黄金郷 ②
目の前に広がるのは黄金の空間。
もしかしてここが黄金郷なのだろうか。黄金郷に行く条件はこのモンスターと戦うこと。空間を作り出しそこに引きずり込むって……Aランクのモンスターにやれることじゃないだろ。
「黄金に見とれるのは後にしたほうがいいね。まだいる」
「どこから来るか……」
と、その時だった。
急に目の前に現れたムンシャドウ。ムンシャドウはミツキに思い切りかみついたのだった。
「うひゃああああああ!?」
「ミツキ!」
ミツキは消えてしまう。
なんなんだ今のは。急に現れたように感じたぞ。
すると、ふっと姿を消してしまうムンシャドウ。
黄金に煌めく空間で、私たちは追い詰められていたのだった。動くに動けない。どこにムンシャドウがいるかがわからない。
どうやって対処する?
すると、今度は私の目の前に現れた。私は思わずのけぞってかわす。
『反射神経良すぎて草』
『えっぐ』
『黄金に紛れて襲い掛かるムンシャドウ……』
あっぶない。
死にかけた。私は態勢を立て直し、尻尾に捕まる。ぶんぶんと振り回されるが、これでわかったことは消えたわけじゃないということ。
体色を変えている。黄金色に。
背景と同色になることで私たちの前から姿を消したのだと誤認させている。
「種がわかればっていいたいけど、見えなくなる敵っていうのはやりづらいな」
だがしかし、せっかく黄金郷まで来たのだ。死ぬわけにはいかない。
ミツキはやられたけど、犠牲は最小限で済ませるほかない。
「しょうがない、やりたくなかったけど……アトラク=ナクア!」
私はアトラク=ナクアを召喚した。
アトラク=ナクアが現れ、ムンシャドウを見ている。アトラク=ナクアに命令を下した。
「あたり一面に蜘蛛の巣を張って!」
「キシャアアア!」
アトラク=ナクアは周囲に糸を発射した。
この黄金空間には壁があり、天井がある。ねばねばした蜘蛛の糸が張り巡らされる。すると、右上の糸が突然動き、何かが捕らえられた音がした。
アトラク=ナクアは蜘蛛の糸を歩いて登っていく。そして、その動いたところに勢いよく前足を振り下ろす。
「ガオオオアアン!」
「さすがアトラク=ナクアさんだぜ……」
蜘蛛の巣が切れ、ムンシャドウは姿を現した。
ムンシャドウは立ち上がり、逃げようとしていたが、アトラク=ナクアはムンシャドウを糸でぐるぐる巻きにして、思い切り引っ張り地面にたたきつける。
そして、体を震わせ電気を発電し、電導性が高い蜘蛛の糸に電気を垂れ流していた。
「僕たちが手を下すまでもない。随分と恐ろしい魔物を仲間にしているものだ」
「ま、勝ち!」
ムンシャドウはそのまま消えていく。
すると、黄金郷の出口が現れたのだった。そして、部屋の中央には豪華な装飾がなされた赤い宝箱が出現。
私たちはその宝箱を囲むように立つ。
「ミツキ……には悪いことしちゃったな」
「分け前はきちんとあげましょうね」
「宝が複数個あれば分け合えるけど複数個あるかね?」
「開けてみないとわかるものか。誰が開ける?」
「じゅんぺーちゃんでしょ。リーダーだし」
「そうですね。じゅんぺーさんで」
「わかったよ」
私は宝箱の前に立つ。
そして、宝箱を開けた。




