時間ギリギリまで廻るぞ!」


「「おーっ」」


そうして、その後は特に大きな問題も無く最後まで文化祭を楽しんだ4人。

しかし、温人と海斗に彼女がいると全校生徒に知らしめるには充分だった。


僅かにだが周囲の2人を見る目が以前とは変わる。

恋人の居ない人からは一目置かれ、密かに恋心を抱いていた人は失恋に悲しんだ。




因みに、いつも2人一緒なので『もしや…』と妄想を膨らませていた一部の腐女子達が嘆き悲しんだのは秘密である。







クラスメイトside

挿絵(By みてみん)

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