増殖するG
私はカメラを飛ばす。
「はぁーい! じゅんぺーちゃんの配信タイムだよん!」
思い切り可愛い仕草をしてみた。
うむ、かわいい。
私は今日やることとかを説明していく。今日は新たなところに行こうと思う。この国から出て、北のほうに向かう。
北国。新たにそこが解放されていたから気になるし。
「で、今日はァ、一緒に映ってくれる相手がぁ、いるんですよぉ」
私がそういうと、ひょこっと顔を出してくるのはあのニセモノ。じゅんぺい。
じゅんぺいは恐る恐る近寄って、挨拶していた。
「あ、あの、お騒がせしましたじゅんぺい、です」
「いろいろ言いたいことあるっしょ? でももういいよ! うちら仲直りしたし! ずっ友だから!」
「ず、ずっともですぅ……」
私はじゅんぺいと肩を組み、顔を寄せる。
じゅんぺいの顔がなんだか赤い気がするがいいだろう。
『てぇてぇ』
『百合が咲きます』
『お前彼氏いるのに百合営業していいの?』
「百合って……。私はノーマルだけど」
そういう趣味は一切ございやせん。可愛い女の子と私を嬲ってくれる女の子は好きだけどね。
「じゃあ今日はギャルでいくし! 今日の目的地の北国ノスランドへレッツゴー!」
「ご、ゴー……」
私たちはノスランドを目指して歩き出しはしない。
キンシを召喚し、空を飛んでいくことにした。キンシは私の要望に応え、以前罪と罰にやったように足で鷲掴みにしてもらう。
なかなかいいこの雑に扱われる感じ……。
「いいね、この雑さ……。物みたいに扱われる感じさいっこう……」
「…………」
「最高だよねぇじゅんぺい!」
「そ、そうですね……! な、なんか興奮してきます……!」
『あれ、同類?』
『そこも似せなくていいんだよ?』
『類は友を呼ぶ』
『おいそっちにいくな! 後戻りできなくなるぞ!』
コメント欄もじゅんぺいがまさかのマゾヒスト仲間ということでものすごくにぎわっていた。
じゅんぺいは叫ばず、ただただ単に鷲掴みにされている感覚を楽しんでいる。かくいう私もきれいだとかそういう感想は述べるが、割と楽しんでいる。
この画がしばらく変わらないし、トークで場をつなぐしかないし。
「あれがこの大陸一の山、パンブ山!」
「でかっ! エベレストかよ!」
「エベレストより標高あるんじゃないか? もう北のほうだし、雪も見えてきたね」
この雪山を越えた先にくぼみがあり、そこに街があるらしい。
街に行くにはこの山の洞窟を通る以外に方法はほとんどないらしいが、封鎖されていた理由はその洞窟に凶悪な魔物が住み着いていたらしかった。
誰かが倒してくれたので、この街が解放されたということ。
「じゃ、私たちはまず正攻法でその街目指してみようか! キンシちゃん、ここで落として」
「クルックー」
ぱっと足を離し、どこかに飛んでいくキンシ。
「きゃああああああ!?」
「パラシュートなしスカイダイビングー! 着地方面ミスったら即死だぜ!」
「お、おう、おう……」
「回転も加えてやる!」
私は身を丸め、回転を加えた。ぐるぐると回転し、ちょっと気持ち悪くなってくる。
そして、地面すれすれで、私は足を地面に向けて華麗な着地を決めた。じゅんぺいは少し着地ミスって大ダメージを負ったが、なんとか生還できたようだ。
「よし! じゃ、洞窟へレッツゴー!」
「気持ちよかった……」
「超痛いもんね。わかるよ。私も配信してなかったら興奮して進めなかっただろうさ……」
『配信してる理性が働いてて草』
『自制なんてできたんだなこの変態……』
『じゅんぺいちゃんってもしかしてじゅんぺーと同じ重度の変態?』
『偽物はそこまで真似しなくちゃいけないの?』
というコメントが来た。
さすがにニセモノ扱いは少し嫌なのか、顔が少し曇る。私はフォローすることにした。
「ニセモノだからまねてるわけじゃなくて、私が染めたの……」
『草』
『オリジナルに侵食されるな』
『俺たちの純度の高いじゅんぺいを返せ』
『↑それじゃまるでじゅんぺーが純度悪いみたいじゃん』
『純度100%の変態だぞ』
『やめろ! 乗るなじゅんぺい! 戻れ!』
『今なら真人間に戻れる。今すぐその変態沼から足を引き上げて洗うんだ!』
ひどい言われよう。
そこまでひどいことしてません。私は。
G、じぃ、じゅん、じゅんぺーと変換してほしい