百鬼夜行 ③
金花猫はあたふたしてた。
「金花猫! 耳を貸すんじゃない!」
と、玉藻前が説得しているが。
私は金花猫をずっと説得していた。あたふたしているのは完全にあちらに染まっていないから。そして、さっきの快感が気持ちよかったのかもしれないということ。
「ちっ、金花猫を早くこちらに戻さねば猫又のやつが……」
「油断している暇はなかろう?」
玉藻前に妲己が攻撃を仕掛けていた。
金花猫は顔を横に振り、どうかしてたと立ち上がる。
「わ、私を仲間に引き入れいようたってそうはいくか! だが、復活させてくれたことは感謝している!」
「ああ、そうかい!」
「すべては玉藻前様のために!」
といって、再び攻撃を仕掛けてきた。
金花猫は玉藻前に忠実なようだ。だがしかし、玉藻前は金花猫にそれほど期待していないとみている。玉藻前はなーんか、気に食わない性格をしているからそう思っちゃうんだよな。
金花猫は本気を出すといって、変身し始めた。
巨大な猫の姿になる。金色に輝く猫。そのデカい前足を私めがけて振り下ろしたのだった。私はかわすが、その前足は地面をえぐっていた。
「なんちゅうパワーだよ」
「復活させてくれたから殺しはしないのにゃ! 降伏しろ!」
「するものかよ」
私は双剣を構える。
「本気を出したか。ならばこちらも本気で戦わねば妲己とは決着がつかん」
「今まで本気ではなかったか。少し癪に障るのぉ」
と、玉藻前もキツネの姿に変化したのだった。
妲己も全力を出し始め、妲己の尻尾が三つに増えた。
『全員本気モードで草』
『なにこれ、大怪獣決戦?』
『一人人間サイズなんだよな……』
コメント欄もめっちゃ盛り上がってる。
私はとりあえず金花猫の頭によじ登った。そして、そのまま脳天に双剣を突き刺した。血がぶしゃあって出る出る。
「いたぁっ!」
「そりゃそうだぞ」
「ちょこざいなぁ!」
と、ぶんぶんと頭を大きく振る。
私は捕まり、なんとか振り落とされずに済んだのだった。だがしかし、この巨体は一発じゃ倒せないよな。
私はしょうがないので、忘却の炎を使うことにした。
今回は誰も食い止めてくれる人がいないので、逃げながら発動することにしようか。ただ、これを使うと片手が封じられるのが難点だ。
片手でいなせるわけもないから本当に逃げなきゃいけない。
「その前に降伏してくれるといいんだけど説得してみるか」
私は右腕に忘却の炎をため始めた。
「な、なんにゃその炎。何をするつもりにゃ」
「すべてを忘却の彼方に送るだけ。これが発動すればお前は炭も残らず焼かれてしまう」
「にゃ……!? そんな技やらせるか!」
「おっと、暴発したらお前のお仲間もろともやるかもしれない。攻撃しないほうが身のためだ」
いや、ダメージ受けたら発動はしないと思うが。
まぁ……知性ある獣にはこういう脅しももちろん通じる。相手はこの忘却の炎自体知らないのだから。
「私は世界を終わらせられる。降伏したほうがあんたのためになる」
「にゃにゃ……」
「お前が私たちの仲間になるのなら、これは収めよう。自分たちの仲間に手を出したくはないからね。金花猫、お前が世界を終わらせるか、仲間を守るか選ぶのだ」
「にゃ……」
『えげつなwww』
『完全に脅迫じゃん』
『世界を終わらせるか仲間になるかの二択』
さて、どうでるかな。
この忘却の炎は世界を終わらせる力はない。ものすごく魔力使うから連発も不可能。完全に出まかせなんだけどどうだろうか。
「玉藻前様、私はどうしたら……」
と、玉藻前に指示を仰ぐが金花猫のほうを見向きもしなかった。妲己の相手に忙しいというのもあるだろうが……。
「完全に切り捨てる流れじゃないか。返事しないのはそういうことだろう」
「にゃっ?! 玉藻前様!」
「静かにしていろ! 俺は忙しい! 仲間が多数やられるくらいならお前がその炎を受けろ!」
「にゃっ……」
忙しい時にこそ本性が出る。
切り捨てられた流れに、金花猫は涙を流していた。お前が受けろというのは完全に死ねと同義だった。
金花猫は玉藻前をにらむ。
「わかったにゃ……。あんたの仲間になるにゃ」
「よしよし」
「許さん! 私に死ねって言ったこと!」
と、金花猫は玉藻前に飛び掛かり、前足で叩き落した。
「なっ……! 金花猫、お前……!」
「私を切り捨てるからにゃ! この恨み……。忘れにゃい! 妲己様のほうにつくのにゃ!」
「くそ……。失敗だったか!」
「元仲間を失敗というあたり、性格悪いの。金花猫、手を貸すのじゃ」
「そのつもりにゃ!」
妲己は金花猫と力を合わせ始めたのだった。
「援軍、呼んできたのにゃ! って、ええ!? にゃんで金花猫と妲己様がきょーとーしてるの!?」




