処刑人
なんとかプレイヤー全員を倒した。
ドロップ率が低いので求めてるプレイヤーは相当多いだろう。
私はじゅんぺいから沁氷の宝石を受け取ろうとした時、私の目の前にメッセージのようなウインドウが表示されたのだった。
《隠し職業:処刑人 の取得条件を満たしました》
《職業を変更しますか?》
私はそのウインドウを見て思わず「ん?」という声を上げる。
え、そんな条件あるの?
私は条件の欄を見てみる。
処刑人の取得条件はカルマ値が高いプレイヤーを100人以上キルした場合にランダムで手に入るようだ。
カルマ値というのは隠されたステータスのようなもので、PKなどを繰り返すと溜まっていく。
ただ、カルマ値が高いデメリットが今のところほとんどなかった。カルマ値が高いプレイヤーがデスした場合、レベルが大幅に下がるという効果はあったがそこまでだった。
だが、隠された効果が今発見された。
「嘘でしょ……」
「どうかしたのか?」
「いや……うん」
『がっかりしてて草』
『見つけたじゃん。喜べよ』
『試合に勝って勝負に負けてて草』
えぇ……。
「なんか隠し職業になれるみたい……」
「お、おめでとうございます!……ます?」
「よ、喜んでいい、のでしょう、か? 沁氷の宝石が無駄になりそうですが……」
「おめでとう! 流石我がライバルだ!」
いやぁ。
うん。いいんだよ。いいんだけどさ。こう、隠し職業のフラグっぽいから頑張るぞ!って頑張ってたのにさ、違うフラグで解放しちゃってさ、なんかすげえがっかり……。
「処刑人になりまーーす……」
私は処刑人に職業を変更した。
処刑人は剣、双剣、弓が装備可能らしい。私が使用している武器は全部使用可能っぽい。それはよし。
そして、専用スキルというものがあり、専用スキルは、二つの効果があるようだ。まずは刃物系の攻撃力上昇。そして、急所ダメージの増加。これは常時発動スキル。スキル名は処刑の心得というらしい。
「処刑人ってなんか不満だ……。処刑人はいたぶるほうだろ。私は痛ぶられる方なのに」
「あ、あの、この宝石は?」
「あげるよ。もうその宝石に用はないし、フラグっぽいからやっただけで隠し職業が絶対手に入るってわけじゃないし……」
「あ、明らかにテンション落ちてますね……」
そりゃ落ちるでしょー。
「スキルに関しては純粋に私強化のスキルだね。急所を攻撃した際のダメージ増加、刃物系の武器の攻撃力増加。双剣と刀をメインに使ってるし相性いいや」
ここに来て私に対する純粋な強化は久しぶりだ。
というのも、私は防具スキルが存在しないので、スキルを手に入れるにはスキルガチャか種族スキル、職業スキルしかないわけだ。
で、スキル獲得は今の種族になって手に入れたのが最後なわけで。
「ま、処刑人もありっちゃありか……。がっかりしてないでテンション上げてかねーとな」
今日の配信でやることなくなっちゃったけど。
私は時間を確認してみる。もう夜の10時を過ぎていた。沁氷の宝石を手に入れる作業に思いっきり時間がかかったし、そろそろ私以外にも疲れが見えてきている。
「んじゃ、色々終わったし、疲れてるだろうから配信はここら辺にしておこうかな。沁氷の宝石に関してはじゅんぺいにあげるしそのクエスト達成が見たかったらじゅんぺいが配信かなんかであげると思うからそっちで確認よろ〜」
「あ、わ、わかりました! 明日やります!!」
「だそうだよん。今日は見にきてくれてありがとね〜。二人もありがとね〜」
「い、いえ! お役に立てたのなら!」
「我が白犬チャンネルもよろしく頼むぞ! 俺も明日は配信するからな! じゅんぺーと!」
「勝手にコラボ決めんな。明日は用事があるから無理だよ」
こいつはもう……。
明日は純粋に用事がある。というか、用事ができた。瀬野に頼まれごとをされたから。