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編集部にて ②

 編集部に来たらまさかの母さんがいた。

 なぜに?とか、いろいろ疑問がわき出てくる。なぜここにいるんだい? 母さんよ。


「母さん……? 知り合いですか社長」

「え、ええ……。離婚して父のほうに引き取られた娘、なの」

「驚いた。ここで再会とは……。世界は案外狭いものなのだな……」


 本当に狭すぎにもほどがあるでしょ。

 まぁ、動揺するのはここまでにしておこう。こういうシリアスは私には似合わないしね。うん。


「で、なんでここに? ってか、息子いるのもいろいろと疑問だけど……。母さんがこいつの母親なら回りくどいことはいらないでしょ。こいつを瀬野の担当から外して」

「なにかしたのかしら」

「原稿なくすわ、人になめた態度とるわ……。マジで大人かって疑うくらい常識がない」

「……なるほど。わかったわ」


 母さんは頭を抱えている。

 

「え、俺担当から外されるの??」

「あたりまえでしょう。潤から話を詳しく聞きますが、原稿なくすのは編集者として論外です。あなたがX Planの編集をしてみたいと本気で頼んできたからやらせてみただけなのよ。編集長、申し訳ありませんでした。ぜひ担当を変えてあげてください」

「いいのですか?」

「ええ。X Planはギャングの看板ですし、この子のせいでつまらなくなるのなら変えたほうがいい」

「わかりました」


 と、担当編集が変わるようだ。

 その事実を認識したのか、太郎は机をドンと叩いて立ち上がる。


「そんなのないだろ! 横暴だ!」

「横暴……?」


 瀬野がおもむろに立ち上がる。


「何が横暴だ貴様! 貴様のせいでこの僕がどれだけ苦労したか理解しているのか! やらかしたことを見れば編集部をクビになっても仕方のないことなんだぜ?」

「ひっ……」

「大体、貴様には反省という概念がないのか! やらかして笑顔でさーせんと謝ってくるたび殺意を覚える! それに、貴様が原稿を頻繁になくすという癖があるせいで僕はわざわざ描いた原稿をコピーしているのだよ!」


 瀬野がキレた。

 瀬野は太郎の胸ぐらをつかみ壁に押しやる。母さんは黙ってみているだけで、編集長も目をつむって見ないふりをしていた。


「コネがあるから無下に変えることもできなかっただけの貴様がなぜ偉そうにできるのだ! 僕も本来は来るつもりなんてなかったさ! 僕の大事な客人であるじゅんぺー君に失礼なことをしなければな! 僕だけなら我慢したとも。たとえ君でも……。面白くないように改変されて描かされてもね。君はまずマナーを覚えるべきだ。良識を覚えろ。人として失格だ!」

「ひ、ひどい……! 今のは侮辱だ! 侮辱罪として……」

「訴えるのか? 費用はどこから出す? 貴様が給料出てはキャバクラで豪遊してるのは知ってるんだぜ?」

「か、母さん!」

「出すわけないでしょ。自分の落とし前くらいはきっちりつけなさい。大人なんだから」

「訴えるにしたって勝ち目あるかな。今のは確かに侮辱かもしれないけど、でも、君だけって私を侮辱したから訴えてもいいよ? 私は自分で費用出せるから」


 太郎はうろたえ始めた。

 自分の置かれた状況をやっと理解できたらしい。母さんも味方になってくれず、誰も味方がいない。


「塩野くん。いい加減理解したまえ。瀬野先生に使ってもらえていたことだけでも感謝するのだ。瀬野先生。誠に申し訳ない。早急に次の担当編集を用意しよう」

「助かりますよ。それと……。頼まれていた原稿、明日でよろしいでしょうか」

「なぜだい? 猶予は与えていたはずなのだが」

「知らされてたのが今日なのですよ。忘れてた、なんていって今日必死こいて描いていた。締め切りが今日までのものを今日言うのは悪意がある以前に忘れてたなんて済ませるのもむかつく」

「……わかった」

「話は以上です。僕は行きますよ。原稿の続きをしなければならないので。じゅんぺーくんは母親と話をしてもう一回来るのかい?」

「うーん、私も……」

「潤。話を……」

「ということなので、遅れていきます」

「了解だ」


 瀬野はカバンを持ち、出ていった。


「編集長。悪いのだけれどこの部屋には私たち二人にしてもらえないかしら」

「わかった。塩野くん。立ち上がれ」

「お、俺は……俺はまだ納得してねえ!! 大体なんなんだよ! そんなに漫画家が偉いのか!」

「偉いでしょ。漫画を描いてもらえないと編集部として食い扶持がほとんどなくなるし」

「そういうことだ。馬鹿な反論をして無様をさらす前に出ていくぞ」

「編集長思いっきり厳しくし始めた……。母さんも擁護しないって理解したんだな……」


 こ、こえー。









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黒猫は眠らない
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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