砂鮫の群れ
グラビエナ砂漠国に行くために、私たちは砂漠を歩いていた。
大人の女性一人と女子高生五人。なんていうか、少し奇妙なメンバーだ。
「へぇ。岐阜県なんすね! 意外と遠いんだ!」
「そう! 私も東京に住みたいなぁー」
「東京もそこまでよくないと思うけれど。物価高いし、アウェイなところいったらアウェイな感じばっかりで居心地そこまでよくないし」
「うへぇ……。都会は怖いべ……」
「この私でも東京に住めてるんすから! 大丈夫っす!」
「いや、東京に住むのは親がそれなりに稼いでいるからだろ……」
あの焼肉屋の娘だ。
あの時はお通夜ムードで誰もいなかったとはいえ、東京でもそれなりの土地に店を構えている時点で割と稼いでいるほうだろう。
実際、肉とかはマジでうまかったし。リピートしたいくらいにはとてもおいしかった。漫画家のゼノも通っているような口ぶりだったし味は本物だ。
「それにしても! 本当に国なんてあるの!? めちゃ歩いてんじゃん!」
「本来は乗り物に乗ってくるんじゃないのかしら。歩きで向かってるからこんな歩いてるだけで……」
「だろうねぇ」
私の移動は基本的に歩きだし。
行ったことのない場所は配信してる時なら乗り物を使うけどしてなかったら歩きで向かう。そっちのほうが楽しめるし。
「ま、魔物くるべ!」
「お、やっぱここも魔物出るか」
ミツキが魔物感知したらしく、魔物が来るということを告げてきた。
私たちは武器を構えると、砂の中から魚のような、サメのようなやつが出てきた。ウヅキは鑑定すると、砂鮫という魔物らしく、Bランクの魔物なのだとか。
私は攻撃しようとすると、璃子ちゃん……。もといコガラシが私に任せてくださいっすというので任せてみる。
「おおおお! 砂鮫! これでも食らってみるっす! 空手コガラシ流! フルパワー回し蹴り!」
鮫の首元あたりに思い切り回転しながら回し蹴りを与えていた。
鮫は勢いよく地面に激突。砂埃が舞う。
「そしてぇ! コガラシ流! 正拳突き!」
コガラシが魔物めがけて落ちて、正拳突きを食らわせていた。
魔物は倒れ、素材等をドロップ。
「つよーい! さっすがぁ!」
「ふっ。伊達に空手、やってないっす!」
「またくるべ!」
と、ミツキがまた感知したらしい。
また砂鮫のようで、今度は複数体。砂鮫の群れの中に私たちはいるらしく、先ほどの砂鮫が倒されたことを知って寄ってきたのだろうか。
全員武器を構えるが、今度は。
「君たちは見てなよ。女子高生が頑張ってくれたんだ。今度は大人の私が頑張る番だねぃ」
私が全部引き受けよう。
私は一人で砂鮫の群れに突っ込んでいく。
そして、急所を的確に切り付けていった。鋼水の糸なども使用し、飛び上がったところを叩き落しては攻撃を加えていく。
不惜身命も使っているため火力面に関しては申し分ない。攻撃さえ当たらなければ死ぬことはない。
数分後には砂鮫の群れが壊滅していた。
「すごいっす! あれだけの数を一人で……」
「じゅんぺーさん、すごいですね……」
「すっごぉーい!」
女子高生三人にすごいといわれると照れる。
そう思っているとラクダに乗った男の人が近づいてきた。NPCのようだ。
「君たち! 砂鮫の群れを倒してくれてありがとう!」
「あ、はい。えっと、どなたで?」
「ああ、私は行商隊のプリッツというんだ。君たちはなんでこの砂漠に?」
「えっと、グラビエナ砂漠国にいこうとしていまして」
「おお、僕たちもちょうどそこに行くんだ! お礼と行っちゃなんだが、乗っていくかい? あそこに僕の仲間が待機してるんだ」
「いいんですか!? ありがと……」
「ちょっとカラシ。こういうのって怪しさ満点でしょ」
「いいじゃん! 乗せてってもらえるんならさ!」
「でもこの前誘拐されたばかりじゃない……」
ワサビは誰かに連れて行ってもらうことに反対のようだ。
誘拐されたこともあり、誰かについていくこと自体に不信感が少しあるのかもしれない。
「じゅんぺーさん。どうするだ?」
「うーん。乗せてもらおうか。なにかあっても守れるから」
「そうっすね! 自分も皆を守るっす!」
「わーい!」
「じゃあ、すまないけど僕の仲間の元まで歩けるかい? すぐそこだから」
というので、私たちはそのラクダの人についていった。