ならばかけっこだ!
ゴールしたいというだけならもうすでに簡単だろう。
もうすでにゴールを目指して走らなくちゃならない。妨害している時間はもうないはずだ……。だからこそ、ラストスパートでどれだけいけるか。
あと勝負の決着がつくまで一日。いや、一日を切った。
今は23の街付近だ。
「もうゴールしている奴はいるだろうな!」
「結局私たちバギーに乗ったじゃん! バイクでいくつもりだったのに! うまくいかねー!」
「はっはっは。それも人生だろう。飛ばしていくぜ! 捕まってろよ!」
オヤカタが乱暴な運転で荒野を突き進む。
周りには急いでゴールを目指しているプレイヤーが多数。このぎりぎりまでポイントを集めていたのだろう。
このレース、ただ一番についても勝てる見込みはないから。誰よりも集めて、いち早くゴールする必要がある。
だれが先陣を切るかによるのだ。
誰かがゴールを目指す、もしくは制限時間内ギリギリまで採取してあとは驀進……。
最後までだれが勝つかは運営以外分からない。それもこのレースの醍醐味だ。まぁ、私たちが勝てる可能性はほとんどないが……。
「このイベントも、思い出作りにはなるでしょ!」
「そうだね……。だいぶくたびれたけど」
ゼノはバギーに捕まりながらぼやいていた。
「じゅんぺー。このイベントが終わったら打ち上げ行かないか? いい焼き肉屋を知っているんだ」
「お、いこういこう! 二人は?」
「じゅんぺーさんって東京住みですよねー……。私たち大分なんです……」
「九州……。そりゃ遠いわ。無理だな」
「新幹線使えば何とか!」
「わざわざ新幹線使うほどの打ち上げでもないよ……」
それじゃ仕方ないか。
焼肉屋は私たち二人で行くことになりそうだ。
「っと、最後の街が見えてきたぜ! 燃料はさっきの街でマックスまで入れた! まだまだ燃料はたくさんあるから突っ切るぜ! すぐに見えなくなるぞ!」
「巨人討伐さえしてなければもっとゆったりいけたんだけどね……」
見て回る暇もない。
町中に入り、結構なスピードを出しぶっ飛ばす。
あっという間に街を出て、最後の道をバギーで突っ走った。すると、オヤカタは何を血迷ったのか、木にバギーをぶつける。
ゴールはすでに見えていて、何人かのプレイヤーの姿も目視で確認できる距離。私たちはバギーの外に投げ出された。
「なんだよいきなり……。操作ミスったのか?」
「じゅんぺー。ゼノ。最後、勝負しようぜ」
「勝負?」
「あそこがゴールだ。で、スタート位置がここ」
「……最後の最後はかけっこか」
「そういうことだ。最後は戦おうぜ」
オヤカタは戦いたかったようだ。
それも、剣での切りあいなどではなく、純粋なかけっこで。これはステータスの差がでるが……。ゴールは両方がたどり着いていけないのだろう。
つまり、私が先にゴールしてもゼノがゴールしてない場合まだゴール出来ていないことになる。
「最後はダッシュか。いいだろう。じゅんぺー、あらかじめ謝っておくが、僕は素早さがそんなに高くない」
「俺もだ! 俺は力と防御が高え! そういうスタイルだからな!」
「となると、先につくのは私かじゅんぺーさん……」
「お互いの妨害はなし! 正々堂々行こうじゃねえか。それでこそ面白い」
「乗った」
私たちはスタート位置に立つ。
そして、スタートの合図を待つ。
「スタート!」
全力で走れ!




