治安悪い
まだ人数は心もとない気がするが、私たちはとりあえず沁氷の宝石を探してみることにした。
採掘エリアがあるのは主に山沿い。先ほどの洞窟には一切なかったが、このノスランドにはいたるところに採取ポイントがあるようだった。
雪を掘ると地面が見えて、採掘ポイントがあるようだ。
雪で隠れて見えないが、この土地はすべて宝石の鉱床ということ。
「はっはぁー! 掘って掘って掘りまくってやるぜ!」
「ほんとの低確率で採掘可能とか厳しい、です、ね」
「私の運じゃ厳しいかもしれないねぇ」
こういうドロップ率を上げるようなスキル、あるにはあるが……。それを持っているのがマドカ、なんだよな。
マドカたちは今どこにいるかわからないし、かつログアウト状態なので声をかけるのも無理だった。まぁ仕方ない。
「だが私は……世界一泥臭いのが似合う女! ピッケルを持ち地道な作業を得意とする女!」
「せめて私が掘ってじゅんぺーさんに渡したい……」
「お、恩を返さなきゃ……」
「うおおおおおおおおおお!!」
それぞれが自分を鼓舞し、採取していく。
気が付くと配信時間が3時間を超えていた。3時間、ずーっと作業をしてきて、その時はようやく訪れたのだった。
「あっ!」
「どうしたじゅんぺい」
「で、出ましたーーーーーー! 沁氷の宝石ーーーーー!」
「おっしゃああああああ!」
「ナイス! じゅんぺい!」
「で、出たんですね……」
じゅんぺいは沁氷の宝石を天に掲げる。
その宝石は氷のように透き通っており、とてもきれいだった。が、なんか不穏な気配がする。私は周りを見てみると、剣を持った男プレイヤー数人がこちらに向かっている。
どうみても話し合うようなものじゃなく、周りに魔物がいないにも関わらず剣を抜いている。
「じゅんぺい、今すぐその宝石をしまって逃げようか」
「えっ」
「あの人たち……絶対奪おうとしてます、よ、ね」
「戦う気満々だな! おもしれえじゃねえか!」
「なんで私にはこういう治安が悪いこともセットで訪れるんだろうか」
男はダッシュで距離を詰めてくる。
私は双剣を引き抜き、攻撃を受け止め急所に片方の剣を突き刺した。
「ったく、人が本気で喜んでるところに水を差すんじゃないっての」
「俺らが見つけようとしてたのに……よォ! 出ねえんなら奪うのみだぜ! これもゲームの醍醐味だろうが!」
「だとしてもそう簡単に奪わせないっての! キンシ! 来い!」
私はキンシを召喚する。
「キンシ、蹴散らすぞ」
「クルックー!」
キンシは戦闘態勢をとっていた。
「んだこのフクロウ! 弱そ」
と男一人は笑っているが、キンシは飛び上がり急降下して勢いをつける。そして、そのまま鋼鉄のように固い足の爪で突き刺した。
そのままもう一人をわしづかみにして、高く飛び上がり手を離す。
そして、キンシはそのまま体ごとその落ちていった男に突っ込んで地面に激突したのだった。
「さっすが古代種! アトラク=ナクアを思い出す強さだぜ!」
「クルックーーーー!」
「や、やべ……。人数が……」
「人数で押し切れば奪えると思ったか? 私はあいにくこういう複数人にも慣れてんだ。それに、キンシもいるし」
キンシはそのままプレイヤーを蹴散らしていく。
空島のボス級の魔物だ。そもそもの実力が違う。