勝てるビジョン、いまだなし
古代種キンシは空を飛ぶ。
私は防戦一方だった。遠距離攻撃を一つも持っていないから足以外狙いづらい……。ものすごく動き回るから本当に厄介だ。
マジでキツい。勝てないかもと思ったのは炎龍以来だ。
「どうにかして叩き落さないと……」
私は鋼水の糸を射出するが、躱される。
「配信外でこんなのと戦ってるのも最悪だし……。最近、いろいろついてないな」
そんな不幸もちょっとおいしい。
「ナイス攻撃じゃ! 一度叩き落すぞい! 覚悟するのじゃ!」
「叩き落す?」
「いい方向に躱してくれたのぅ!」
ヴァンピィがそういって、キンシをがしっとつかむと思い切りこちらに投げつけてきた。そういえば空飛べるんだお前……。
私の近くに落ちてきたキンシはちょっとつらそうな声を出している。私はとりあえず双剣で切りつけると、キンシは立ち上がり、再び空を飛び始める。
「不利な地上に長くいるはずもないのぅ」
「だけど一撃はまず加えられた!」
加えられただけでも大きな進歩だ。
私は双剣を構えなおす。すると、キンシはこちらをぎろりとにらみつけてきてるような気がする。そして、キンシは勢いよく降下してきた。
私はその攻撃をかわすのだが。
「もっと遠くに逃げるのじゃ!」
「へ?」
突然、私の視界が暗転し始める。
意識を保つのがつらい……。な、なんかの状態異常か? こいつ状態異常も使ってくるの? まじで強いんですけど?
ああ、これだめ。動けない……。
「仕方ないのぅ……!」
意識がはっきりしてくると、私はヴァンピィに抱えられていた。
「目が覚めたか。キンシは眠らせてくるのじゃ。あの羽根には眠らせてくる粉がたくさん付着していての。ばらまいてくることもあるのじゃ」
「相当厄介……」
空を素早く飛び回るっていうだけでも厄介なのに。
私は地上におろしてもらう。ヴァンピィはどうやら眠っている私を抱えて逃げ回ってくれていたようだった。
死ななくてよかった。ヴァンピィちゃんありがとう。
だがしかし……。どう対処したものか。ここまで倒すビジョンが見えないっていうのは相当やばいぞ。
「奥の手出すか」
私は苦悶の巣を使うことにした。
だが、相手が飛んでいるときに使っても意味がない。見えたら近寄ってこないだろう。チャンスは攻撃しようと降りてくるとき。
羽根も飛ばしてくる分、そういうことはあまりしなさそうだが。
だがしかし、それは相手が飛び回る敵がいないときにしかしてこないだろう。
「ヴァンピィ、私奥の手出すからあいつを地上に誘導できる?」
「さっきのように叩き落すことならできなくもないが……。空中戦は残念ながらあっちのほうが格上じゃ。さっきはおぬしの攻撃をかわした隙をついたものじゃからのぅ」
「隙を作ってみる。できる?」
「ほん。それなら簡単じゃ。吾輩に任せたもう!」
よし、作戦は整った。




