悪いことしたならごめんなさい
王様と私二人だけの部屋。
王は椅子に座り、私も椅子に座らされていた。
「気づいてしまったか、娘の異能に」
「ってことはあれやっぱ普通じゃないんですね」
「ああ」
王様はそう答えてくれた。
「まず最初に聞いておく。おぬしは神の旅人のようなものであろう? 殺してもどこかで復活すると聞く」
「あー、そうっすね」
プレイヤーは神の旅人っていうような扱いになっているのか。
ま、死んで行きかえるのなんて普通はおかしいしな。
「だから処することもできなければ、聞かないで帰るというのもしないのであろう?」
「もちろん。気になることの答えは知っておきたいですから」
謎を謎のままにしておきたくない。
この点においては私とヒステリアは似た者同士といえるだろう。
「答えを単刀直入にいっておこう。娘は魔王の器なのだ」
「魔王……」
「はるか昔、魔物を統率し、人間界を滅ぼそうとした魔王がいた。その魔王もまた人間だった」
「……その魔王の転生体というわけですか?」
「違う。転生してきたわけではない。力だけが継承されているだけにすぎぬ。人間は転生などできん」
王様曰く、はるか昔の魔王の血が流れているのがこの国の王族であり、この国の王族はみな魔物から襲われづらいという。だがしかし、その魔王の血が一番濃いのがあの王女様であり、王女様は襲われづらいというレベルではなく、魔物から襲われず従えることができるのだという。
王女様があんな箱入り娘なのも、魔物に近づけさせないようにするためだったのだ。その抑圧が、王女様を刺激していろんなところを冒険したいという冒険欲につながったんだろうな。
「このことはどうか秘密にしておいてくれ。悪用する輩がでないとも限らん」
「わかってますよ。すっげえ爆弾抱えてますね」
「あの子の気分次第で魔物を呼び寄せ統率し、世界を亡ぼせると考えるとぞっとする」
「本来は気づかぬうちに処刑するのがよかったんでしょうが……」
実の娘であるからな。
親の心としては殺しづらいだろう。それに、殺すチャンスは一度きりしかないはずだ。親に絶望してしまったら魔物を無意識のうちに呼び寄せ、王都が危ない。
「娘には魔王の力を悟られずに、生きてもらいたいのだ。あの力は危険すぎる」
「……ほんっとに聞いちゃいけない話ですねこれは」
「ああ。だから二人きりにしたのだ」
連れ出したのは悪いことしたな。
これを知っていれば連れ出したりはしなかった。あんな危険な子だとは思ってもいなかったしな。
「……王女様は多分、どこかから逃げ出せる穴を作ってるはずなんで、それを探したほうが良いかと」
「だろうな。今は兵士たち総出でリュトワールの逃走用の隙間を探させている」
「それと、申し訳ありませんでした。知らなかったとはいえ、連れ出すような真似。私の行いは本当に悪いことでしたね」
「ああ、ひやりとした」
だろうな……。
「私はそろそろ行きます。それと、お詫びといえばなんですが、魔素リンの採取場所の魔物、私が倒してきます」
「……良いのか?」
「もともと魔素リンが欲しくてこの国に来たので。では」
「待つがよい。採取場所はわかるか?」
わからない。
「この地図を持っていくがよい。場所を記してある。討伐したら素材の一つを持ってくるがよい」
「わかりました」
私は地図を受け取り、走って向かうことにした。