教育に悪い?
切り忘れたのが恥ずかしいのか、ずっと顔を俯かせているようだった。
誰だって通る道だから仕方ないと言えば仕方ない。それに、陰で悪口言っている分けじゃないんだしいいじゃないか。
「こういうのって悪口とか言ってたら炎上するんだよなー。悪口は極力言わないことに限るね!」
『それもそう』
『一応人間としての常識なんだけどな』
『守れない奴が多すぎる。俺もだけど』
「私たちは少なからずとも影響力はあるわけだし、有名になればなるほどそういう悪口言っちゃいけないんだよ。私以外には」
『バーカ』
「お、言葉攻めか? こい! 好きだぜ!」
私は悪口を言われてもいい。私の悪口を聞くたびに少し興奮してる。
私にだって一応アンチはいるわけで。アンチが攻撃してこないのは私のことをよく知ってるからで。
「私は醜いブタ……。ほら……来てよ悪口……」
『ダメだこいつ』
『アンチに喜ぶ人間だし手遅れだよもう』
『あの、じゅんぺーさんってよくそのキャラで登録者多いですね……。いろいろ問題になってませんか?』
『なってるぞ。子どもの教育に悪いとか言われてる』
「そりゃそうだ。大体、ゲームがうまいか下手かなんて子どもにはあまりわからないだろ。狙ってる年齢層が違う。子ども向けにするならもっと噛み砕いてわかりやすい言葉しか使わないしね。子どもの教育に悪いとかいうけど、子どもが一番見てるのは親の背中だよ。育つ環境によって子どもの性格は変わるよ」
どういう子供に育つかは私ではなく親次第というわけだ。
「私は高校生から大人向けの配信者だからね。こうやって自分の性癖を晒け出してるし、お前らもそういうのやめろとか言わないでしょ」
「狙ってる年齢層……」
「そうそう。私は一応、公式大会とかにも呼ばれるくらいにはどのゲームも上手いという自負があるけど、子どもって大体そういうのわからないでしょ? 子どもはね、これ自分でもできる! とか思いがちなのよ。それで、できなくて泣いちゃう。自分の思った通りにいかないから。だから私は子どもには見せたくないし、見せないような内容にもしてるかなー」
「なるほど……。勉強になります」
『言ってること、なんとなくわかるわ』
『俺、小6のガキだけどなんとなくわかるよ。俺もちょっとだけ悪さしてて、親も止めてくれなかったもん。従兄弟の兄貴が止めてくれていけないことだと分かってからやめたんだけど……。やっぱ周りって大事だと思う』
年齢層と言うのは大事。
お年寄りは基本ネットなんて使わんからな。
「それに、教育に悪いとかいうけどクレーム、私が知るか! 見せないようにロックとかしとけ! 私は変わんないからな! マゾヒストはやめらんねぇ!」
『草』
『www』
「さて、もうこの洞窟に用はないでしょ。戻ろうぜ……」
「嫌な予感がしますわ……」
「ねえ、死に戻りって、知ってる? デスペナルティ設定をさ、ステータス半減のほうにしてさ……。痛覚設定を最大にすんの……」
「痛さを味わわせようとしてる!?」
私は目の前に魔物を発見した。
私は魔物めがけて走り出す。
『じゅんぺー、逝っきまーーーーーーす!!!!』
さあ、私を殺すがいい魔物よ!
魔物は手に持っていた棍棒で私をぶん殴る。痛い。だけど。
「気ん持ち良い〜〜〜!!!!」
「うわぁ……」
「私たちは普通に死にますわ」
『マゾヒストこっっわ』
『良い子は真似すんなよ』