表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/229

謝って

 ゲームに戻ってきた。

 私は覚えたてのブレイクダンスを活かすために、刀から再び双剣に持ち変える。すると、偶然だったのだが、私とそっくりな人を見かけたのだった。

 カメラを回している。後姿のシルエットが私だ。


 あれは私のニセモノだな?

 

 私は運よく、ニセモノと出会うことができた。

 とりあえず、ヘアゴムというアイテムを使う。髪をまとめ上げ、髪型を変え、髪色も少し変えて他人のように装ってみた。

 あいつはPKするはずなんだ。動画を見る限り、新参の人たちを狩っている。だからこそ最初のログイン地点であるあそこ付近に待機しているんだろうな。


 私は初期装備のまま、そこを歩いてみることにした。


「ひひっ! 獲物はっけぇーん!」


 背後から声が聞こえる。

 私は双剣を手にして、振り返り、攻撃を受け止めた。


「なんなんですか!?」

「新規だなぁ? 新規は洗礼を受けとかないとねぇ! じゅんぺー流のやさしさだよぉ!」


 こいつ、じゅんぺーって言ったな。

 じゅんぺいじゃなくて、マジでじゅんぺーつってる。これもう私に対しては言い逃れできないし、じゅんぺーっていうことで私に罪を擦り付けるつも……。

 いやまて。あらゆる可能性を捨てるな。これはもしかしたら失敗して闇落ちした世界線の私だろうか……? んなわけあるかーい。


「じゅんぺーさんはそんなことしませんよ! 偽物ですね!」

「ニセモノじゃないよぉ! 私はじゅんぺーだよぉ!」

「んなわけないだろ」


 私は攻撃し、組み伏せる。

 ヘアゴムをほどき、髪色を元に戻してみた。髪色は片手間で変えれるシステムマジ最高。変装も容易だよ。

 首元に双剣を突きつける。


「じゅんぺー、ねぇ」

「じゅ、じゅじゅ、じゅんぺー……」

「やっぱ私を騙ってんじゃねえか。チャンネル名もじゅんぺいって紛らわしいようにしてすべて私のせいにしようとしてたな」

「い、いや、私はじゅんぺいだよ! あなたとは何の関係も関連性もございませーん!」

「嘘をつくなよ。さっき私がじゅんぺーさんはそんなことしない、偽物だって言ったらニセモノじゃない、じゅんぺーだよって言ってたじゃん」

「あれはじゅんぺいって言ったんでーす! じゅんぺいは私だから嘘じゃないでーす!」

「私はじゅんぺーって言ったんだ。それを否定したんだよ」


 言い逃れはさせないぞ。


「じゅんぺいって聞き間違えただけでーす!」

「私はちゃんとぺぇっていう発音をして聞き間違えることなんてあるもんかよ。そこまで舌足らずじゃないし、苦しい言い逃れはやめておきなよ」

「勝手に苦しいとか言い逃れとか言わないでくださいますぅ? 私が聞き間違えたんですぅ」

「そうか。それでもまぁいいよ。聞き間違えた間違えてないはどうでもいいんだ。うん。そこまで強情なら私も手段を選ばないかな」

「何言ってんの?」

「私は君と違って人気も金もあるんだ。金を使えば君の特定なんてたやすいし、君を調べ上げることも可能だね。うん」

「…………」


 個人情報特定は怖いよな。

 じゅんぺいっていうのは本名じゃないし、住んでる場所も名前も公開してないもんな。叩かれたりいたずらされるのはわかってるからな。ネットっていうのは怖いもんな。


「今の時代ってすごいよね。IPアドレスで個人を特定できる時代だもん。パソコンあることは動画編集して投稿してることからもわかるから君の家にはもちろんパソコンあるし、なんならインターネット環境ももちろんあるよねぇ」

「ごめんなさい……」

「うん、じゃ、私も炎上覚悟で君を特定しようかな! 特定したら何しようかなぁ。とりあえずピザ100枚いる?」

「ごめんなさい……」

「ごめんなさい? 君はじゅんぺいで、私の名前を使ってないんでしょ? どこも悪くないでしょ。謝る必要なんかまったくないもんね。ごめんなさいは私のセリフだよね」


 すでにじゅんぺいは泣きづらというか……あれ、なんか喜んでない?


「なんで笑ってるの?」

「なんで、だろ……。追い詰められてるのに……気持ちよく、なってきちゃ」

「……」


 私はじゅんぺいの手を取る。


「マゾヒスト仲間、だな!」

「ふぇ?」

「追い詰められて気持ちよくなる、追い込まれて気持ちよくなるのはマゾヒストだ。なんてことだ、私はマゾヒスト仲間を……」

「んえっ、えっ!?」

「許してあげよう! マゾヒスト仲間に悪いやつは……いると思うけどまぁ、マゾヒスト仲間ってことで許してあげよう」

「えっ、えっ」

「とりあえずニセモノだって認めてごめんなさいしてくれたらいいよ。うん」

「に、偽物でした。ごめんなさい……」

「よし!」


 私は拘束を解いた。


「い、いいん、です、か?」

「私の人気にあやかろうとするのはいいんだよ。別にね。ただ、炎上紛いなことしてるのが私としては嫌なだけだったんだ。今後は炎上紛いなことはしないと誓ってくれたら正式に君の動画に出てあげる」

「……っ! ありがとうございます!」

「今度一緒にSMクラブ行こうね」

「ぜ、ぜぜ、ぜひ!」

「とりあえず、今までの動画の削除はしておこうか。私にも飛び火はするからね。さすがにあれはダメ。もう魚拓はとられてるかもしれないから、一応謝罪動画も出そうか」

「はい、お姉さま!」


 じゅんぺいはさっそく全部消して謝罪動画撮ってきますといって、ログアウトしていった。いい子だ。うん。

 マゾヒスト仲間……。このご時世にマゾヒストなんてなかなかいないぜ……。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


黒猫は眠らない
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 扉を開いちゃったかぁ……(白目)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ