ミツキの異変 ①
二人が突然消えた。
多分強制ログアウト機能が発動したのだろう。強制ログアウトが起きる要因は二つ。一つはヘッドギアの損傷。ヘッドギアが壊れているから機能しなくなるということ。
そして、もう一つは。人体に何らかの異変が起きていること。触れられたりしてログアウトするならまだいいのだが……。
「さすがに考えすぎか? いや……」
私は王女様にちょっとだけ時間をくれといっておく。
女子高生三人に少しだけ場を任せて、私はログアウトすることにした。考えすぎならいいのだが、強制ログアウトしたとなると少し心配ともなる。
私はウヅキに電話をかけると、ウヅキはすぐに電話に出た。
『あ、じゅんぺーさん、ログアウトしちゃいましたよね!? ごめんなさい……。父さんに水をかけられちゃって……』
「壊れた?」
『はい……』
ウヅキは父にヘッドギアに水をぶっかけられて壊れてしまったようだ。
ならよかった。あとでヘッドギアを買って送るよとだけ伝えておく。一応、雇い主だし備品扱いにしても文句はないだろう。
私は一度電話を切り、ミツキのほうに連絡をするのだが。
「……出ないな」
何回、コールを鳴らしても出ない。
あんな律儀なミツキが電話に出ないなんてよほどのことがあったのか、出ることができない状況に今はいるのか。
安全確認だけはしておきたい。仕方がないか。私はウヅキに再び電話をする。
「ウヅキ、ちょっとミツキの様子見に行ってくれない?」
『いいですけどなんで?』
「ミツキも強制ログアウトした」
『ほえー。壊れたんですかね?』
「いや……。さっき電話に出なかったから違うと思う」
またログインしなおしたのだろうか。
いや、それはない。強制ログアウトになったら少なくとも1時間はログインできなくなる。ミツキが何度も繰り返そうとは思わないはず。
私に連絡を入れてくるはずなのだ。あの子は律儀だから。
ウヅキが走ってミツキの家に向かう音が聞こえる。
そして、ミツキの様子を聞く。
『なんかヘッドギアしたまま寝てますけど』
「強制ログアウトになったから1時間はログインできないはず……。体触ってみて」
『はい』
ウヅキは体を揺らす。
『反応ありません……』
「……親御さんに今すぐ救急車を呼ばせて! ヘッドギアは外していい! 今多分意識ない!」
『ええ!?』
「1時間はログインできないからゲームの中にいるわけがないんだよ! それに、体を揺さぶってログアウトしなかったらそれはもう意識がないってこと!」
『はわわ……! ミツキのおかーさーん!!』
と、携帯を放り投げ、階段を降りていったようだ。
階段を駆け上がってくる音が聞こえる。必死に声をかけているが、ミツキが起きる様子がない。救急車と母親が叫び、救急車を呼んでいた。
『じゅんぺーさん……。どーしよう! ミツキが……』
「落ち着け! とりあえず……。私も今岐阜に向かうから。病院だけあとでメールして送って」
私は電話を切る。
すぐに家を出て、電車に乗り込んだのだった。