変態は自己肯定感が高い
ブロー炭鉱。
今もなお炭鉱として役割があるのだが、魔物が出るようになり、あのメイカーの街では違う燃料に置き換えようという話も出てきているようだ。
ここも廃坑になるのは時間の問題ということ。魔物が出るという問題は見て見ぬふり。うーむ。実に私好みの街だ。
「ここに何を取りに来たの?」
「ここに石炭を取ってきてくれっていうクエストを受けまして! それで」
「なるほど。炭鉱夫になってくれってわけだね。よし」
私はつるはしを構える。
『なんか妙に様になってるよな』
『美人って割と何でも似合うのむかつく』
私はとりあえず身近な探索ポイントにつるはしを振り下ろす。
すると、激石炭というアイテムが手に入る。これが結構な数必要らしい。だがしかし。順調に掘り進められるというわけでもなさそうだった。
というのも、ウヅキは敵感知スキルを所持しており、敵が近づいてきたらわかるようになってるらしいんだが……。
「敵が……7体!?」
「多いな」
「わたすたちで相手すんだべか!? 無謀だべ……」
「無謀なのもゲームのだいご味でしょ。やるよ、ウヅキ、ミツキ」
「はい!」
「……わかったべ。ただでさえ前はびくついて役に立たなかったんだから今度はわたす勇気出すべ!」
と、敵がやってきた。
その敵はというと。
「うきゃあああああ!?」
「ぞ、ゾンビ……」
「ま、炭鉱だからな」
炭鉱は事故がつきもの。
ガス爆発事故だったり、注水による水没事故だったり。いろんな事故があり、たくさん人が死ぬ。産業革命の尊い犠牲となったといえば聞こえは少しよさげには聞こえるかもしれないが。
そして、もちろん死体を回収するなんてことはしないだろう。メイカーの街の人たちにとっては死体を回収するのは非効率的だから。
「うああああ……」
「ふぁ、ファイアー!」
「はやめなよミツキ」
「な、なんでだべ?」
「ここ、炭鉱。周りには何がある?」
「あっ……」
周りには燃えるものばかり。
それに、ガスが出ていたらガス爆発が起きかねない。こういうリアルなゲームならそういうことだってしてくるはず。
ガス爆発なんて起こしてみろ、私たちは一瞬で死ぬ。
「どど、どーするべ! わたすまだファイア魔法しか攻撃手段がねえ!」
「じゃあ、私とウヅキで片づけるしかない」
「ま、また私は役立たずだべ……」
「そんなことはないさ」
ウヅキは自分がいまだに役に立ってないということを考えているようだ。
たしかに敵感知して知らせているのも、今戦闘に参加できるのもウヅキだけ。はたから見れば役立たずかもしれない。
けど、それはあくまで他人が判断すること。使ってる人が判断すること。
「役立たずってのはいるだけで邪魔なもんだよ。ミツキは邪魔じゃないさ。自分を役立たずだなんて卑下するのはやめたほうがいい。もう少し自己肯定感を高く持ったほうが生きやすい」
『変態は自己肯定感めちゃくちゃ高いぞ』
『むしろマゾヒストの自分素敵! って思ってるぐらいだぞこの変態』
『なんで変態ってみんな自己肯定感高いんだろうな……』




