ジャンキー
ムッタローと私はなぜか魔物を見ていた。
「魔物も現実世界の動物と同様、様々な生態を持っています」
と、ムッタローの解説を聞きながら。
なんでこんな変態と一緒になってみているんだろうと思いながらも見ていると、ムッタローが奥に誰かいることに気づいた。
ムッタローは誰でしょうかと呟いた途端、魔物はその女の手によって殺される。
「なぁ!? せっかくの観察対象が!」
「躊躇ねえー……」
ムッタローは頭を抱えていた。
女性は満足いかないようで、私と同じ双剣を手にし、キョロキョロとあたりを見渡している。すると、私と目が合ってしまった。
「ひゃはっ! 獲物はっけぇーん!」
「獲物?」
と、その女性はいきなり攻撃を仕掛けてきた。
私は双剣で軽く受け止める。
「同じ双剣使い! いいねぇ! 実にいいよ! 今の受け止めるなんて結構強そうだぁ!」
「な、なんだよあんた……!」
「私? 私はうぃっち! 自己紹介はいいから戦ろう! 強いんでしょ? 雰囲気からわかるよ!」
「なぜいきなり……」
「有無を言わせないよん!」
うぃっちはそのまま双剣でひたすら切り付けてくる。
その猛攻に私は防ぐほかなかった。結構手練れのプレイヤーだ。今の時期だと古参プレイヤーもそれなりのレベルにはなっているので、防御力が皆無な私は一太刀受けることすらできないだろう。
だからこそ受け止めるしかないんだが。
「PKかよ!」
「失敬な! あんな失礼な奴らとは違うもんに!」
「じゃあなんだよあんた!」
「ただ戦うのが好きなバトルマニアってだけだよ!!」
バトルジャンキーかよ!
すると、うぃっちの猛攻がぴたりとやみ、すやぁと眠ったのだった。後ろを見ると、ムッタローが催眠魔法をかけたということで、眠ってもらったらしい。
私は今のうちにぐるぐる巻きにしてしばりつけておく。
うぃっち。結構な手練れだったが……。ランキング順位は……と確認してみると。
「い、いち、い?」
私の順位がいつの間にか抜かれてる。
っていうのはよくて、一位のやつかよこいつ。どうりで手慣れてるわけだ。そりゃ強いわ。
しばらくして、睡眠状態が解けたのか、はっと目を覚ますうぃっち。
うぃっちはおとなしくしているようだった。負けたのだと悟ったのだろうか?
「随分と大人しいですねぇ」
「負けて駄々こねるほどおこちゃまじゃないもん。それで? ぼくちんを捕らえた意味は?」
「いや……暴れられたらいやなのと、なんで私を襲ったのか」
「君が強そうだから! ぼくちんは戦いたいの! 強いやつと! でもさ、弱いやつと戦ったって詰まんないし! だから強いやつを探してたら強そうなやつを見つけたから! 戦ったの! 君強いねぇ! 名前は!」
「じゅんぺー」
「二位の人! 強いわけだねえ!」
そこですぐ私の順位出てくるあたり相当戦いたかったようだが……。
「偶然ランキング上位の人と出会えるなんて運がいいよ! ねね、もっかい戦ろ?」
「嫌だよ……」
どんだけ戦いたいんだ。
「君ほどの強い人はそうそういないんだ! 私の興奮が冷めぬ前に!」
「……随分と変態だな、こいつ」
と、ムッタローがそう呟いていた。
「それお前が言うか?」




