変態と変態
ミツキが病気で倒れてしまったこともあり、今後の配信を少し考えなければなー。
なんて考えつつ、ギルドにきた依頼を私も少し消化していると。
「ああ……素晴らしい……」
と、物陰で魔物を見ている変な人を見かけた。
私もその男を見て思わず隠れてしまう。なんかすっげえ変態そう。私にはわかるんだ。きっとあの男は変態だって。
その変態は「むふふーん」と変な声を漏らした後、どこかに消えた。
「僕の様子が気になりますか?」
「うひゃあ!?」
なぜか背後にいた。
私は思わず飛びのき、木にぶつかる。
「失敬。驚かせるつもりはなかったのですが……」
「後ろから声をかけられたら驚くでしょ!」
「申し訳ありません。ですが僕を覗き見ていたあなたも同罪だと誠に勝手ながら述べさせていただきます」
そりゃそうだけど。
「あなた、美人さんですね。だけどどこか僕と同じ匂いがする」
「へ? は? ど、どこが!?」
「美人さんに初見で言うのは何ですが……。あなたも相当な変態と見ました」
「…………」
「否定しませんね? なるほど。同類ですか。ベクトルは違えど同じ変態ですか」
と、立派な髭をさすりながら感心していた。
自分を変態と受け入れている変態だ。相当強い。
「初めまして。僕はムッタローと申します。趣味は動物鑑賞。動物の生態を見ると興奮して勃起します」
「それ初めての女性に紹介する内容じゃないよね? セクハラじゃん!」
「失敬。先ほどの興奮がまだ冷めやらぬもので」
すっげえ変態……。
魔物を見ていた理由もそのためか! くそ、なんか本当に変態のにおいは感じていたがここまで変態だとは思わなかったぜ!
ムッタローは同類に会えた喜びをかみしめているようだ。
「わ、私はじゅんぺー……。よろしく」
「よろしく頼みますよ。我々変態は自分自身の性癖のせいで世の中から淘汰され、誰もかれもが自分の趣味嗜好をひた隠さないとならないですからね。自分は変態だけれど変態だと言い張る人はあまり見かけない息の詰まる世の中。こうして変態と豪語できるのも一つの強みでしょう。あなたの変態性はなんですか?」
「重度のマゾヒスト?」
「なるほど。それはたしかに……」
納得しないでもらいたい。
こいつと同類か……とは思うけど、否定できないので辛い。こういう奴と同類視されるんなら変態じゃないほうがよかったまであるのだが。
「ふふ、ここで会ったのも何かの縁ですからね。一緒に観察でもしませんか?」
「魔物を? 面白いのそれ」
「面白いですよ! このゲームは生物の作りこみがすごい! 魔物だってきちんと生活しているのですよ! 特に獣系の魔物は! 獲物を狩って! 寝て! 盛んになったりして! 現実と何の変りもないんです! ああ、素晴らしい……。ここまで現実と遜色ない出来……。技術の進歩しゅごーーーーーーーーーーーーーい!」
ものすごく興奮しているようだった。
もしかしたらこいつ、私以上の変態かもしれない。上には上がいるな。よかった。