帰省 ①
父は脱サラして、祖父の農家を継いだという形だ。
とある県のとある田舎町に祖父の家があり、田園風景が広がる。
「今日はどんな風に殺されるか……」
憂鬱だ。
いくらマゾヒストの私といえど殺されるのはNG。さすがにまだ死にたくない。だけど……まぁ、殺意を私に抱く理由も理解しているからこそ、言いづらいというのもあるけれど。
だからといって殺していい理由にはならないけどな……。
「たでまー」
私はガラガラと扉を開け、中に入る。
父は居間で新聞を読んでいた。
「おう、来たか」
「うん。で、京は?」
「捕まった」
「……は?」
捕まった?
訳が分からず固まっていると、どうやら京は私を待ち伏せして包丁で殺そうと思っていたらしい。その光景というか、予行演習風景を見られて警察に連行、そして、今まで私を殺そうとしていたことを父に告げられて、それで殺人未遂で実刑が付き、執行猶予なしの懲役刑となるみたい。
一応精神病院に通いながらの懲役となるらしい。
「悪かったな。今まで放置していて」
「別にいいけど……。父さんも耐え難かった? 殺されそうになったことないじゃん」
「お前だって俺の子だからな。身内が殺されそうになってるのに黙ってみてられるのは限界だ。いくら可愛い娘といえど……」
「そう? ならいいけど……。おじさんたちは来ないの?」
「そろそろ来るんじゃないか」
私がそう話していると玄関のほうから車の音が聞こえてくる。
窓の外を見るとワゴン車が止まり、中から中学生と高校生の兄妹が下りてくる。兄のほうは前髪で顔を隠していて、妹はものすごくきらびやか。多分メイクしてるんだろうなー。とは思う。
メイクは悪いことではないが、周りは子供がメイクだなんて!っていうのも多いからな。
「あの……久しぶりです……」
「おじさーん! お久ー! あ、潤ねえもいんじゃん! やっほー!」
「やっほー」
従兄妹である和平 豊と稔。
豊はおとなしい性格で、堅実な性格をしている反面、妹は派手好きで、スリルが大好きな性格と真逆な性格の兄妹だ。
「で、京ねえは?」
「捕まった」
「だろうな……。また殺しそうになってたんだ……」
「納得ー。人殺しはダメだって前から言ってたのに……。潤ねえも災難だねー」
ほんとに。
まぁ、唯一の懸念点がなくなってよかったよ。警察が身柄を確保してるだろうし、脱獄してわざわざ殺しに来るなんて馬鹿なこともあいつはしないだろう。
あれ、まじで我が家唯一の爆弾だからな……。
「さて、俺はそろそろメロンを出荷しにいかねえと。昨日捕まったばかりで昨日の分出荷できてねえしな」
「ついてこっか?」
「おう。頼む。俺いま腰いてえんだ……」
父さんは腰をおさえながらそういった。
「なに、私たち留守番?」
「悪いけど頼む」
「ま、仕方ないわな。兄貴、腰大事にしろよ」
「お大事にしてください」
「心配かけて悪いな。いくぞ、潤」
「ん」
私はトラックの運転席に乗り込んだ。
父さん、真っ先に助手席に乗ったから私運転。
 




