怪の次は金
百鬼夜行はすぐに終焉を迎えた。
というのも、鬼が潰えて、金花猫が裏切った敵軍に勝ち目はない。ボロボロになった玉藻前に妲己と金花猫はそれぞれの武器を突き付ける。
「あなたも妖怪ですから死にはせんのぅ。だから、封印、させてもらうでの」
「ぐっ……動けよ、俺の足……! こんな奴に、裏切り者に……!」
玉藻前はあがくこともできず、そのままお札に封印されたのだった。
封印された玉藻前を妲己は懐にしまう。玉藻前がまた外に出れば悪さをしてしまうということと、妲己以外が持つと危ないからというのもあるのだろうな。
「これにて戦争は我々の勝ちじゃ! 者ども、降伏せよ!」
妲己の号令
戦っていた敵側の妖怪たちも、まとめ上げていた玉藻前が封印されたということで、一気に戦意を失っていったのだった。
「魔界に帰るがよい! 私の目が光るうちは人間界に侵攻することは許さぬ!」
逃げ帰るように魔界に帰っていく妖怪たち。
そして、妖界からきた妖怪たちも、そのままぞろぞろと自分たちの世界へ戻っていくのだった。
「じゅんぺー。ここでお別れじゃな」
「帰るの?」
「ああ。私はやることがあるのでの。それに……じゅんぺーはもともとこちらの世界の住人なのじゃ。あちらの世界に長居はできぬ。妖怪からは元には戻れぬがな。人間界での種族と妖怪を使い分けることができるはずじゃ」
私は試しに変えてみると、キツネの耳と尻尾がなくなった。
どうやら本当に変えられるらしい。再び変えてみる。九本の尻尾が生えてきた。
「では、また遊びに来るがよい。今度こそ妖界をきちんと案内してやろうぞ!」
そういって、妲己様は戻っていったのだった。
ああ、なんかすごいもの見た。という感想しか出てこない。だがしかし……さっきの百鬼夜行でものすごく被害が出ている。
街の衛兵らしき人たちもぞろぞろと集まってきて何事だと騒ぎも起き始めた。ここから逃げるしかないかな。
「退散ッ!」
長居は無用。
私は騒動が起きた場所から離れた港にやってきた。港にはちょうど船が到着したらしく、汽笛を鳴らし、港に着工した。
「じゅんぺーさーん! やっときましたよー!」
「ここが東の国……。なんつーか、江戸いべ……」
「江戸いってなんだよ。江戸は動詞じゃないぞ」
あ、でも江戸いとエロイって語感同じだからエロイと言いたいときは江戸いって言えばいいのか? いや、ないな。
ミツキ、ウヅキの二人もやっと合流できた。
「あ、じゅんぺーさん。来て早々なんですけど、ちょっと船であるうわさを聞いたんですよ」
「噂?」
「NPCが言ってたんですけどね?」
ウヅキがNPCが話していた噂話を話し始めた。
ここ東の国のとある場所には莫大な黄金が眠っていると。莫大な黄金が眠る理想郷、黄金郷があると。
その黄金郷の名前はジパング。
ジパングといえばマルコポーロが書いた東方見聞録で、日本がジパングという表記であった。
日本には古来から埋蔵金伝説だのといううわさが絶えないが、それ関連だろうか。
「宝探し、しませんか?」
「いいね。いい企画持ってきたね」
「えへ。いや、噂を聞いたのはミツキですよ?」
「んなっ、ウヅキが見つけたことにすればいいべ……。あくまで噂だし……本気にしちゃがっかりすると思ってわたすは言いたくながったのに」
「まぁまぁ。こういううわさ話に踊らされるのも悪くないものだよ。それに、宝探しはロマンがあるじゃん」
『ウヅキちゃんわかってる』
『宝探しか。俺も同行しよう』
『便乗院』
『黄金か。俺も欲しいし探してやろ!』
視聴者も黄金が気になるようだ。
妖怪の次は黄金か。東の国は話題が絶えないな。




