討伐証明
そのモンスターのところまで走って向かってみる。
魔素リンが湧き出ている泉。そして、その近辺には何もいないように思える。が、まだ魔物は討伐されていないということなので慎重に進んでいく。
その魔素リンが湧き出る泉に近づいたとき、目の前に現れたのは砂でできた大型の人のようなもの。
「砂男か」
よくゲームでもいるサンドマンだ。
私は双剣を構える。サンドマンは私を敵だと認識しているのか、砂を飛ばしてくる。ちっちっち。そんなぬるい砂で喜ぶほど私のマゾヒスト力は弱くないぜ。
「もっとあちあちの砂用意することだなァ!」
私は鋼水の糸を射出。
この糸は水分を多く含んでいるので、サンドマンの体を固めることができる。砂は水に弱いというのは常識だろう。
だがしかし、ここで火を放ってはならない。
というのも、魔素リンっていわゆる化石燃料のようなものだろう。ガソリン近くでは火気厳禁ってのは常識だ。
私は糸を引っ張る。そして、思い切りたたきつけ地面に埋める。
「もいっぱぁーーーーつ!」
今度は自分のほうに引き寄せ、双剣で切り裂いた。
サンドマン討伐完了。サンドマンの素材である砂男の砂が手に入った。これを討伐証明として王城にもっていけばいいだろう。
魔素リンを採取したいが、王様に渡した後でまたくればいいかな。
私は再び戻り、王城に入れさせてもらおうとすると。
きゃっとまた見知った声が聞こえてくる。
「……リュトワール」
「じゅんぺーちゃん! 今度こそ……」
「今度はさすがにダメだっての……。悪いけど」
私は鋼水の糸を射出し、リュトワールを捕獲する。
なんでこんな正門から堂々と出ようとしてばれてないんだ。兵士の格好をしているからってばれないわけないだろ。
ったく、事情を知っちゃったから手助けできないんだっての……。
「裏切ったのねーーーー! 裏切り者! 放しなさい!」
「いや……事情を知っちゃったし無理だよ」
「くそ、伏兵が……。だれかーーーーー!」
「いや、この状況でお前さんに味方なんて誰もしないでしょ……」
このお姫様はやんちゃがすぎる。
お姫様が騒いでいると、モノクルをかけた男の人がかつかつと歩いてきていた。その男の人は私にぺこりと挨拶をすると、後ろにいる姫様に驚いていた。
「なぜリュトワール様がぐるぐる巻きに!?」
「あー、脱走しようとしてたから」
「またですか……。って、あなたのその手の紋章……!? え、いや、え?」
「あ、これっすか」
「それは入れ墨というわけじゃないでしょう!? なんと炎龍様の……!?」
「やっぱこの大陸の神様みたいな存在だもんな」
「失礼。自己紹介がまだでしたね。私はグラビエナ砂漠国の大臣を務めております、ガデール・フランケルと申します。炎龍様の血族とは知らず、捕らえるような真似をしてしまい、申し訳ございませんでした」
「あー、いや、加担した私のほうが悪いし……」
「本日は何の用でこの城に来たのかだけお伺いしてもよろしいでしょうか」
「あ、捕らえたことに文句を言いに来たと思ってる?」
「そ、そのようなことは……」
思ってるんだな。
「そうじゃなくて、魔素リン近くに現れた敵を倒したからその討伐証明しに来ただけなんだけど……」
「そ、そうでございましたか。私が王に渡しておきましょう。討伐していただけたお礼に謝礼でも……」
「お金はいいから魔素リンをちょっと多めにほしいな。ちょっと必要なんだ」
「わかりました。ただいま採取させ、持ってまいりますのでしばらくお待ちを!」
大臣は応接の間に案内してくれた。
そして、大臣は王様を連れてくる。王様には大臣から説明が言ったのか、炎龍の血族ということに驚き、今度は恭しく接してくる。
こういうのやだなー。こういう恭しくされるのは嫌だ。もっと蔑んでほしい。