烏兎池へ!
有象無象との戦闘を終えて、罪と罰、マドカとシシオは一息入れていた。
「ありがとね」
「困ったときはお互い様ですわー! それに、急がなくていいんですの? その、黄金郷とやらに」
「そうだね。行こうか。来る?」
「遠慮しておきますわ」
と、罪子が手を前にして拒否した。
黄金郷、見たくないのかな。
「黄金郷には確かに興味あるけど……。私たち何もしてませんし! おいしいところだけを持ってくなんて私たちはしたくないです!」
「そういうことですわ! そこは誠実に行きましてよ!」
「そういうことです! では、またコラボお願いしまーす!」
「アデュー、ですわ~!」
と、二人は走り去っていった。
律儀な奴らだな……。別に何かしたとか何もしてないとか気にしないのに。暴力に訴えてくる輩が嫌いなだけで。個人としては暴力振るわれる分には快感だしかまわないけどね?
「黄金郷!? そーいうのあるんだ!」
「行く?」
「うーん……。いいかなぁー」
「行かないの?」
「黄金には興味ないし……」
「自分もあまり興味はないので」
二人は黄金に興味を示していない。
興味がないのなら反応もさして画にならないだろう。動画的には連れて行ったらおいしくないとはいえるが。
まぁ、いかないっていうのならいいんだけど。
「わかった。じゃ、私たちは行くよ。またね」
「うん! またあそぼーね!」
「では」
私たちはマドカたちと別れて、烏兎池に向かう。
烏兎池は森の奥地にある。だが、道が整備されているらしく、そこまで一本道だった。まものはとくにでることはなく、難なく烏兎池に到着。
烏兎池は普通の池だった。
「ここに黄金郷が……?」
「ふむ。僕の目には何もないように見えるがね」
「ボクの目にもそう見える……。水の中とか?」
と、ルシフェルが水面に顔を突っ込むが。
「うーん。ただの水の中って感じ。本当にここにあるのかな」
「違うのかなー。じゅんぺーさん、どうします? 引き返してまた……」
「んあ? なんか近づいてくるべ!」
と、ミツキが池の奥のほうを指さした。
そこには大きなヒレがあった。こちらに近づいてくる。
「魔物だろう。戦うしかないね」
「ちょ、ちょっと待ってくんろ! い、今全員回復させるべ!」
と、ミツキが回復魔法を唱えた。
いつのまに回復魔法を覚えていたんだ?
「ミツキ、回復魔法をいつの間に……」
「き、昨日だべ……。わたす、戦闘じゃ役立たずだからせめて回復させて役に立ちたいんだべ……。役立たずだと卑下する前に自分にできることを考えたんだ」
「偉い。けど……私にゃ意味ないな……」
防具が初期装備なので多分今の環境ならば一発受けただけで即死だろう。
防御が心もとないからなー。ほんとに。一発も受けられないという緊張感。その緊張感がまた心地いい。が、問題点を挙げるとするならば攻撃を受けられないので痛みを得られないということ。
マゾヒスト縛りだ。縛られてるの超気持ちいい。
「私は一発受けたら即死だからねぇ! 回復はわたしにゃいらねー! ウヅキを全力でサポートするがよろし!」
「は、はいだべ!」
さて、そろそろ魔物が姿を現すだろう。
水柱を挙げて、池から飛び出してきたのは、四足歩行で、硬いうろこを持つヒレのついたドラゴンだった。
「竜……?」
「水竜……ではなさそうだね」
「ふむ。これはムンシャドウというドラゴンだ。Aランクの魔物で、祖先にはドラゴンを持つからドラゴン系の魔物に分類されている。強いだろう」
「よっし、やるぞー!」
ムンシャドウとの戦闘開始だ。




