A賞
クリスマス大抽選会は折り返しを迎えた。
「さてさて続いてはB賞! もらえる人数は100人! どんどんレアになっていくねぇ! なっちゃうねぇ!」
私は抽選ボタンを押した。
そして、画面に数字が映った途端、ハプニングが起きる。というのも、ステージに誰かが上がってきていたのだった。
ものすごい顔でにらみつけている男が、のっそりとステージ上に上がってきた。
「おい」
「なんでしょう? 勝手にステージに上がってこられるのは困るのですが」
「ふざけんな……! なんで俺がE賞なんだゴラァ!!」
と殴りかかってくる。
よくやるね。私は躱して一本背負い。このアカウントにステータスの概念はないけどこういうことはできるんだっての。
男はクソと叫びまくっていたが、運営によって強制ログアウトさせられていたのだった。
突如として起きたハプニングで会場は少し静かになったのだった。
「いやぁ、すいません! 言動から察するにE賞で私に恨みを覚えたんでしょう! 気を取り直していきましょうか! 私なら無事なので安心してくださいね!」
本当に些細なハプニングだし怖くもないのでいいのだが。
私は画面に注目させる。画面には100人の番号が映し出されており、会場でやったぁー!という大きな声や、一番前の席の人からはまだA賞があるといって落胆しないよう言い聞かせてる人もいる。
この抽選に関しては運ゲーなので仕方がないが。
すると、私の目の前に運営から文字のメッセージが届く。
『A賞、特賞は画面にも数字を表示しますが、じゅんぺーさんに番号を発表してほしいのです』
という指示。
「じゃ、続いてA賞! A賞はなんと10人! 狭き門だねぇー! 抽選するけど、A賞からは番号を一つずつ、私が発表していくよ! 泣いても笑ってもクリスマス大抽選会はあと少しで終わり! 当たらなかった人も、当たった人も恨みっこなし! こればかりは確率操作じゃなくて、本当に運ゲーだからねぇ。私を恨むのはお門違いってわけよ! じゅんぺーちゃんのサンタコス、見れるのもあと少し! 私のミニスカサンタ、目に焼き付けろ~~~!」
私はポージングを取って見せる。
少しちょっとペースが速いからこういうことをして少し時間を稼ごうか。意外にすんなり事が運んでいるので、時間が余りはじめてきちゃった。
「とまぁ、私を見せびらかして尺稼ぎはここらへんにしておこう! 運営と待ちわびてる人に怒られるからねっ。じゃ、抽選、開始!」
ボタンを押すと、私の目の前に番号が表示される。
「まず一人目は~? 番号50981番! プレイヤーネームは……言わないほうがいい? ごめんね。一応規則だから言うね。プレイヤーネームはぽぽんがぽん! A賞当選おめでとう!」
「うぎゃあああああ……!」
「A章からはステージに上がってもらって私が直接賞品を渡すこともできるんだ。当たった人の前にはステージに転移するボタンが表示されてると思う。ログインしてたら」
そう説明すると、しゅんっとステージに誰かが転移してきた。
ロング髪の女の子で、涙を流している。
「ぽぽんがぽんさん? おめでとう」
私の手元に賞品が転移してきて、私はその賞品を手渡した。
「あ、ああ……。お、推しから直接……! じゅ、じゅんぺーさん! ファンですっ! いつも動画見てますっ!」
「ありがとう。その言葉がいち動画投稿者としてものすごく嬉しく感じるよ」
「ひゃあああ……!」
握手を交わし、ぽぽんがぽんさんはステージから降りたのだった。
「じゃ、この調子で次いってみよー!」