諦めたほうがいい
イベント開始から一週間と五日が経過。
つまり現実では二日目に突入し、イベント参加者にも疲れが見え始めている。いや、とうの昔に疲れは見えていたが、ゴールまでの焦燥感が出てきているようにも見えた。
自分の順位はもちろん表示されないので、今自分はどの位置にいるのか、このポイント総数で勝てるのか、一着で無事ゴールできるのかという不安もあるのだろう。
一気に終わりが見えてきたというのもあり、みな、少し焦りを抱えている。
「どうしよう!? このポイントで勝てるかな!?」
「いや……無理だろ。俺らは巨人討伐に加担したとはいえど、ポイントもらえているのは最後に攻撃したじゅんぺーペアだ。俺らは5000ぽっきりしかないしまず勝てないだろうな」
「こういうシステムも、協力をなるべくさせないためにあるんだろうねぇ」
「そもそも勝つことを目的としているのなら僕たちと組んでいること自体がまずいだろう。ここまでじゅんぺーはバギーを止めていないからポイントを集めることをしていない」
「うん……」
バギーを止めていないのはそういう暇がないからだ。
「ルール説明の時にあったと思うけど、このイベントはあくまでレース。期限内にゴールできなかったらそもそもポイントがあったところで意味ないんだよ。私たちは巨人討伐で大きく出遅れてるし停まってる暇がない」
「やらかしたりもしてるしな」
「うん。それはまぁごめん」
私たちが止まっている暇は本当にないのだ。
「あと二日でイベントが終わる……。でも私たちはまだ20の街を経過したあたりだからね。急がないといけないんだよ」
「私たちは負け確ってこと!?」
「そういうことだな。ま、仕方ねぇだろ。こいつらと別れたくないっていう我儘をいったからこうなることは目に見えていたはずだ」
「それに、ポイント引き換えアイテムではなく魔物を倒して手に入れたポイントだから奪うこともできないからね。譲渡ももちろん無理」
手に入れたポイントは譲渡ができない。
アイテムなら譲渡はできるが、ポイントは絶対に無理なのだ。
「そんなぁ……」
メルルががっくりと肩を落としている。
まぁ、勝ちたかったのはわかるが。そもそも巨人討伐していたのが遅くなった要因。あの一日で進む人は進むしな。
そもそも巨人討伐は割と早く終わったほうだとは思うが……。ああ、バギーを壊したりとかして遅くなったのも要因だろうな。
「ポイントが集まってないのは私たちも同じだよ。もらった3万から増えてはいない。減ってはいるけどね」
「僕たちも勝てないだろうね」
「そういうこと。私たちはもう勝つことは諦めてるから」
ワンチャンないかなというぐらいだ。
「くっそー! 次のイベントは勝つぞー!」
「もう吹っ切れたのか」
「だってこっから逆転するビジョンなんてそれこそあの巨人のような超大型の魔物を倒すことじゃん! 絶対無理!」
「あの後ろにいるドラゴンを倒すのは無理だな。巨人でさえあんないっぱいいっぱいだったからな」
私たちの後ろには馬鹿でかいドラゴンが座っている。
巨人ならぬ巨竜。
「とにかく! 止まらないでゴールめざそ! 勝てなくてもいいからせめてゴールはしたい!」
「それは叶えられる!」
私はアクセルを吹かす。
仕事も落ち着いてきたから一日二話更新に戻せるといいな……




