クリスマスだから
A賞の発表が終わった。
だがしかし、次は特大のメインがある。
「じゃ、最後に! 特賞! 実は特賞もありまぁす! A賞が10人って! そんなのレアじゃなくない? なくなくなくない!? だーかーらー? 特賞は1人! この、10万以上いる抽選会参加プレイヤーの中から、たった1人! 超レアアイテムってワケ! いやぁ、私も参加したかったぜ!」
特賞があるというと、ものすごく歓声が沸いた。
たった一人に与えられる特賞のアイテム。誰の手に渡るかはわからない。高値で売ろうとする転売ヤーもいるのかもしれない。
だが、そういう奴にもわたってしまうのがこの抽選の嫌なとこ。だがしかし、公平ではある。
「それじゃ、くじを始めたいんだけどー……。みんな、覚悟はできた? 1人しか当たらないんだ。誰が当たるかなんて私もわからないし? 当たった人は欲しかったらじゅんぺーちゃんと二人で映れるスクショタイムもあげちゃう! さぁさぁ、皆の者ー! 覚悟はいいかー!」
「「「「「「おーーーーー!!!!」」」」」
元気のいい声が会場に響き渡る。
配信もおーというコメントがどんどん流れてきた。
「泣いても笑ってもラスト! 幸運の女神は誰に微笑むかな!? 抽選、開始!」
私は抽選のボタンを押した。
画面にはたくさんの数字が映され、消えては映り消えては映りを繰り返す。ドラムロールはまだやまない。
ああ、そろそろ私の仕事も終わる。結構楽しかったぜこの抽選会。ハプニングは少しだけあったが予定通りに終われそうだ。
そして、ドラムロールが鳴りやんだ。
画面に表示された番号は。
「番号! 19837番! プレイヤーネーム、ゼノ! ……ゼノ!?」
ゼノも参加してたんですか?
ゼノはステージ上に転移してくる。ゼノはにやりと笑ってこちらに駆け寄ってきた。
「幸運の女神は僕に来たようだな」
「まさかの知り合い。なんで当たんだよ……。なんもいじくってないのに確率操作とか言われるじゃん」
「棄権できるのか?」
「聞いてみる」
運営に問い合わせてみると、合意の上なら可能だということだ。
「できるって」
「じゃあしてやろう。だが……。神は僕にチャンスをくれたようだ」
ゼノはくるっと観客のほうを向く。
「僕は! この賞品を棄権する! また、抽選を再開しよう!」
そういうと、会場はまじで!?と驚きの声が。
「そして、僕は宣言する! この注目されてる場を使わせてもらおうか!」
「なにするつもりだよ。悪だくみか何かか?」
「じゅんぺー。僕と付き合わないか?」
「……は?」
ゼノがそう切り出してきたのだった。
まさかの告白に、会場は一瞬静まり返ったが……。わっとまた再び湧き出した。ゼノが行った公開告白。クリスマスという日にちも相まって、ものすごいいい雰囲気だ。
その告白に、私は思わず固まってしまう。
「え、あ、つ、付き合うって買い物とかに? いやぁ、そうだよね。うん、きっと……」
「じゅんぺー。君には遠回しで伝えないほうがいいな。好きだ」
「……ふぁっ!?」
「返事はあとでいい。告白した、その事実だけでも僕は大満足さ」
ゼノは壇上を降りようとしていた。
くそ、ここで答えなきゃ白けてしまう。ゼノのやつ、場をわきまえないで……。だがしかし、不思議と悪い気はしていない。
好きだなんだのと伝えられるのは慣れてない。ファンや推しとしての好きならばたくさん受けてきた。が、それはあくまでLIKEだ。LOVEではない。
ゼノはLOVEのほうを示してきた。
悪い気はしていない。私も多分きっと心のどこかではゼノが好きだったのかもしれない。
「まてーい! ゼノ! まだ壇上を降りるのは早いぜ!」
「じゅんぺー……?」
「告白は返事を聞くまでがセットだ! 勝手に言うだけ言って終わりってのは自己中が過ぎる! 私の答えも聞くまでが告白だ!」
「……あぁ、聞こう。だが、じらされるのは心に悪いから端的に述べてくれ」
「わかった。じゃあ答えはYESだ。場に流されてとかじゃない。私も多分、ゼノのことがどっかで好きだったんだと思う」
「……そうか」
「こんなことで余計な仕事増やしてくれて! ま、ありがとう。ちょっとこの雰囲気をまた再び抽選ムードに戻すのは骨が折れるけど、ゼノもお詫びの準備をきちんとしておけよ?」
「ああ。なら、特賞が当たった人には僕の直筆サインと生原稿をプレゼントでどうだ? 売るもよし、保管するのもよしだ」
そういうと、会場はわっと再び湧き出した。
「おめでとーう!」
「お似合いだぜ!」
「ファンとして祝福しますうううううう!」
そういう声も聞こえてくる。
私はマイクを持ち、会場のみんなにまず謝ることにした。
「ごめんね。こんな告白につき合わせちゃって。祝福もありがとう。クリスマスだからね、私もゼノも浮かれてるのさ。ってなわけで、抽選再開! 特賞はゼノだったんだけど、ゼノは特賞を受け取らずに私を受け取った! 特賞はまだ当たるチャンスがあるぜ!」
「X Planの生原稿欲しい!」
「キャラリクエストしていいなら欲しい!」
「ゼノの漫画人気だな……」
私は再び、抽選ボタンを押したのだった。
クリスマス、めでたい。
恋仲になってもこの作品はまだ終わらないですよ。