切り込み隊長
ミツキのことは仕方ないと割り切るしかないだろう。
入院代もろともは私のほうに請求するように言っておいたし、親御さんもいつか返すとは言ってくれたが、返してもらわなくてもいい。
まぁ……。半年入院しなくちゃいけないミツキが一番可哀想だが。
私は家に戻り、ゲームをすることにした。
ミツキはしばらくゲームできない。半年とは言わないけど、1週間は控えておいたほうがいいだろうということで、ミツキ、ウヅキコンビは1週間は配信に出ないように伝えておいた。
さすがにミツキができない今、憔悴しきっているウヅキもできないだろうしな。親友が倒れているところを見てしまったわけだし。
私はヘッドギアをかぶり、ゲームにログインする。
「……どこだここ」
私も急にログアウトして、安全エリアでログインしたわけじゃないから魔物にやられてもおかしくないのだが……。
なんか牢屋にいる。隣にはまだログインしてないであろうワサビとカラシ、そしてログインしているコガラシ。
コガラシは私がログインしたことに気づくと、現状を教えてくれた。
「いやぁ、この王都の兵士たちが追い付いてきまして! 王女様を誘拐したってことで捕まったんす! 申し訳ない!」
「ほえー。で、私がこんな興奮するシチュである縛られてる理由は?」
「今回の主犯でかなり実力がある人だから、だそうっす!」
それだけでこんなぐるぐる縛られるものなのか。
誘拐して得したな。もっと意見を言うならもう少しきつくても……。というか、吊るしていてもよかったんだぞ。
見世物にされているという屈辱感と、動けない絶望。それがもう少しあってもいいかな?
吊るしてないあたり詰めが甘い。もうちょっとサディスティックになろうぜ王様。
「王女様が自分が一緒に連れだしたって言ってるそうっすけど信用してもらってないみたいっす」
「ほえー」
「噂をしたらきたっすよ」
と、足音が聞こえてきた。
牢屋の奥には王女と、ひげを生やしたこわもての男性が立っている。
「ごめんネ、じゅんぺー。兵士たちには私が連れ出したって言ってるのよ」
「いいのいいの。それよりその隣の人は?」
「私のお父様よ!」
「ってことは王様?」
「そう! ほら! お父様笑って笑って! こわもてだから怖がられるのよ!」
「むぅ……」
王様は偉く物静かなようだ。
王女様とは違って。
「問おう。そなたが娘を連れだした主犯か」
「……そうだけど。そもそも娘さんが冒険したいっていうから私はあと押ししただけなんだけどね?」
「あの映像の意味はなんだ」
「王様の脳を焼きたくて」
「……むぅ」
NTRって基本的に脳を焼いちゃうし……。
「仕方あるまい。娘本人が自ら連れ出したというのだ。諸々調べなくてはいけないが、ひとまず釈放しよう。次はない」
と、王が兵士に命令して牢屋を開けさせた。
兵士は私の縄を解いてくる。私はそのまま解放されるが、まだ私は王様と話が終わっていない。王様に聞きたいことがある。
「まだ私は解放されない。私は王様にちょっと聞きたいことがある」
「なんだ」
「王女様はちょっと席を外してほしい」
「王女の前で話せないことか?」
「はい」
私がそういうと、兵士たちに王女様を連れていけと命令して、王女様はしぶしぶ退室していったのだった。
牢獄の中には私とコガラシ、ログインしていない二人、そして王様と護衛の兵士しかいなくなる。
私は本題を切り込むことにした。
「王女様……。あれはなんだ。魔物に懐かれやすいっていうけど、あれは懐くというより忠誠を誓っているようだった。あの王女様は何者だ?」
「……護衛の兵よ、席をはずせ! 私とこの者だけにせよ!」
「は、は?」
「いや、私が連れて行こう! 来るがよい!」
というので、私は王様に手を引っ張られて別室へと連れていかれた。
王様は兵士についてくるなと命令して。